〈 晴れ、時々やさぐれ日記 〉 ああ、中立。私立と公立のあいだ
――— 46歳主婦 サヴァランがつづる 晴れ ときどき やさぐれ日記 ―――
「おかあさん、公立の中学があるやろ。私立の中学っていうのもあるんやろ。だったらハーフアンドハーフ、中立っていうのはないの?」
ちゅ、中立中学校?東京には民間から校長先生を招いた公立中学があって、山口には半官半民の刑務所っていうのがあるらしいけど、「中立の中学」は聞いたことないわ~。
「大草原の小さな家」のDVDをこよなく愛するわが家のまったり太郎、小学5年の夏休みが始まりました。いやいやいや。今年上半期はいろいろありました。中学受験というもの、してみる?というあまりにも中途半端な意識で、中途半端な準備を始めた結果です。
な~んとなく、それっぽいことを生活に組み込み始めた4年の頃、息子は私立と公立の違いも知りませんでした。彼は生来のまったり少年、そこへ山口といううってつけの環境、身近に公私の区別を可視的に教えてくれるものはありません。「だって、ぼくの小学校も山口シリツやろ?」
いやいやいや。「公立」というのはこう書くでしょ。「私立」ってのはこう書くでしょ。あなたが言ってる「シリツ」ってのはさぁ。。。
この年頃の子どもに公立と私立のなんたるかを教えるのは、わたしには骨の折れることでした。( 税金云々という説明は、厳密に言うと違う気がして )
「萩にさ~、松下村塾っていうのがあったじゃない?吉田松陰が建てたっていう私塾。明倫館っていう萩市立の小学校もあったじゃない。元藩校の。」「あ~、あった。あった。でも、松下村塾を建てたのは松陰のおじさんだよ。そんでもって、明倫館は武家の子しか入れないけど、松下村塾は誰でも勉強したけりゃ入れたんだよ。は~僕も 僕の学校建てたいわ~」
あちゃ。
「公」と「私」の区別を教えるのはもっともっと難儀なことでした。
主人もわたしも中学受験の経験がありません。ま~いいからやってみよ~。一家三人、おのれをだましだまし、のぞいてみた「その世界」は、聞きしに勝るものがありました。わたしは塾のアルバイトで「中受」の子どもたちを数年みたことがあったのですが、25年前と今、その変化に驚きました。なんと言っても、問題が難化している。おまけに倍率がケタ違い。
山口にはS塾もY塾もN塾もありません。周囲には小倉まで週3回、新幹線で塾通いをした親子さんがいらっしゃいますが、わたしたちにそんなことはできません。「あのね、この道はサーキットよ。一旦入ったらゴールを目指してアクセル全開しか道はないのよ」そう言われていっそう腰がひけるわたしたち。
及び腰のまま大手塾の衛星授業で「様子をみる」ことを決め、サーキットの駐車場の入り口に立ちました。平日はほぼ毎日、PCでの授業を受け、相当量の問題に取り組み、週末は習熟度テスト。月一回はクラス分けテスト。テストのわずか数日後には成績がネットで配信される「地方の受験生」に有難いシステムです。開始後数カ月。サーキットの入り口は、親子バトルのリングの様相を呈し始めました。
「あのね。どの家もそんなもんよ。6年後半なんてもう正気の沙汰じゃない。阿鼻叫喚。でも、すべてが終わった日、にらみ合い罵り合った親子が手を取り合って再生するのよ」
先輩ママの「すべての終わり」という言葉が耳に残ります。あの。すべての終わりって?おっしゃる方向とは逆の「終わり」を、親子はどう立て直すの?
たしか以前、聞いたことがありました。東京のどこかの女子中学校で、父親の替え玉受験が発覚したというはなし。「ぷぷぷー、おかしー。いったいそのお父さん、どんな変装したのかしら?」
いやいやしかし。まったり太郎のベンキョウをみるうちにわたしの心境は変わりました。「わかる!親が子どもにインプットする→子どもがアウトプットする」このプロセス、まどろっこしーーーーー。
サーキットの入り口でわずか半年。本線に出る前に疲弊しきったので、親子で手を取り合ってもと来た道を引き返すことにしました。みんな、がんばって!いつかまた、どこかで会おう(会えない気もするけど)。
はなしの道筋が脇にそれて恐縮ですが、最近よく耳にする「社会で子どもを育てる」という言葉がひっかかります。「子どもは社会の宝」という言葉もなかなかすんなりとは飲みこめません。うちのまったり太郎が、社会の「宝」に育つ自信はわたしにはないからです。
社会のなかの一人にはしてやって欲しい。でもまずは「うちの子」として育てなければと思います。ふできな親子の子育てを、下支えしてくれる社会の寛容さは感謝をもって受け止めますし、子どもには何がしかの社会への恩返しを言ってきかせて育てるつもりです。でももし、「いくさ」に差し出せと言われれば答えははっきりとNOですし、経済の歯車の消耗品として扱われることも親としてYESとは言えません。
「私立」と「公立」のあいだをとって、「中立」かぁ。。。いいんじゃない、それ。
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