第46回 アーヤと魔女
スタジオジブリの新作「アーヤと魔女」が、4月に劇場公開されるそうです。宮崎吾朗監督によるオール3DCGの楽しい長編アニメです。昨年末にテレビで放送されたのでご覧になった方もおられると思います。
オックスフォード大学でトールキンに師事したダイアナ・ウィン・ジョーンズ(2011年没)の遺作が原作で、徳間書店から出ている日本語版は、佐竹美保さんによる挿絵がふんだんに入っていて、こちらも楽しい。(佐竹美保さんといえば「魔女の宅急便」シリーズの三作目以降の画を描いておられますね。)
同監督の過去作「ゲド戦記」は、私の理解不足のせいか、原作とのつながりをうまく読みとれず、これをゲド戦記と題していいのか?と思いました。それに比べて本作は分わかりやすい。アーヤの母親、アーヤと一緒に暮らすことになる魔女ベラ・ヤーガと魔人(?)マンドレークの関係設定を新たに加えて、書かれていない部分を補完した物語となっています。とはいえ、その設定が児童書らしくないので、アニメを見てどこまでが原作か知りたくて、日本語版で確認した次第。
「ぼくは5回くらいスミからスミまで読みました。」徳間の日本語版の帯に、本作の企画者である宮崎駿氏のこんなコメントがあります。私はアニメの録画を五回くらい見ました。え、そこまで?とあきれる声が聞こえてきそうですが、いやもう、大好き、この作品の小道具や美術!
アーヤをはじめ身寄りのないこどもが暮らす「聖モーウォード子どもの家」の素敵な内外観。子どもの家の整然とした明るい食堂。その近くの教会と墓地の墓石。アーヤらが手に持つ本、壁にかかった絵画まで、ごくわずかしか目にしないひとつひとつにハッとします。3DCGありがとう!アニメーターの皆さんありがとう!
アーヤが、ベラ・ヤーガとマンドレークと暮らすライム通り13番地の家は、不気味可愛い内外観です。アーヤの部屋はうす汚れているのですが、お布団は可愛いパッチワーク風。(原作の挿絵では質素な毛布にみえる)ベラ・ヤーガとアーヤが魔法の薬をつくる部屋は、ほんとーーーに汚いのですが、たくさんの瓶や薬草など材料がならぶ棚を目を凝らして見てしまう。棚にモノが並んでるのって、いいよね!
マンドレークがこわいので、この家で三人が囲む食卓はちっとも楽しくないのです。でもこんがり焼き目のついた食パンやシェパーズパイ、「ボーイスカウトの揚げ焼きパン」は実に美味しそうで、香りが伝わるよう。意外に清潔な水差し、紅茶ポットや黒猫の骨格にいたるまで、その質感と可愛さに…萌える!
いくつかの大震災を経験した今は、ポストカード額ひとつでも安全を考えて並べますが、画面の中では小物欲(人物評ではない)を満たせます。
文字で読むよりライトな仕上がりで、手描きの画が流れるエンドクレジットまでを含めて、100%ハッピーエンド。
爽子
年末のアニメも見ていないのですが、見に行きたくなりました。
なんか、SHOJIさんの記事を読むにつれて、どんどん引き込まれていきました。
わたしもきっと大好きな世界のような、、、。
SHOJI Post author
爽子さん
コメントありがとうございます!
はい。住吉神社のハッタツさんをお持ちの爽子さんなら、お好きかも。
実にこまかく作り込まれているのです。
「ボーイスカウトの揚げ焼きパン」て何?て思うでしょう?
ソレが出てきたときは「アレのことか!」と(食べたことがある人なら)一瞬で思い当たります。
ご覧になったら、答え合わせしたいです(笑)
(この発言は、決して見ることを強制するものではありませんよ!)