ゾロメ女の逆襲

◆◇やっかみかもしれませんが…◆◇ 第83回 推し活 考

推し活とは無縁の人生だ。「ずっとクイズ脳ベルSHOWドラマ『すいか』を推してるじゃない?」と言われるかもしれないが、自分がイメージする推し活の熱量には遠く及ばない。

推し活には、そこに費やす時間や金品(元も子もない言い方)以上に「どうかしてるぜ」が不可欠だと思う。これは誹謗中傷でも揶揄でもない。推し活と恋は「どうかしてる」に決まっている。異論は受け付けません(なんだそれ?)。

2003年のドラマ『すいか』をあらためて思い起こすことの多い数か月を過ごした。日本テレビのドラマ『ぼくたちん家』を見ていたからだ。

木皿泉という夫婦共同ネームの脚本家が書いた連続ドラマが『すいか』だ。リアルタイムの視聴率こそ振るわなかったらしいが、のちにこのドラマは「伝説の」という接頭語が付与される存在になり、いまだにファンが多い。

『ぼくたちん家』は、『すいか』をはじめ、数々の作品で木皿泉とタッグを組んできたKプロデューサーが手掛けたドラマで、全編いたるところに『すいか』へのオマージュやリスペクトが詰まっていた。後半は「これってシン・すいかじゃね?」と思ったほどである。

『ぼくたちん家』の舞台、井の頭アパート

『ぼくたちん家』の脚本は若い女性で、これがデビュー作だそうだ。Kプロデューサーと二人三脚で練り上げたということなのだろう。このプロデューサーは『すいか』のときも、執筆が遅々として進まず精神的にも不安定になった神戸在住の「木皿泉」のもとへ東京から幾度も通ったらしい。この話は『すいか』界隈(!)ではつとに有名だ。

『ぼくたちん家』は、『すいか』同様、不器用で、多くの人がすんなりやり過ごせる箇所にぶつかったり、誤解されたり、テンパって極端な言動をとる登場人物が次々に出てきて、せつなく愛おしかった。そんな世界を堪能すると同時に、やっぱり人って、真剣になり過ぎるとタガがはずれるんだなと思った。後半はおもにKプロデューサー個人に対しての見解だ。

彼は、放映開始前から自身のSNSで過剰なほど自分のドラマをプッシュし、時には蛇足とすら思えるアツいコメントを連発していた。今回のドラマはセンターポジションがゲイのカップルということで、いつも以上にぶち破らなければならない壁のようなものを感じたのかもしれない。その姿は、あられも見境もなくていっそ清々しく、後半は感動すらした。そして腑に落ちたのだった。 彼こそが、誰よりもこのドラマの推し活をしていたのだと。

『すいか』で半七捕物帳を読むゆかちゃんこと市川実日子さん。可愛かった!

自らの作品をここまでアツく推す大人をわたしはあまり知らない。もちろん、自分の作品をPRするのはふつうだ。ひとりでも多くの人に自分の作品と出会ってほしいと思うのは当然だろう。でも社会人は世間体という、つまらないが意外と屈強な節度が発動しがちだ。「ぐいぐい行き過ぎるのは逆効果」という計算も働く。

河野プロデューサー(あ、実名書いちゃったよ。Xのリンクまで貼っちゃったよ)はちがう。まさに「どうかしてるぜ」状態でタガがはずれていた。ふつう、ここまでしないぞと幾度も思った。Love  is blind。

でも不快感はなかった。『ぼくたちん家』がとても良かったからだ。良さが社会通念の上を行けば、ひとは(←わたし)四の五の言わないものなのだ(ここに書いても)。Kプロデューサーは、視聴者がそう思ってくれることに賭けたのだろう。見てもらえれば「どうかしてるぜ」に正の説得力が得られると信じたのだ。

今回のドラマが「シン・すいか」だと思ったのは、たとえば、光石研がうさぎを抱いたり、アイスの棒に「あたり」が出たり、主要人物のひとりが横領して逃亡するという『すいか』と相通じるエピソードのせいだけじゃない。『すいか』ファンがこれらにグッとくることは想定内だったとしても。

『ぼくたちん家』には、『すいか』で浅丘ルリ子が演じた「教授」のセリフ「自分を待ってくれる存在はなにも肉親じゃなくたっていい」「外に出ないと見えないこともある」が正面切って描かれていた。要するに、『すいか』で言語化された主題の令和バージョンだったのだ。

ハピネス三茶

時代や価値観や居場所は変わっても、案外、ひとの日常はかわりばえしない。本当は同じ日なんてないのに、昨日の続きを自動運転しているような感覚になる。だから、一度何かに絡めとられるとなかなか気づかないし、気づいても脱出なんてできないと、かんたんに諦めたりする。

『すいか』も『ぼくたちん家」も、器用に生きられないそんなひとたちを描いている。彼らは、明日もなんとか生きていこうと思えるきっかけ、希望の端緒になるなにかを探しているのだ。お守りのように握りしめていたいなにか。それを見つけようとしていたからこそ、自分に関係のないもの、変わらないものなどこの世にないことに気づくことができたのだ。(『ぼくたちん家』の最終話のタイトルが「この世に私に関係ないものなんてない」なのだが画像が出てこない。ギリギリのタイミングで作っていたから?)

『すいか』が好きで、ご自身のzineにも『すいか』のことを楽しく鋭く書いて描いているイラストレーターの亀石みゆきさんがXで『ぼくたちん家』について「初回から最終回まで全部良かった」とコメントしていて、なんだかすごくうれしかった。

年末年始にもう一回見直そう。書くこと、再度視聴することがわたしにとっての推し活かもしれない。それも案外、熱量が要るし、自分で言うのもナンだが、こういう伸びしろはまだまだ自分にあるような気がする。乞うご期待!?

◆◆◆◆◆

2025年もわたしの記事を読んでくださって本当にありがとうございました。ままならなかったり、やりきれなかったり、あきらめコースのデジャヴを繰り返すような日々ではありますが、この場所でこうして文章を書くことは、自分にとって思った以上に生活のよすがになっていると年々思うようになってきています。

雑文と雑談と雑誌と(できれば望外な)雑収入があればきっと大丈夫!雑然とした雑多な世界を雑草のごとくたくましく来年も生きていきましょう!

by月亭つまみ

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