誰も泣かなかった 前編:カリフラワーの唐揚げ
母方の伯母が亡くなりました。91歳でした。
「食べたものを少し戻されて、その後はいつもほどの食欲がないようです」との連絡を受けた2日後、「やはり心配なので病院へお連れします」
「検査の結果、炎症を表す数値が出ましたので入院になりました」
そして、その翌朝早くに「容態が急変しました。ご家族に連絡を」との電話が入りました。
こんな時に使う言葉ではないことを承知で言わせてもらうと、伯母はとんとん拍子で終わりへと進んだのです。
生涯独身だった伯母のケアについては、母方のいとこ全員でグループLINEを作って対応をしていました。そのグループにメッセージを送りました。
「おばちゃんの意識レベルが低下しているとのこと。家族に連絡をと言われました。向かえる人はすぐに病院に向かって下さい」
でも、結局は誰も間に合わず、伯母は一人で出立しました。
「これから伯母さまのお体をきれいにさせて頂きますが、病院から伯母さまをお連れになる場所は決まっていますか?」伯母が入院した病院は入所していた特養のそばで、私たちの誰一人として土地勘のない場所でした。顏を見合わせる私たちの様子を見て、看護師さんが小さなリーフレットを差し出しました。葬儀社のものでした。
その場では最年長の私が電話をしましたが、だいたい葬儀社に電話をしたことなどありません。ひと言目を一体何と切り出したらいいやら。
伯母の亡くなった時間、生年月日、病室の番号、何度頃出発出来るかなどなど、いちいち誰かに確認しないと答えられなくて、ああ私はちょっと動揺しているのだなと思いました。
「ミカスちゃん、ひと言目が『伯母が亡くなったんです』って。相手も一瞬どう答えたらいいのか戸惑っちゃうよ」と従弟が笑いました。
病院に駆けつけた従妹弟は、遠い遠い島に住む従妹と病気療養中の従弟を覗いて5人。葬祭場の小さな打ち合わせ室でインスタントコーヒーを飲みながら伯母とのお別れの仕方を話し合いました。
お坊さまは呼ばない。基本のプランに追加するのは棺の中に入れる花を1盆。遺体に着せる着物は正絹だと数十万。「でも、燃えてしまうのでしょ?」ということで基本の2タイプから選ぶことに。「5千円と3500円です。違いは生地の薄さでしょうか」と葬儀社の担当の方。それを聞いた従妹Aが「透け透けですか?」
はあ?!
「透けることはありません」という答えと同時に、堪えきれなくなった私たちは大笑い。
ああ、葬儀の打ち合わせの席でこんなに笑うなんて、不謹慎だと思われているかな。担当の方の顔を伺うと穏やかに微笑んでいて、もしかしたら私たちが笑いながらも「おばちゃんは…」「そうだね、おばちゃんは…」と伯母の思い出話をするのを見て、こういう送り方もあると思ってくれたのかもしれません。
「もし着せたいお洋服やお着物があればお持ちください。もちろん棺に入れて伯母さまに持たせたいものがあればそれも一緒に」と仰ってくれました。
夕方4時過ぎに打ち合わせが終わり、食事をしようと、車で山梨まで帰る従妹Bを除いた4人で最寄り駅の駅ビルに入りました。朝一番の知らせで動き回った私たちは、その日何も食べていませんでした。
4人でオムライスを食べながら、また伯母の思い出話を。もちろん、また笑います。
「ほら、あの時Cちゃん、おばちゃんに怒られて…」と、伯母の口真似をしながら楽し気に食事をする私たちを、数時間前に大事な人を亡くしたばかりの集団だと誰が思うでしょうか。それくらい私たちは楽しく、穏やかな気持ちでその時間を過ごしていました。
「そういえば、棺の中に食べ物を入れてもいいって言ってたね」と従弟Cがふと思い出したように言いました。
「うん。故人の好物がカレーだったからってジップロックに入れたカレーを入れた人もいたって言ってた」「そんな人もいるんだね」
そう、その時の私たちは、自分たちがあんなものを伯母の棺に入れることになるなんて知る由もなかったのです。 (後編に続く)
さて、今日の一品は『カリフラワーの唐揚げ』です。なぜかカリフラワーって子供の頃に食卓に上った懐かしい野菜というイメージがあります。大人になってからはブロッコリーがメインで、カリフラワーを食べる機会が減ったような気がします。お値段もちょっと高いしね。
でも、ブロッコリーよりも固めなので油で揚げても食感がしっかりと残って、油っこくなりません。
カリフラワーの唐揚げ
- ボウルにたっぷりの水をためて、そこにカリフラワーの茎を持ち、つぼみを下にして入れます。
茎をひねるように動かして、水の中で振り洗いをしましょう。 - キッチンペーパーなどでカリフラワーの水分をふき取り、適当な大きさの小房に切り分けます。
- 耐熱の容器にカリフラワーを入れてラップをかけ、500Wで4分ほど加熱します。加熱せずに揚げてもある程度時間をかければカリフラワー自体には火が通るのですが、衣が焦げでしまうので、揚げ時間を短くするためにカリフラワーを加熱しておきましょう。
- 小さめのボウルなどに、醤油、酒、すりおろしにんにく、おろし生姜、片栗粉を入れて混ぜ合わせます。
- 揚げ鍋に油を加えて火にかけ、170℃くらいに熱します。
- カリフラワーに衣をつけて油で揚げ、衣にしっかりと火が通ったら出来上がりです。
いよいよ12月らしい気候になってきたなと思ったらいきなり20℃。今年の冬は一体どうなっているやら。私は、11月にひいた風邪の名残で咳がおさまりません。厄介。
皆さんもご自愛くださいね。
ミカスでした。
アメちゃん
ミカスさん、おはようございます。
この度は心よりお悔やみ申し上げます。
たぶん葬儀社の方は
今まで色々な人や家族の悲喜こもごもを見てきてるでしょうから
笑いのでる打ち合わせに、伯母様のお人柄や
ミカスさん達との温かい関係性が感じられたんじゃないかなって思います。
記事を読んでてもそんな空気が伝わってきて、良いなと感じました。
私の父も90歳で大往生だったのですが
棺の中に、好きだったあんぱんとカリントウを入れたんですよ。
で、棺の蓋?を閉める時に
通夜で酔っ払ってぐでんぐでんだった従兄弟が
「そうか〜、おっさんはカリントウが好きやったんか〜(泣笑)」
と、おもむろに棺の中からカリントウの袋をとり出して破り
一本ボリボリ食べて元に戻しました。
それで周りの空気が和んで、今でも良い思い出です。
ミカス Post author
アメちゃんさん
ありがとうございます。
本当に葬儀社の人って色々なご家族を見てきているのでしょうね。
悲しくてたまらない人たちにも、私たちのように笑いながら思い出を語る人たちにも、しっかりと寄り添ってくれる素晴らしい仕事だと思います。
お父さまのご葬儀でのかりんとうの話、いいですねー。
泣き笑いでかりんとうを食べる従兄弟さんにじーんとしました。
十人いれば十通りの見送り方があるはずですよね。
私はどんなふうに送ってもらえるのかな。できることなら思い出話でゲラゲラ笑ってもらいたいなあ。