ああ、お正月。ハレとケのあいだ。
今年は帰省をしなかった。特別な理由はない。三人だけでお正月支度をして、三人だけでお正月を過ごしてみようと思った。
簡素なお節も設えも、うちらしくていいと思った。「ま、いいんじゃないのぉ」と思った矢先に、シュジンとくだらないことでケンカをした。「元旦早々なんですか」と小5の息子にたしなめられた。
「お陰でね、こちらも静かなお正月でよかったわ」。実家の母は相変わらずの言いっぷり。あそこは「お正月」というと強迫観念のような空気を漂わすので、今年は少し距離を置きたかったというのが正直な気持ちだ。でも本当のところ、今年のこの選択が良かったのか悪かったのか。それを知るのは神さまだけかも知れない。
年末、いつもなら帰省の移動をしている頃に、息子とお正月準備の買い物に行った。品選びやら、荷物持ちやら頼りになった。買い出しを済ませたあとは、シュジンと息子に一通りの仕事の指示をして台所にこもった。途中二人がこそこそと「帰省をしてもしなくても。障らぬ○○に…」と言い合うのが聞こえたけれど、捨て置いた。水仕事の合間に、松など活けた。手に松脂の匂いがついて、ああお正月が来るのだなと思った。
紅白の北島さんは、竜の動きがぎこちなく、白い手すりがあることがいけない気がした。北島さんの張りのある声は、紅白らしいなと思った。次の紅白にお出にならないのは、もろもろ寂しい気がした。
お節をお重に詰めるかどうかを思案して、結局詰めることはやめにした。あの賑々しさこそが「お正月」のような気もしたけれど、一旦お箸を入れた後のお重のことを考えると「やめとこ」と思ってしまった。黒豆にお醤油を入れなかったのは息子に好評。きんとんにレモン汁を入れたのは不評だった。シュジンは「おいしい」としか言わないのでつまらない。
2日にドライブに出ると、辺りの景色が透明度を増しているようで清々しかった。出掛けた倉敷では、家々に工夫の凝らされたお正月飾りがしてあって、随分と目を楽しませてもらった。家並みで一貫したお飾りのセンスは、民芸の影響かしら。写真を撮ればよかった。
明けて3日、東海道新幹線が上下線で運休しているというニュースを自宅のテレビで見た。冬のこととて体調のすぐれない人もいるだろうし、乳幼児を抱えた人もいるだろう。これはたいへんだなぁと思った。
新幹線といえば、Twitter上の堀江さんと駒崎さんのやりとり を読んだ。駒崎さんが、乗り合わせた新幹線で子どもの泣き声にうるせーなと舌打ちする女性についてツイートしたところ、堀江さん が、舌打ちぐらいしたっていいじゃないかと返したらしい。
駒崎さんは、舌打ちをした女性に対して、「そういう人は車で移動するべきだ」と書いて、「公共圏は、我々が当事者意識と寛容によって生み出すものだ」と続けている。
舌打ちぐらいしたっていいじゃないかと言う堀江さんに対して、駒崎さんは「うるせーなとか言われると子持ちは地味に傷つくもんすよー」と返し、その後は読まずとも見当のついてしまう展開に。
いやはや、と思う。
新幹線でうるさく泣いてしまう子もいれば、泣かずにいる子もいる。うるさい子に舌打ちしてしまう大人もいれば、舌打ちしない大人もいる。
それだけのこと、という気がする。子どもを泣かせないことは案外難しいし、大人の舌打ちをやめさせるのも難しい。
泣かない子と舌打ちしない大人が増えれば、それに越したことはない。泣かせてすみませんという親と、大丈夫だよ大変だねというお客が増えればなお素晴らしい。けれど、実際はなかなかうまくいかない。
うまくいかない理由はそう簡単なものではなさそうだけれど、その理由をあれこれ考えるより、泣いてもしょうがないし、舌打ちしてもしょうがないねぇ、という大人が増える方がいい気がする。
堀江さんの立場と駒崎さんの立場で、それぞれの正論を言い合ってもたぶんらちは開かない。二人のやりとりが、わたしなんぞの知恵の及ばない別の次元の力学をはらんでいる気もするし、全くそうではない気もする。
なめらかな大人になりたい、そんなことを思ったお正月。山口のお天気は、元旦の強風をのぞけばおおむねうららかだった。
帰省はしなかったので、街にもデパートにも行かずじまい。これがわたしのおばさん化を加速させるかどうかは…神さま、教えてください。
※ みなさま、お正月をいかがお過ごしだったでしょうか。今年もどうぞよろしくお願い申し上げます。(サヴァラン)
nao
こんにちは
神奈川もお天気にめぐまれた穏やかなお正月だったと思います。
うちは喪中で帰省もせず、夫も通常営業で
息子は年末コミケに出かけ、私が8連休となったわりには
ホントになーんもない正月でした。
喪中って何をしていいのか悪いのか
よくわからないので都合良くさぼったりして(笑)
子どもが騒いだり泣いたりする帰省列車の光景には
息子が小さい頃、乗り物嫌いでよく泣いて
ちょっと肩身が狭かったことも思い出しました。
いろんな人がいるじゃん、いていいじゃんって思えるのは
多少の余裕と思いやりと、
やっぱりその社会が持つ価値観なんかも関係するのかなー
私は、サヴァランさんのいう「なめらかな大人」ってどういうものか
もっと知りたいです!
ききょう
北国ですが、珍しく雪のないお正月でした。NHKラジオ特番のクロスオーバーイレブンを堪能しました。
おばさん化の加速が心配ですか?厳島神社でおみくじを引いて占うべし(笑)
サヴァラン Post author
nao さま コメントありがとうございます。
神奈川もいいお天気のお正月だったんですね。
「お正月」と一口に言っても、本当にいろいろな過ごし方が。「お正月」がいろいろなんだから、人だっていろいろでいいじゃん♪ …あれ?理屈が逆か^^。わたくし年末に「なめらかな社会とその敵」というちょっぴりお堅い本をえんこらえんこら読みまして。その余熱がまだ冷めやらぬ年始となりました。ごつごつと角立たず、とげとげと苛立たず、地平のような目線でものを眺められたらいいな~と、そんなことを思っております。
サヴァラン Post author
ききょうさま コメントありがとうございます。
福島は今年は雪がまだなんですね。クロスオーバーイレブン!お正月のラジオを完全に見落としていました(聞き落しかな?)。お正月に往年の人気ラジオ番組って、それはとてもアーバンなお正月ですね!ああ来年はわたしもやりたいーーー。でもすっかり忘れそうだからメモメモ。。。厳島神社のおみくじ、引くべきですねー。「おばさん化の加速」、混沌の兆(吉凶未分)。それはそれでよしとすることにして^^