たぶん、店長。
若いのと「ランチでも」ということになり、とある駅で待ち合わせをする。土曜日だけど、ちょっと早めの11時半に待ち合わせたので、どっか適当に入れるだろう、と駅周辺をうろうろ。すると、なんとなく美味しそうなビストロを見つけ、ランチがあるというのでそこに入った。
店の雰囲気も悪くなく、ほどなく出てきた料理もそこそこボリュームもあって美味しい。飛び込みにしてはいい店を見つけたなあ、と思っていたのだが、それもつかの間。だんだんと店が混んでくると、接客があまりうまく回っていないのが露骨にわかるようになってきた。僕たちは直接の被害はなかったのだけど、周辺でオーダーミスや料理が遅れているという情報が飛び交う。しかも、飛び交う情報の情報源が、どうも店長らしき若い兄ちゃん。この兄ちゃん、そこそこしっかりしているように見えるのだけれど、声がデカイ。「ちゃんと、オーダーを復唱しないからミスるんだよ」と店のアルバイト女子に言っているんだけれど、まるで僕が言われてるかのような声量なのである。
途中で、店も混雑してきたし、そろそろ出ようということで、会計をしていると、遠くからまた店長らしき兄ちゃんの声が響いてくる。「ほら、ちゃんと3番テーブル見とかないと、そろそろ食べ終わるんだから」とか言っている。いやもうさすがに、すごいなあ、と思い、会計をしているおそらくアルバイトらしき女子に同情するように「あの人、声がでかいねえ。あれで店長なの?」と言ってみた。いやもう、「君たちも大変だねえ」とでも言うようにね。
すると、返ってきた答えは「えっと、たぶん」だった。う〜ん、そうか、なるほど、君はあの大きな声でみんなに注意している兄ちゃんが、店長かどうかを知らないんだね。ほほ〜。なるほど、これは新しい展開だなあ。
なんとなく、いろいろどうでも良くなって、会計を終えて、トボトボ歩き出し、何気なく今出てきたお店を振り返ると、あの兄ちゃん、えっとそう、たぶん店長が、こっちを向いて満面の笑みで「ありがとうございました〜!」と叫んでいた。うん、ごちそうさま。
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植松眞人事務所
植松眞人(うえまつまさと): 1962年生まれ。A型さそり座。 兵庫県生まれ。映画の専門学校を出て、なぜかコピーライターに。現在はコピーライターと大阪ビジュアルアーツ専門学校の講師をしています。東京と大阪を行ったり来たりする生活を楽しんでいます。