思い出:カネロニ
母を物忘れ外来の診察へ連れて行きました。
妹と一緒にグループホームに迎えに行くと、スタッフに伴われて出てきた母が私の顔を見て言いました。「誰?」
本来はここで嘆くべきなのかもしれません。でも、私はさほどショックを受けませんでした。というのも、母はとても穏やかに笑っていて、その表情から察するに、顔を見ても誰だかわからない私のことを敵視してはいないことがわかったからです。少なくとも「自分側にいる誰か」という認識を持っているのは明らかでしたから、それでいいと思ったのです。
最近の母は常に鼻歌を歌うようになっていて、病院の待合室でもそれは止まりません。まるで、お母さんたちが子供の機嫌取るためのおもちゃや絵本を鞄に詰めて出かけるように、私も病院に行く時は母の気持ちを鼻歌からそらすためのあれこれを持って出かけるのですが、この日は母や母の姉妹たちの若い頃の写真を持って行きました。思い出話作戦です。
果たして母は、この時はこうだった、この服は誰々のおさがり、と楽しそうに話してくれました。
六人姉妹の五女の母は、幼い時に両親を亡くしました。その時まだ小さかった姉妹は親戚の家にばらばらに預けられましたが、結局、長女を除いた5人が一つの家に集まって、それぞれが結婚するまで一緒にに暮らしました。それぞれが家族を持ってからも、年を取ってからも、とても結びつきの強い姉妹でした。
つい最近起きたことを忘れてしまうのに、昔の記憶は割と鮮明であるというのはアルツハイマー型認知症の人に多い特徴です。だから母も私の顔や名前よりも姉妹のことをはっきりと記憶していて当然なのですが、それ以上に、母にとって姉妹との日々は何物にも代えられない強い思い出なのだと思います。
私の顔は忘れてもいい。でも、私は、母の中から姉妹たちとの記憶が消えてしまう方が怖いのです。母がその核のようなものを失ってしまうような気がして。
だから、おそらく次の通院日にも写真の束を持って、私は母の思い出話を聴き続けるのだと思います。
今日ご紹介する一品は『カネロニ』です。カネロニは筒状のパスタ。それに詰め物をしてグラタンのように焼きます。昔カナダで暮らしていた時にテレビで見て食べたいと思い、作ったのが初めてでした。それを一緒に食べてくれた友人(日本人)が、先日「お店で見かけて、昔ミカスちゃんが作ってくれたのを思い出した」とバリラのカネロニを送ってくれました。あの日テレビの見様見真似でカネロニを作ったことやそれを彼女と一緒に食べたことは今も私にとって大切な思い出なので、彼女が覚えていてくれたことが本当にうれしかったです。もし私がアルツハイマー型認知症になったら、何十年も前に彼女と食べたカネロニの話を延々とするのかもしれません。
カネロニ
- ほうれん草を洗ってさっと茹でます。アクを抜くためです。この後炒めるので、そんなにしっかりと茹でる必要はありません。
- 3分ほど茹でたら水に取って冷やし、ぎゅっと絞って水を切ります。しっかりと水分が切れたら、2センチほどの長さに刻んでおきます。
- フライパンにオリーブ油を少し引き、ほうれん草を炒めます。
- ほうれん草に油がなじんだらカッテージチーズを加え、炒め合わせます。
- まんべんなく混ざり合ったら塩胡椒をして火を止め、細かく砕いたくるみを加えます。
- 粗熱を取ったら、カネロニの中に詰めます。(カネロニは茹でない)絞り袋を使うのが一番やり易いと思いますが、ない場合は具をジップロックの袋に具を入れてジップを閉じ、袋の角を切って使いましょう。
- グラタン皿やキャセロール皿といった耐熱の食器の底にオリーブ油を薄く塗り、具を詰めたカネロニを並べます。
- カネロニの上をミートソースで覆い、ところどころにジェノベーゼを落としてから溶けるチーズをたっぷりかけ、オーブンで焼きます。
焼き時間はパスタの箱に書いてある時間を基準に、様子を見ながら調節して下さい。
『どうする?Over40』は今年10周年を迎えました。
そこで「10年前の自分に言いたいこと」を募集しています。10年前のあなたはどこで何をしていましたか?その時の自分に伝えたい思いはありますか?送っていただいたものはPodcast『That’s Dance!』の100回記念の放送内で紹介させていただきます。
詳しくはカリーナさんのこちらの記事をご覧ください。
在宅デトックス2月回のお知らせ
日時: 2月23日(木・祝) 13:00~ ※大体1時間半くらいです。
テーマ: 『今の不安は何ですか?』
介護について今あなたが抱いている不安を話してみませんか?解決することは出来ないかもしれませんが、みんなで話すことで少し気が楽になるかもしれません。もちろんテーマから逸れたお喋りになってしまうのもまた良し。介護真っ最中の方、過去の介護にの記憶に心が痛む方、これからの介護が不安な方、全て大歓迎です。ぜひご参加下さい。
詳細とお申込みはこちらをご覧ください。
今月は昼の回です。
オバフォー10周年、Podcast100回。めでたいことが重なって、ちょっとワクワクしているオバフォーメンバーでございます。10年前のご自分へのメッセージ、ぜひご参加下さいね。
ミカスでした。
ぱろる
お母様との接し方が、とても素敵です。
自分をわかってもらうことより、ご機嫌でいてくれることを優先できる、そのタメが。
載せてくださったお写真が、皆さんとても嬉しそうで(先頭のお嬢さんのよそ行き感も!)
さらにさらに、カネロニが美味しそうで!
思い出してバリラを送ってくださったお友達がまた粋なはからい!
なにからなにまで、幸せな気持ちにさせられるブログでした!
50年前の母の料理本に、カネロニの作り方があってずーーーーーーっと憧れてたんです。
でも無精だから作ったことなくて。
バリラであるのですね!
それなら、がんばれるかも!!
作ったらTwitterでご報告しますね😉
ミカス Post author
ぱろるさん
お母さんの本、素敵!! 素敵すぎる!!
私、そういう昭和の料理本大好きです。
このレシピはラザニア状のバスタを巻いて作るんですね。しかも、パスタ手作り!!
ああ、素敵! (!が多すぎる)
写真、6姉妹が年の順に並んでいますが、先頭の女の子は長女の娘で私の従妹です。
ぱろるさんが仰る通り、THEよそ行きですね。
最近では「よそ行き」という言葉も聞かなくなり、なんだかちょっと寂しい気もします。