第62回 グッバイ、ドン・グリーズ!
「グッバイ、ドン・グリーズ!」は、脚本・監督いしづかあつこ、キャラクターデザインは吉松孝博、MAD HOUSE制作の完全オリジナル作品です。2月18日公開で、すでに様々な媒体で関係者談話が公開されているので、お話自体への言及は少なめでお許しください。
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舞台こそ学外だが、高校一年の男子、ロウマ(VC: 花江夏樹)、トト(VC: 梶裕貴)、ドロップ(VC: 村瀬歩)のひと夏の冒険とその後を描いており、いしづか監督の前作「宇宙よりも遠い場所」(ニューヨークタイムズ発表の「ベストTV2018インターナショナル部門」に選出された。以下「よりもい」という)同様、ティーンズが日常の中の非日常を経て少し成長して日常に戻るジュブナイル・フィクションだ。
こう書くと「ふうん」てなものだが、いしづか監督の描くティーンズにはリアリティを感じて、自分とは違うキャラにも共感してしまうのだ。ぜひ「よりもい」とともに見て欲しい一作だ。
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実力のある人気声優陣は皆30代だが、彼らの声で、分別がないようであるような年頃のキャラに見えてくるから不思議だ。とくに村瀬歩さんは声が童顔で、年齢・性別不詳な声の持ち主だ。(ご興味があれば、彼が双頭院学(そうとういんまなぶ)役を務めた西尾維新原作のアニメ「美少年探偵団」をご覧ください。)
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美術も「よりもい」のスタッフが関わっている。ほぼ3人のキャラだけで進むなか、大画面が持つかどうかは美術次第だ。本作では、自然の湿気・湿度の高さをも感じさせる、奥行のある素晴らしい背景画で、大満足でした!
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さて、本作について私が声を大にして言いたいのは、「やっぱり吉松孝博氏が描くキャラクター、良いわ~」ってこと! 吉松氏は「よりもい」でいしづか監督と組んだアニメーターだ。本作では総作画監督もつとめている。
キャラクターデザインは、キャラクター原案とは違う。ざっくり言うと、キャラクター原案があればアニメーションで描きやすくなるよう指針となる造形を決めたり、画によって性格のニュアンスを付けたりする。センスのかたまりを要する役割だ。
吉松氏の描くキャラクターは、ひとことでいうと等身大。文字通り頭身のバランスがリアルで、体格が感じられる。そのせいか分からないが、血の通ったキャラに見える。にもかかわらず、漫画的な顔が似合い、性格設定はどうあれどこか好ましさが感じられる外見になる。この憎めなさや温かみのある彼の絵柄が、私は大好きなのだ。そしてこのような絵柄は、これまた大好きな日常を描いたジュブナイル・フィクションとよく調和する。
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漫画原作アニメでは、絵がきれいになっている(!)驚きがある。素人分析だが、線が整理されているので良く転じると、見やすくて、動くことで魅力が増す。例えば新人漫画家さんが描く歪んだ斜め顔や手足も、アニメではバランスよく上手に描けていて、優れたストーリーに注意が向く。悪く転じると、筆跡から感じる勢いがそがれるといった具合。
小説原作アニメでは、原作を知っている場合、自分の抱いたイメージと違う(!)驚きがある。なるほどと納得したり、違和感を持ったり。
オリジナル作品では、お話にあったキャラクターが描かれており、先入観なしで見られるので、楽しい。もっともっとオリジナル作品が増えて欲しい。
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ところで、ドン・グリーズって…、なにそのスタイリッシュさからかけ離れた名前は?と思ったかたは是非ご覧になって、由来を確認してください。男子じゃなくても子供の頃を思い出してキュンとしますよ!
「グッバイ、ドン・グリーズ!」の公式URLはこちらです↓
https://donglees.com
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kokomo
SHOJIさん、前回触れていた作品の待望のレビューありがとうございます!
あらすじを目にしたときに、「スタンド・バイ・ミー」のアニメ版のような作品なのかしら?と思ったのですが、いしづかさんのことなので、きっと似て非なる作品に仕上がっているのでしょうね。
SHOJIさんのこの記事を読んで声優さんをチェックしてみましたが、声優さんに疎い私でさえメインキャストを担当している方々は全員知っている!今をときめく声優さん大集合ですね。そして村瀬さんというと「王様ランキング」の「カゲ」をやっていた方ですよね?経歴を見てみたところ色々な作品に出演されていて、その幅広さに驚きでした。今回はどんな声を披露してくださっているのか興味津々です。
青少年物っていうとくくりが雑になるかもしれませんが、最近まで全く興味がありませんでした。「スタンド・バイ・ミー」もほんの数年前に初めて見て、むちゃくちゃ感動してしまいました。これって何なんでしょうか。shojiさんが触れていたように、息子がそういう年齢真っただ中だからなのか、若さへの郷愁なのか、はたまたあるいは私の中で何か別のものが生まれているのか...?「よりもい」も未見なので、合わせてみてみたいです。
SHOJI Post author
kokomoさん、コメントありがとうございます!
スタンド・バイ・ミーのようだと言えば、そうです。
ただ本作にはオチ(というのか?)がありますし、今の時代のツールを使っているので、普遍的なことがより際立つというか。
詳しくは映画館で!(笑)
ご指摘の通り、村瀬さんは「カゲ」です。(もう辛くなる一方の「王様ランキング」泣)
そして花江さんは「鬼滅の刃」の竈門炭次郎で、梶さんは「進撃の巨人の」エレン・イエーガーです。
皆さん圧倒的人気作品で主役を張る一方で、ドングリーズみたいな日常芝居をなさるのねと感心することしきりです。
ほんとうに、青少年もので感動するって、なんなんでしょうね。
私の場合、青少年ものでも恋愛ものにはあまり食指が動きません。
今20秒くらい考えましたが、若さとういより「希望」を見ていたいのかな?
「よりもい」をこれからご覧になるなんて、うらやましい(笑)
「ドングリーズ」でちらっと出てくるチボリちゃんの声は大人気声優の花澤香菜さんで、「よりもい」の重要キャラを演じてます。
おたのしみに!