美魔女の取り上げられ方についての問題提起
最近、テレビでよく「美魔女」という人たちが取り上げられている。私は雑誌には疎いが、雑誌でもよく取り上げられているみたいだ。
私は、美魔女は一種の趣味人だと思っていた。ボディビルが趣味の人みたいな感じで。美魔女を見ていると、昔テレビで見た、カブトム シを飼育するのが趣味の人を思い出す。そこら中に腐葉土の入った透明のプラスチック容器が置かれている家の中で、彼はその一つを指して、「これは何月何日に成虫になって出てくるんです」と言った。まるで出産予定日だ。そして予定日になると、カメラを構えて成虫になったカブトムシが腐葉土から出てくる様子を撮影していた。こんにちは赤ちゃん、私がパパよ。いや、カブトムシだから成虫か。
私は、美魔女たちの自分の肉体にかける情熱に、カブトムシ飼育にかける人の情熱と重なるものを感じた。情熱のベクトルが、自分の肉体に向かうか、カブトムシに向かうかの違いなのだろう。
ただ、マスコミの美魔女の扱い方に関しては、最初は自分たちで趣味でやっていた人たちを、マスコミ が発見して、あとは焼き畑農業的にブームを仕掛けるという、よくある流れが見られるかな、という気はする。だからだろうか、美魔女に対する批判もけっこうあるみたいだ。マツコ・デラックス氏は、美魔女について、「ブームに踊らされたカワイソウな女たち」「エセでは本物の若さには勝てない」と、なかなか辛辣なことを言っていた。まさしく魔女狩り。
確かに、美魔女を見ると「すげー!」とは思う。ただ、大メディアが放ってくる「女の子は、若く可愛くね!」というキラキラビームにうんざりしていた私は、「ああ、結局これかよ」と、またうんざりしてしまった。また「モテ」を煽って消費を煽るやり方ですか。相変わらずテレビの人たちは、「モテ」系の女しか「女」と認識で きないのですか、と。
美魔女ブームは、「女は40過ぎたら年相応の格好をして恋愛市場から降りろ」という世間の価値観からの解放であると同時に、「女はオッサンが欲情できる存在でいろ」という世間の価値観の延長であるような気もして、なんだかなぁという感じだ。
以前、私は自分のブログで、日本では、女は「若い女の子」の時期を過ぎたら、「おばさん」として「劣化」扱いだ、年齢を重ねた女性を大人として尊重する価値観がもともとあまりないと書いたけれど、美魔女の取り上げられ方が「40過ぎてもまだ『劣化』していない女がいる!すごい!」というものだとしたら、それってどうなんだろう、と思う。
私は、若い時期を過ぎたら、もうそういう価値観から解放されるものと 思っていたのに、まだ「延長戦」をさせられなければならないのか?という気分になってしまう。
美魔女ブームは、なんとなく「反抗期的反動」みたいな印象を受ける。日本の性価値観が、かつての「女に性欲はない」「自慰行為をすると脳が溶ける」と言われ、処女と童貞で結婚するものとされていた「抑圧」の時代から、バブル期の肉食系恋愛祭りという「反抗期」を経て、現代の「そんなに積極的に恋愛したくない人だっているんだよ…」という草食化に落ち着いてきているように、40代女性についての性価値観も、「いい年してみっともない」と言われて、性的な存在として振舞うことを白眼視された「抑圧」の時代から、美魔女ブームという「反抗期」の時代になっているのかもしれない 。だとすれば、今のブームが落ち着けば、そのうち40代女性の性価値観も「草食化」するのかもしれない。おしゃれも恋愛も、したい人はすれば良いし、したくない人はしなくて良いのだ。
美魔女の取り上げられ方が、「ボディビルでこんなに体を鍛えた人が!」「カブトムシをこんなに飼育している人が!」というものなら、見ている側としても、別に変なジェンダー的抑圧を感じなくて済むし、美魔女も色々言われないし、双方ハッピーで良いと思う。
あと、「美魔女」関連物として「友達に見える親子」もよくやってるけど、あれって、あくまでも「娘の友達に間違えられるお母さん」であって、「お母さんの友達に間違えられる娘」ではないのね。もう、どこかパロディで良いから 、「お母さんの友達に間違えられる娘」特集やってくれないかな(笑)。見た目アラフォー疑惑女子としては、そっちのほうが断然興味あります。
文章・イラスト 宇野ゆうかさん
こちらも、ぜひ、お読みください。宇野さんのブログ 「yuhka-unoの日記」
★前回の記事はこちら。
「見た目アラフォー疑惑女子の、異質街道まっしぐら人生」
カリーナが宇野さんを紹介したブログ記事はこちらです。↓↓
視点を変えて女性の「年齢」やもろもろを考えたい!
Tompei
美魔女=趣味人説、鋭いですね!
「劣化」現在進行形の身としては、美魔女は気になってしかたない存在です。「よくやるなぁ」と冷ややかな視線を向けつつも、「より美しくありたい」「若く見られたい」という素朴な欲望が刺激されてしまう。そして、どこかうらやましくもある。マスコミにつけこまれるタイプですね。ま、刺激されても何もしないけれど、何だかもやもや感が残ります。
自分の時間とお金とエネルギーをどこに向けるかは人それぞれ。美容とファッションにすべてをつぎ込むのも一つの趣味と考えれば、いちいち動揺しなくてもすみますね。私は身だしなみを整えるレベルでいいかな。
小花
まだ延長戦ってのは、同性間で強く観られてると思います。最近?顕著なのですが、仕事ができたり管理職につく女性達は女、男双方に対して女子力が強いし、そうであることが求められてるようです。結局美魔女が強い。ハードルはあがる一方で、仕事ができる女は女降りるなと言わんばかりになってる気がします。