目がショボショボです。
老眼になるのが早かった。確か、三十代半ばで、老眼になったと記憶している。
三十半ばにして、関西から東京に行って単身赴任をするようになった。小さな子どもが二人いる生活から、いきなりひとり暮らしになって、僕は暇を持て余した。いや、本当は必死で仕事をしなきゃいけなかったのだけれど、もう、自分の会社の命運を握った単身赴任が不安で不安で仕方なく、なんだか一人部屋にこもることが多かった。
そんな時、僕の心の友だちになったのが、毛穴すっきりパックだった。休日の午後、早めに風呂に入り、コーヒーを淹れて、ぼんやりとした時間を過ごす。そんな時に、毛穴すっきりパックを小鼻のあたりに貼り、じっと乾くのを待ち、パックを剥がし、剥がしたパックの裏側についたポツポツを見るのが好きだった。
ところがである。ある日、いつものように毛穴すっきりパックの裏側を見ようとしたのに、焦点が合わないのだ。たしかに、ポツポツがついているのはわかる。わかるけれど、はっきりしない。どういうことだ、これは。しばらくの間、毛穴すっきりパックをジッと見つめ、近づけたり遠ざけたりしていた。それでも、見えないのだ。ボケるのだ。
そうか。これが老眼か!と気づくまでにどのくらい時間がかかったのだろうか。近眼なら近づければ見えるはずなのに、近づければ近づけるほどボケるなんておかしい。こんなふうになるのは、噂に聞いていた老眼しかない。そう気付いた時の衝撃たるや。当時まだ35歳ですよ。35歳で老眼になるなんて、思ってもみなかった。
それから何年かは、だましだまし生活していたのだけれど、40を過ぎたあたりからは、明らかに仕事に支障を来すようになったので、遠近両用メガネをかけるようになった。そして今年、僕は63歳になる。ここへきて、遠近両用をかけていても、目がショボショボするようになってきた。つらい。資料を見ながらコピーを書いていると、1時間ちょいが限界。午前中、パソコンの画面をのぞき込んでコピーを書いていると、午後は仕事ができないほど目が疲れてしまう。
さて、どうしたものか。白内障になって手術をすると、近眼が治って目がスッキリすると言う話を聞いたことがある。けれど、僕は「白内障の気はある」とは言われたものの、まだはっきりと白内障を患ってはいないので、おそらく、保険適用で手術はできないだろう。
だとすると、遠近両用のコンタクトがいいのか。それとも、遠近両用メガネをやめて、パソコンの画面の距離に合わせた仕事用のメガネを作る方がいいのか。わからない。ネットにはいろんな情報が飛び交っているけれど、それで、この目のショボショボが治るのかどうかがわからない。
というか、もうそんなに目を酷使するような仕事はやめた方が良い、という神様の警告なのか。キミには他にできることがあるはずだ、という悪魔の囁きなのか。どちらにしても、この目のショボショボとさよならできるなら、多少の痛みや辛さには耐える自信はあるのだが…。ああ、神様、お願い。ショボショボをなんとかして。
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植松事務所
植松雅登(うえまつまさと): 1962年生。映画学校を卒業して映像業界で仕事をした後、なぜか広告業界へ。制作会社を経営しながら映画学校の講師などを経験。現在はフリーランスのコピーライター、クリエイティブディレクターとして、コピーライティング、ネーミングやブランディングの開発、映像制作などを行っています。