首の皮のたるみを消す。
必要があって、とあるサイトにプロフィールを掲載しなくてはいけなくなった。自分のこれまでの人生をギュッとまとめて5行ぐらいにした。いろいろ削りながら、結局人様に伝えるなら3行ぐらいでもよかったんじゃないか、なんて思いながら。
で、これでいいや、と思っていたら「写真もお願いします」ということになった。見本として送られてきたURLを見ると、みなさんちゃんと撮影している。もしかしたら、プロが撮ったのかもという写真も混ざっている。う〜ん、iPhoneで自撮りじゃちょっと恥ずかしいかも、と考えて、映画学校の先輩に頼むことにした。いかつい男たちが主人公のVシネなどを撮っていた人なので、「講座の宣伝用なので優しそうに撮ってくださいよ。くれぐれも」とお願いする。
「はい、右向いて」とか、「上着のボタンははずそうか」とか、「歯みせて」とか、いろいろ注文をつけてもらって撮影してもらう。ここで、「ちょっと顔上げて」と言われたので、あごを上げ気味にしてみる。すると先輩が「首のたるみがあるから、もうちょいあご引いて隠そう」と言われ、言われたとおりにする。
で、「ありがとうございました」とお礼を言って、トイレを借りて鏡で見てみると、なるほど首の皮にたるみがあって、なかなかに年配者仕様の見かけになっている。まあ、来年還暦なので、こんなもんかなあ、と思っていたのだが、その先輩の首筋を見るとたるみがない。これはもう、体質というか個性というかそういうもんだろうと思っていたのだが、先輩曰く、「風呂の中で上顎を舐めるんや」と。「風呂に入ったときに、口を大きく開けるやろ。それからベロで上顎をレロレロするんや。そしたら、首の筋肉が鍛えられて、首筋のたるみがなくなんねん」と言うのである。
いやまあ、そんなに即効性があるのだろうかと半信半疑であったのだが、その夜、風呂場でいつものように湯船に浸かりながら漫画を読みつつやってみた。『釣りバカ日誌』を読みながら大きな口をあげて、上顎をレロレロする。自然と口を開いて、なんとなく「アイーン!」の変形版みたいな顔になる。そんで、浜ちゃんが釣りでいいサイズの魚を釣り上げるまで頑張って続けてみる。
こんなことを三日ほど続けたのだけれど、首のあごの下にあったイグアナの首の下のたるみみたいなのが無くなったのであった。あら不思議。というか、これは先輩から教えてもらったレロレロ体操しか覚えがないので、レロレロ体操が効いたのだろう。そうか、知らない間に大口開けて話すこともなくなったし、そういやコロナ禍で大声で話すだけで変な目で見られるし、それに年齢が年齢だから「アイーン!」みたいな顔をすることも無くなっていたなあと気付かされたのであった。
普段の暮らしの中で急に駆け出したり、友だちと押し合ってバランスをとったり、高いところに上ってヒヤヒヤしたり、なんてことが日々減っている。まあ、減っていることが年をとるということかもしれないなあ、なんて思う。別に皺が出来ても、肌がたるんでも、白髪が目立っても、そんなに気にしない方だとは思うのだけれど、動きが鈍ってそれが見えるようになっているのかと気付くと、「ようし、ちゃんと動こう」と思ったりする。ちゃんと動いて身体が鈍らないようにして、隣で絶望的なため息をついている同僚たちのようにはならないぞ、と密かに誓う誕生月なのである。
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植松眞人(うえまつまさと) 1962年生まれ。A型さそり座。 兵庫県生まれ。映画の専門学校を出て、なぜかコピーライターに。現在はコピーライターと大阪ビジュアルアーツ専門学校の講師をしています。東京と大阪を行ったり来たりする生活を楽しんでいます。
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Jane
今回の記事と関係なくてごめんなさい。以前Julie Delpyのことを植松さんと語ったことがありましたけれども。今NetflixでOn The Verge観ています。Before Midnight での友人カップルたちとの会話の場面を彷彿とさせられました。3話目終わったところですが、どうもトランプの御代で彼女が演じる主要人物の1人はコロナにかかったのではないかと思います…。あまり印象が変わっていませんが、病み顔はさすがに年を感じさせます。彼女の夫のそことなく鼻につくところとか、子供がモンテッソーリのスクールに行っているところとかウケました。起承転結とかなく、面白いのか面白くないのかよく分からないまま、4話に行ってきます。
uematsu Post author
Janeさん
面白いのか面白くないのかわからない、というのがあの作品のポイントですね。
面白がればどんどん面白くなって、ぼんやり見てるとスルーしてしまう。
そのさりげなさが彼女の脚本、演出のうまさですね。もうちょいあざとくてもいいのに、という気もしますが。
僕は楽しんで見ました!
Jane
そうなんです、見せ場とか感情をゆさぶられる場面もないのですが、逆に飽きがこないですね。風邪?は4話の冒頭でいきなり治っちゃうし!ヤスミンの更年期症状ですか?空の巣症候群予備軍?みたいなところも共感しつつ楽しめます。ジャスティンの執筆部屋の散らかりぶりもいいな。
uematsu Post author
Janeさん
そうなんですよね。
日本はそうでもないですが、世界の映画はオープンエンドが主流になりつつありますね。
最後をどう捉えるかは観客に委ねる。
そんな流れがあのドラマにもある気がします。