第63回 平家物語
「平家物語」は美しいアニメだ。
広々とした風景、心の動きや生死の理をしめす花々。どれもが繊細な色合いで、見ていてとても落ち着く。すっきりした輪郭線のキャラクターや美しい構図は日本画や木版画にも似た趣がある。3月末前後にテレビ放送が最終回を迎えたところだが、さっそく6月に美術の本が出るという。終了後すぐに設定画などの関連本が出るのはトレンドとはいえ、さもありなむ。だ。
本作の制作会社サイエンスSARUは、最近ではノリのよい「映像研には手を出すな!」のイメージが強く、(対角に位置するイメージの)繊細な動きをじっくり見せる京都アニメーションで長らく活躍してきた山田尚子監督の表現手法がどう発揮されるのか、興味を持って見ていた。
とても良かった。重盛の子どもたちの幼いころころとした感じも好きだが、悲劇性を増していく後半がみものだ。風が髪を乱す。花が大映しになる。戦場で大胆なカメラワークが施される。美しい止め絵で会話が交わされたあとのほんの一瞬か数秒の動きが際立ち、見る者も同時に覚悟と無念を感じるのだ。漠然とだがストーリーを知っているので、余裕を持って静と動、緩と急を味わえるのが歴史ものの良いところだ。
放送開始当初から源氏側を描いた大河ドラマとの並走が話題になっている。私も両方を見ている。画面を見ているだけだが、うすぼんやりした源平合戦のイメージが少し濃いものになる。手元の原作本はあまりにも大部なのでいまだに読んでいないが、「平家物語」公式HPのSTORYにある解説コラムをガイドに必ず読むつもりだ。(ちなみに原作本には日本文学全集09 月報(2016・12)が入っていて、故高畑勲さんの文を読めますよ。)
テレビ放送は終わったが、Netflixやアマプラなどで配信中。
TVアニメ「平家物語」の公式サイトURLはこちらです↓
heike-anime.asmik-ace.co.jp
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kokomo
SHOJIさん、なんとタイムリーな作品。
というのは、やっとのことでネトフリにサインインし、今朝この記事がアップされる直前に『平家物語』を見始めたばかりなのです。この作品は以前にもSHOJIさんがお勧めされていたし、カリーナさんも見ていらっしゃるということでネトフリに契約したら見よう!と思っていた作品でした。
歴史って苦手なんです。歴史小説は登場人物多くてこんがらがるし、途中でどういう流れでどうなっているのかがわからなくなって始めから戻り、全然進まずに読むのをやめるというケースが多々。そんな私にとってドラマやアニメは強い味方です。今作でもおぼろげながら人物像や人間関係が掴めてきました。
SHOJIさんがおっしゃるように絵がとても美しいアニメです。老眼にも優しい〈笑)。そして、おかっぱ頭の女の子に見覚えがあると思ったら、キャラクター原案は高野文子さんなのですね。この美しさで最後まで引っ張って行ってくれるのでしょうか。楽しみです。
SHOJI Post author
kokomoさん コメントありがとうございます!
そうです。キャラクター原案は高野文子さんです。
今、高野文子さんと山田尚子さんのご本「わたしたちが描いたアニメーション『平家物語』」のアマゾンリンクを記事内に貼っておきました。ご興味があればのぞいてみてくださいね。
歴史、私も昔からなかなか通史があたまに入ってこなくて、ドラマ、アニメ、自然科学や歴史、美術の番組などの映像と解説で何層にもインプットしてます。次に見た時にはやっぱり忘れてるんですけど(笑)
老眼に優しいって、アレですかね。1カットの情報量が少ないからでしょうか。
私なんて動体視力も落ちているので、動きの激しいアニメについていけない(笑)
「平家物語」は、美しいまま、澄んだまま、最後まで引っ張ってくれますよ!
Netflixの世界へ踏み込まれたkokomoさんに、お気に入りのアニメが見つかりますように!
kokomo
SHOJIさん、リンク貼ってくださってありがとうございます!
アニメでは人物、そしてなんといっても猫の顔がかわいらしいのですが、風景の美しさにもため息が出ました。特に、様々なトーンの緑が茂る山の中に桜がぽんぽんと咲いているところなど今見る風景とは変わらず、移り行くものと変わらないもののコントラストが際立っていました。
1カットの情報量が少ない!SHOJIさん、鋭い!考えてみたこともありませんでした。ゆったりした画面が、衰えた視力と脳に優しいのかもしれません。これがもし合戦の場面が、ドラゴンボールや鬼滅の戦闘シーンみたいに激しく描かれていたらどうなっていたのかしら?なんてついつい想像してしまいました。
次回もまた楽しみにしています。
SHOJI Post author
kokomoさん
背景がどう埋められているかで印象が変わりますよね。
「平家物語」は優しい色彩で癒されます。
もちろん緻密に描き込まれた画も素晴らしく、大好物ですよ。
「~ドングリーズ」のように描き込んでこそ醸し出される雰囲気があるし、宝探しのように小ネタを探す楽しみもありますし。
戦闘シーンが激しかったら?
鬼滅の戦闘シーンは長いですものねえ(笑)
いや短い時間ならまだついていける!知らんけど(笑)
楽しみにしている5月公開の映画があるのですが、パルクールという身体移動のスポーツを題材にしています。
3D酔いしないように体調を整えて行こうと思います(笑)