第79回 REVENGER(リベンジャー)
かつて長崎で、弱い者たちに代わって恨みをはらす殺し屋集団「利便事屋」が存在した。復讐を依頼するには、ある方法で恨みを刻んだ小判を差し出せばよいとの噂。表向き正業に就く者たちが、裏ではそれぞれ特徴のある道具を使って、事をなす…ってこれは「必殺シリーズ」なの…か?
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1970年代に放送された「必殺~」シリーズ。私も小学生だったのでリアルタイムでは見ていない。テレビを点けるとごくたまに流れていた再放送の記憶だ。暗い画面に浮かぶ仕掛人・藤枝梅安(緒形拳)や仕置人(山崎努・沖雅也)が怖かった。その後の中村主水(藤田まこと)率いる仕事人シリーズではチームの人数が増えメンバーが代替わりして、仕事の技も多様になった。時代の変化もあってか少しライトな印象を受けたが、子どもの頃には分からなかった感情を、大人になって受け入れられるようになっただけかもしれない。
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「利便事屋」のリーダーは、背中に刺青の蒔絵師・碓井幽烟(うすいゆうえん)。蒔絵制作のほかに町の人々の万困りごと・相談事を利便事(りべんごと)として引き受けている。メンバーは、下駄ばきの大柄な医者・叢上徹破(むらかみてっぱ)、少年のような少女のような鳰(にお)、呑んべえのばくち打ち・惣二(そうじ)、そして、どうにも消せない業を背負った剣の達人・操馬雷蔵(くりまらいぞう)。さて、誰がどのような技を使うのかはここでは言えない。ご興味があれば一度画面を見て「うっ、わぁ…」と思ってほしい。
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長崎が舞台だが、風変わりなお城があり架空の時空になっているようだ。南蛮風のコスチュームがあったり司祭がいたり、エキゾチックな土地柄ゆえのアイデアが楽しい。
利便事屋まわりの小道具は、何もかもが美しい。研ぎ澄まされた刀やきらびやかな蒔絵の箱を見せつけられた時には参りましたという気持ちになった。背景も入り組んだ地形を丁寧に描き込んであり、自然物の質感が素晴らしい。特に石垣、石畳、石橋、川底など石材の描き分けに目をみはる。柱状節理を見て場所検索してしまった(笑)。長崎に行ったときに訪ねたい。
最近はあたかも自分がカメラを構えてグルンと回り込んで見るようなスタイルに慣れていたので、平面の画面で奥行や高さをパパっと変えたカットで魅せるアクションシーンにハッとする。
全体的に、ぱっと見派手さはないが凝った裏地や羽織紐が見え隠れする和装を思わせる。
テレビ放送は深夜枠で万人むけでないかもしれないが、キャラクターデザインのおかげもあって、先に挙げた「必殺シリーズ」ほどの禍々しさを感じない歴史改変もの。1話目だけで一時間ドラマになりそうなくらい詰め込んである。この先いったい、どんな罪・咎が悔い改められようとしているのか?
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ニトロプラスと松竹が企画しており、アニメーション制作は亜細亜堂が担当している。藤森雅也監督は亜細亜堂所属で、ストーリー原案・シリーズ構成を手がけているのは、ニトロプラスの虚淵玄。
公式サイトでお二人のコメントを見てみよう。私と同世代だけあって、藤森監督「自身の映像体験の原点」が似通っている。見ていてなんだか懐かしいのはそのせいか。虚淵氏の言う「ド真ん中狙い」とはどういうことか?彼の名があがると、これまでと違うものを期待しつつ、一方でこれまでのような作風にも浸っていたいというアンビバレントな心持ちになる。
アニメ「REVENGER」公式サイトURLは下記の通りです。
http://anime.shochiku.co.jp/revenger/
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同じく表裏のある集団、詐欺師が主人公の「GREAT PRETENDER」も面白いですよ。今年の大河ドラマ「どうする家康」の古沢良太脚本作品。