ああ、「ちゃん」付け。親しみとプライドのあいだ。
息子、今週後半は広島・宮島へ一泊の修学旅行。
準備の傍ら真顔で言う。「ぼくのだんごっぱな、どうしたら高くなる?」。なんでも「気になる子」が同じ班になったらしい。
「キミのだんごっぱな。親しみがあっていいと思うけど?」「親しみだけじゃ、ぼくはイヤなんだよ」「高くしたいんなら『はなたかな~れ』って唱えながら鼻をつまんだら?」「それ、やったら高くなる?」「やらないよりいいとおかあさんは思うケド」。
修学旅行といえばけっこう痛切な記憶がある。
わたしはお風呂が遅い。そのことを知ったのが小学六年の修学旅行だった。
遅いのはお風呂に限らない。わたしは給食も遅かった。わたしの時代、給食を食べることが遅いのは小学生としてゆゆしきことらしく、どの担任の先生もまなじりを上げておっしゃった。「サヴァランちゃんは給食が遅いです!」
学校の給食と 修学旅行のお風呂は似ている。友だちと楽しくおしゃべりしながら食べる、お風呂に入る。すべて「友だちと同じに」しているはずなのに、ふと気づくと友だちの給食のトレーも友だちの脱衣かごもからっぽだった。
「からっぽ」の前でいつも呆然とした。欠落している。手際のよさとか先を見通す目とか。とにかく大事なものが欠落している。わたしは決定的に。。。
生い立つにつれて、あのころ目にした「からっぽ」の光景がわたしの心象風景になった。
みんなでわいわい一緒にいる。ところが次の瞬間わいわい言っていた友人がどこかへ行っている。
受験、就職、結婚、再就職etc.
わたしの視界の前方で、ゆらゆらとゆらめく陽炎のような人影は、修学旅行の大浴場の湯けむりのなかの友人たちの薄桃色の人影とも重なっている。
息子よ。きっとキミもお風呂が遅い。石鹸の泡を残したまま脱衣所で慌てるさまが目に浮かぶ。持ち帰ったバッグを開きさえすれば、くちゃくちゃに丸めた洗濯ものが君の慌てぶりをもの語ってくれるだろう。
キミはまだ気が付かないかも知れない。だが母にはわかる。 友人たちは先へ行くだろう。そしてその後ろ姿を遠い目できみは追うだろう。 キミはきっとそういうジンセイを歩んでしまう。すまぬ。息子。母を許せ。だんごっぱなも母譲り。はなたかな~れ、はなたかな~れ。
はなしは全く別。先日うかがったお習字の先生のおはなし。
「うちの近所はわたしみたいなおばあさんばかりでしょ。みんなここに住んで長いから、たいていお互い『ちゃん付け』で呼んでるの。ところがこのあいだ、ある方が『 あなたにちゃん付けで呼ばれる筋合いはない!』って突然言われてびっくりしたんですって」。
NHKの朝ドラの「花子とアン」で、葉山蓮子役の仲間由紀恵が主人公の花(花子)を「はなちゃん」と呼ぶようになったのがとてもいい感じだった。とりわけ「ちゃん」の部分に華やぎと親しみがあって、花子をはなちゃんと呼ぶようになった蓮子がいとおしくなった。 ああそういえばドラマの花子も、石炭王との結婚を決めた柳原白蓮に「おいてけぼり」を食うのだったな。
お習字の先生のおはなしの続き。
「ここらはやっぱり田舎ですからね。田舎のひとには田舎のひと独特のプライドってものがあります。古くからここに田畑を持って長くここに住み続けていること。それが一番のプライドなんです。どんなに付き合いが長くなって親しくなってもそのプライドを傷つけたらダメ。プライドのあるひとに『ちゃん付け』は許せないんでしょう。むかしからここにいたひとが一番。土地を買おうがなんだろうが、あとから来たひとはそこをわきまえてなくちゃダメってことなの」。
親しみかプライドか、そこが問題だ。 ひと同士の関わりももしかしたらくに同士の関わりも、親しみとプライドの境界を行ったり来たりしているのかも知れない。
そんなことより息子よ。キミはお風呂が遅い。お風呂が遅いキミはつまるところ結局いろんなことが遅い。さしあたり宮島行きのフェリーには乗り遅れるな。それにしてもキミ、紫色の鼻ってのはそれ、つまみすぎ。
青緑
サヴァランさん、こんにちは。
ぼくちゃん、かわいいな~!のんびりっ子、いいじゃないですか。仲間だよ、すっかり親近感。
「ちゃん付け」、アンの蓮子さま「仲間さん」は、偶然でネラッたわけではありません(^^)
tsukimachi
サヴァランさん、こんにちは!
だんごっぱな&遅い とは、これはもはやワタシ?と夢中で読みました。
母につままれ「たかくなれ~たかくなれ~」とされていましたよ。
学生を進むと、遅いは民の知るところとなり
売店への買い出し組になど選出されず
ひとりお弁当を広げ先に食べるよう指示がでたり
次の授業の準備やトイレの心配までしてくれる友が現れたりしました。
なつかしくいろいろ思い出しました~。
宮島行きの乗船、うまくいったかなあ。。
サヴァラン Post author
青緑さん こんにちは。
のんびりっ子、
今日、旅行に出かけて行きました。
しっかりきっちり
朝からわたしを怒らせて。
本人は悠々と手を振って。
仲間さん。
あ、ほんとだ!仲間さんだ!
わたしはずっと彼女の発声に違和感があったんですが
今回の蓮子さまの「はなちゃん♪」はいいなぁ~と思ってます。
にしても蓮子さまの束髪はデカい^^
サヴァラン Post author
tsukimachi さん こんにちは!
え?え? tsukimachiさんもお仲間ですか?
うわ!わたしも思い出した。
わたしもまわりに段取ってもらってた。。。
ってことは
わたしの今の息子の世話は
「だんごっぱなの恩送り」?
そういえば息子が言ってました。
「Yがさぁ、遅いんだよ。
ぼく面倒見てやらなくちゃ」
なに?キミが面倒見る相手がいる?
宮島行き
先ほど学校から「全員元気に乗船」とメールあり。
至れり尽くせりです^^