帰って来たゾロメ女の逆襲㉒ ~イッツ・ア・パラレルワールド!の巻~
パラレルワールドの概念を初めて知ったのは、筒井康隆の『果てしなき多元宇宙』という小説です。
1970年代前半にNHKで放送された少年ドラマシリーズ「タイムトラベラー」は当時もんのすごく話題になりましたが、小学生だった私も夢中になって見ました。
夢中になり過ぎて、このドラマに関するものならとにかくなんでも欲しい!とばかりにガツガツと、原作本である筒井康隆の『時をかける少女』も迷いなく買ったのですが、そこに一緒に収録されていたのが『果てしなき多元宇宙』だったのです。
この本で知った多元宇宙(≒パラレルワールド)の原理は
<世界は無数の縦糸と横糸で織られた布のようなもので、横糸が時間だとすると、縦糸は全てそれぞれ少しずつ異なった世界である。
どの縦糸にも同じような、でも微妙に違う自分がいて、糸が近いほど世界は似ていて、それぞれの世界での瞬間瞬間の出来事や選択で世界はどんどん枝分かれしていく>
というものだった・・と思います・・たぶん。
これを知ったときの「えーーーーっ!?ここ以外にも世界があるっていうのっ!?」という心からの衝撃は今でも忘れられません。
以来、なにか自分がミスをしたり選択を誤ると「ミスをしてない(or正しい選択をした)隣の縦糸の世界の自分は今頃よろしくやってるんだろーなー。くっそー!」とかなり間違った悔しがり方をするようになりました。
恥ずかしながら、いまだにそうです。
つい最近、私は家でスクワットをやり過ぎて腰を痛めたのですが、その瞬間からずっと、隣の縦糸の「スクワットを適度な回数で切り上げて腰に何の問題もない自分」が羨ましくてしょうがありません。
考えてみると、他人を羨むより、違う縦糸の自分を羨むことの方がずっと多い人生を過ごしてきたみたいです、私。
・・バカです。
さて、パラレルワールドものの映画といえばやはり『バック・トゥ・ザ・フューチャー』でしょうか。
ご存じ、時間旅行の物語ですが、パラレルワールド業界のお約束ごとがいろいろ登場します。
過去にタイムスリップして歴史を変えそうになると、持ってきた写真に映っている人物が消えそうになったり(生まれない可能性が出た)、現代に戻ってみると、気弱だった父親が頼れる男に変わっていて、父親をいじめていた男が下僕になっていたり。
最初にこの映画を見たとき、父親の変貌(車も母親も変貌してましたが)に???と思いましたが、しばらくして「あっ!タイムトラベルで時空がズレ、主人公が違う縦糸の世界に戻ってしまったんだ!」と合点がいき興奮したことを覚えています。
今から60年以上も前に作られた『素晴らしき哉、人生!』も意外なパラレルワールド映画です。
原題が「It’s a Wonderful Life」なので、てっきり能天気な人生賛歌の映画かと思ったのですが、なかなかどうして奥深い映画でした。
主人公が、自分の存在しない世界を見させられる後半のくだりは心底恐ろしかったです。
次は、これぞというパラレルワールドものの小説!・・
と思いましたが、選ぶのはけっこう難しいです。
あまりに多くて。
極論を承知で書くと「SFと村上春樹の小説はこぞってパラレルワールドものじゃね?」です。
他にも、夢オチなどで多元的に世界が描かれているもの、純文学とか私小説で「あのときああしていれば」的に取り扱われているもの、も個人的にはぜひともパラレルワールドの範疇に入れたい!【無類の拡大解釈好き】
そして、できれば、新刊でもベストセラーでも歴史に残る名作でもないけれどゼッタイ面白いと自信を持ってオススメできる逸冊を挙げたい!【よけいなお世話好き】
などと、いろいろな物好き心&スケベ心が発動します。
・・ああ、自分にプレッシャーをかけ過ぎてカンタンに選べない!【とんだ自作自演好き】
そうだ!
佐藤正午の『Y』がありました。
よかった、思い出すことができて。
さて、内容に触れるかわりに、この画像をお届けします!?
↓↓↓
あとはなにも言うまい。
存分にパラレルワールドを味わえること、間違いなしです。
みなさんもこれぞというパラレルワールドものがありましたら、ぜひぜひ教えて下さい。
大好物なもので。
by月亭つまみ
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okosama
つまみさん
初めて?コメントいたします。
パラレルワールド、大好きです!
私のおすすめは、森見登美彦さんの「四畳半神話大系」です。小説の文体にクセがありダメだわという方は、アニメをご覧下さい。(しつこくアニメ推し)アホだわーとヘラヘラ笑いながら、軽く一気見できます。コメントの早さに黙っていられない感が有り自分でも恥ずかしい(笑)。
つまみ
okosamaさん、おすすめ本、ありがとうございます!
「四畳半神話大系」、早速、図書館に予約しました。
うれしやうれしや。
黙っていられない感、もう私としては光栄至極でございます。
また教えて下さいませ!!
アメちゃん
こんにちわ。
スミマセン!
↑なにかのはずみで、名まえだけアップしてしまいましたm(__)m。
少年ドラマシリーズ!!
私は「まぼろしのペンフレンド」とか「なぞの転校生」を
よく見てました!
子供心に気味悪さがあって、なんだか怖くて、でも好きでしたね。
小説とか映画の「パラレルワールドもの」には
あまり知識が無いのですが
パラレルワールド自体に、とっても興味があります。
なんか不思議な感覚ですよね。
同時進行で、べつの宇宙に、べつの自分がいるって。。。
私、なんどか
行ったこともない所で目撃されたり
まったく知らない人から、「オゥ!」と
親しげに声をかけられたりしたことがあるんですよ。
これって、別のパラレルワールドの私を目撃したり関わってたりする人???
とか思ったりします。
ジャスミン
私も大好きです!時空飛び越えモノ!
でもずーっと納得いかなかったんです 過去に戻って色々やると
戻った世界が変わってるのに、なぜ自分は変わっていないの???
そっかぁ~パラレルワールドだったんですね!
小説はあまり詳しくないですが 映画は結構見てます
最近では「きみがぼくを見つけた日」が良かったなぁ~
つまみ Post author
アメちゃんさん!
「まぼろしのペンフレンド」も「なぞの転校生」も見てました!
特に「なぞの転校生」は空撮で始まったりして、不気味さもヒトシオでした。
確か、転校生たちの本籍地が全員、東京タワーの住所だったような。
思い出してもゾクゾクします。
ところで
アメちゃんさんの不思議な経験はそれはもう完璧にSFですよ。
無意識に、複数の縦糸を行き来しているのではないですか?
デジャヴや正夢、多くないですか?
そういう経験に乏しい私はうらやましいです!
つまみ Post author
ジャスミンさん、時空飛び越えモノ、いいですよね。
パラレルワールドの存在を意識すると、日常もちょっとだけ違って見える気がします。
私のように、隣の縦糸の自分をうらやむのはどうかと思いますが、違う時空に想像を広げると、少し気持ちが変わったり。
「きみがぼくを見つけた日」、知りませんでした。
検索したら、ブラッド・ピットが制作なんですね。
面白そうです。
okosama
再びのコメント失礼します。
あの時ああだったら…というのとは違いますが、これも時空飛び越えモノかと。フィリパ・ピアス作「トムは真夜中の庭で」。岩波少年文庫にあります。私はこれで児童文学にはまりました。
つまみ Post author
okosamaさん、児童文学という鉱脈がありましたかっ!
私はその分野に疎いので、これを機に読んでみようかなあ。
「トムは真夜中の庭で」って、なんだか雰囲気があって、いいタイトルですね。
面白い予感がビシビシします!
花緒
初めまして。
NHKの少年ドラマシリーズは見ていました。
パラレルワールドって不思議ですね。
ただ、
>なにか自分がミスをしたり選択を誤ると「ミスをしてない(or正しい選択をした)隣の縦糸の世界の自分は今頃よろしくやってるんだろーなー。くっそー!」とかなり間違った悔しがり方をするようになりました。
という考え方をした事はほとんどなかったので、今回は衝撃的でした。
>隣の縦糸の「スクワットを適度な回数で切り上げて腰に何の問題もない自分」が羨ましくてしょうがありません。
もう大爆笑です!
私も、「もし早くに結婚してて子供がいたら…」は考えたりしますが…。
ドラマの「仁」で、パラレルワールドが描かれていましたが、訳が分からなくなります。
無限にあるんでしょうか…。
「果てしなき多元宇宙」は、確か姉が本を持っていたような記憶があります。
「バック・トゥ・ザ・フューチャー」は大好きで、何度か観ました!
「素晴らしき哉人生!」は、私も今の今まで人生謳歌の話だと思っていました。
TSUTAYAにあるのかな(?_?)
宮木
はじめまして!
中学生時代にSFを読みまくった者としてこれはコメントを残さねば!と書き込みを敢行しました。
近年読んだもので衝撃的だったのは、新井素子「もいちどあなたにあいたいな」です。
もう真正面からパラレルワールドを扱った話で、でもちょっと着眼点が違ってて面白かったです。
独特な癖のある文章ですが、お勧めします。
主人公が、主婦、というのも身近な感じですよ。
つまみ Post author
花緒さん、きめ細やかなコメントありがとうございます。
「仁」!そういえばパラレルワールドの話だったんですよね。
見てなかった・・。
確かに、訳が分からなくなります。
鏡を向かい合わせにすると、角度によっては果てしなくお互いが映り続けるように見えたりしますよね。
子どもの頃、母親の三面鏡でよく角度を調整して覗き込んで遊んでいたのですが、「無限」という言葉を見聞きすると、あの鏡越しの果てしなさを思い出します。
今思うと、あのとき、よくぞ鏡に吸い込まれてしまわなかったものだ自分、です!?
If・・で自分の違う人生を考えることはよくあります。
ちなみに、ケガをした直後の私の口癖は「5分前の自分はシアワセだったよ」です(笑)。
「素晴らしき哉、人生!」はCSで見たのですが、TSUTAYAにもあったような・・。
つまみ Post author
宮木さん、はじめまして。
コメントありがとうございます。
新井素子さん!同世代です。
あまりに作家デビューが早くて、すごい同世代が出てきたものだなあとア然としたことを思い出します。
当時の自分は、頬っぺの赤い、まだ青っ洟を垂らしてる高校生でした(あくまでもイメージ映像)。
「もういちどあなたにあいたいな」、読んでみます!
つまみ Post author
宮木さん!
「もういちど」ではなく、「もいちど」でしたね。
地元の図書館で検索してヒットしないので、「ちっ!使えんな!」と思いましたが、自分の間違いでした。
ゴメン、図書館。
okosama
三たびコメント失礼します。
映画「イルマーレ」も時空飛び越えモノです。元の韓国映画&ハリウッド版有り。ロマンチックでせつない気分に浸りたい時にどうぞ。終わり方が違っていたような…まだら記憶で済みません。
つまみ Post author
okosamaさん、ありがとうございます!
ロマンチックでせつない気分、久しく浸ってないような・・。
その気分の存在を忘れないうちに見ないと!?
・・で、ロマンチックとプラスチックってどう違うんでしたっけ?(´∀`)
Comet
今さらのコメントですびばせん。昨日、清澄白河にある現代美術館で「うさぎスマッシュ」という企画展を観たんですが、そこにあった「ロスト・ガーデン」という作品が、まさにパラレルワールドだったんですよ〜。
こんなん。
http://www.cinemacafe.net/article/img/2013/09/19/19265/82545.html
写真だとちょっとわかりづらいですが、庭の向こう側にある窓に自分がいて、こちらをじっと見ているの。それが正面の位置にある窓なら「鏡があるんだな」と納得できるんですが、斜めの位置とか90度の位置とか、普通では有り得ない場所なんですよねー。
なんかもー、ゾクッとしました。正直、現代美術にはほとんど興味ないんですが(この企画展も仕事の流れでたまたま入ることになった)、コレはすごい体験したと思いました。
機会があったら行ってみてくださいませ〜。
つまみ Post author
Cometさん!
わー!ありがとうございます。
面白そう!
現代美術館はときどきチェックしてるつもりだったのですが、知らなかった。
行ってみます~。
・・アリスになれそう(^O^)