ゾロメ日記 NO.75 夏の終わりのしょーもねー<話>
◆8月某日 いっそ読まないで
アーティスティックな才能を持ち、繊細で他者(特に家族)と折り合いをつけることが苦手だが、同時にしたたかでたくましくて奔放だったりもする自分を、率直で赤裸々な文章で綴ることに長けている若い女性(あくまで自分基準)の本にたまに行き当たるが、ちょっと苦手だ。
今読んでいる本がまさにそれで、読み進もうかやめようか迷っている。ふだん、わりと、社会通念や固定観念なんてくそくらえ、と思っているくせに、こういう唯我独尊さには釈然としなかったりもする。「自分だけが特別だと思うなよ」などと言いたくなるのだ。狭い!ヤなオバハンだな、私。
だったらソッコー本を閉じればいいのだが、自分の感情が、たとえ負の方向であれ、揺さぶられるのも「悪くない」と思う気持ちも少しあるし、途中でやめることに単純に敗北感も覚える。われながらめんどくさい。
しかし、自分の心身の弱さやズルさ、あられなさを、躊躇しないで(もしくは、躊躇していないように加工して)表現できる人って実際はすごく強いと思う。こういうタイプにはかなわない。
◆8月某日 とまどう文鳥
長い付き合いの友達から、勤続40年と定年を同時に迎えた(5年間の再雇用あり)と連絡をもらった。ひとつの会社に40年!スゴイ!
勤続年数が長い知り合いにその秘訣を聞くと、返ってくるのはだいたい「気がついたらこの年数」「他にやりたい仕事がなかった」「なりゆき」あたりで、強い意思を表明する人はほぼいない。そういう「自己主張が控えめなこと」が、ひとつの場所に長く勤めるための必要条件なのかもしれない。…あ、違うな。私は自己主張なんてほとんどしないのにいっぱい転職している。いやホントに。
でもまあ、転職するのもしないのも結局自分が決めたのなら、のちにどう転ぼうがそれが正解なのだろう。私もいろんな会社や業務に関わって、中にはどうかと思う職場、びっくらこいちゃうローカルルール、もあったけれど、意外なくらい後悔はない。なににつけ、答えはひとつなんかじゃないと身を持って知ったことはよかった。もしかしたら、今後もっと珍妙な組織を知ることだってあるかもしれない。来るなら来いだ。こっちから行くかどうかはわからないけど。
先日、お笑い番組で見かけたキンボシという漫才の左側の相撲に詳しい方の人が、ミレニアムの頃に数年間在籍した会社のカメダさんという男性にそっくりなのでびっくりした。
カメダさんは関西出身で、目がクリッとしてくちびるがちょっと赤めで、キョトンとした顔をしていた。文鳥に似てた。最初はシュッとしていたのに、徐々に太ってきたこともあって、私は彼に「デ文鳥(でぶんちょう)」というあだ名をつけた。失礼きわまりない。
ある日、同僚のナツミ嬢と昼休みに社食行こうとすると、デ文鳥が私たちに「1時から会議室を使うので準備をしといてもらえる?」と言った。「えっ?それって昼休みにやっとけってこと?」と私たちは内心ムッとした。彼にはそういう気配りに欠けるところがあった。だから陰でデ文鳥なんて言われるのだ(それとこれとは話が違う)。
私たちは、昼食後会議室に行って、机をコの字型に並べかえ、ホワイトボードの位置を調整したりした。ホワイトボードは両面に書けるタイプだった。私はその端っこに黒マーカーで小さな、でもふっくらした文鳥の絵を描き、くちばしはわざわざ赤で塗りつぶし、吹き出しを描き「昼休み中!」と入れて、面をひっくり返して職場に戻った。
その日、会議から帰って来たデ文鳥は何も言わなかった。ホワイトボードは片面しか使わなかったので気づかなかったんだなと思った。
数日後の昼前、私に仕事を依頼してくるときデ文鳥が「午後でええから。昼休み中はやらんでええよ」と言った。斜め前の席のナツミ嬢が私より先に大笑いで反応した。デ文鳥も笑っていたみたいだが、よくわからなかった。文鳥の表情は読みづらい。
思えば当時、デ文鳥は30代なかば、私にいたってはすでに40代だった。いいトシして職場でなにやってたんだ私。この職場でのことは以前のゾロメ日記にも書いたっけ。(⇒★)
過去の職場のあれこれを今あらためて思い出すとなんだか「旅の恥はかき捨て」みたいな気分になる。私にとって仕事は旅なのかもしれない。…なんちって。
by月亭つまみ
♥♥【勝手にお知らせ】♥♥
「なんかすごい。」でおなじみのはらぷさんのお祖父さん原田栄夫さん の人形が現在、京都に上陸中です!
9/3(日)まで、同時代ギャラリー ショップコラージュ で開催されている「[ZINEとクラフト」という展示に参加中だそうです。
関西方面の方、栄夫さんのお人形の実物を見てみませんか。詳しくはこちらをご覧ください。 ⇒ ★
まゆぽさんとの掛け合いブログです。→→「チチカカ湖でひと泳ぎ」
凜
デ文鳥!さすがのネーミングセンスですね、ご当人知らないのに大笑いしました(^◇^)。
「とまどうペリカン」は井上陽水の曲のなかで一番好きな曲で、これきくたびに天才だと感じてしまいます。
つまみ Post author
凛さん、こんばんは。
過去のこととはいえ、お恥ずかしい限りです(^^;
私も「とまどうペリカン」が好きです。
なぜか一時期「教えるのはすぐできる~」という歌詞がものすごく印象的で、頭の中をリフレインしたものです。
あと「とまどうペリカン」のメロディラインも、音符の下がり方がステキです。
ホント、唯一無二の人ですよねえ、井上陽水。
爽子
勝手にお知らせなギャラリーに勝手に行ってきます。
久しぶりに電車に乗り、久しぶりファンデーション塗ってやったぜ。
先発隊の友人はこんなものを持ち帰ったよ。
つまみ Post author
爽子さん、ギャラリーはいかがでしたか。
私も、電車に乗る外出以外は日焼けどめしか塗らなかったのですが、最近、出先(義母の病院)のトイレの鏡に映る犯罪者のような自分の顔(←イメージが貧困過ぎる)にあぜんとして、ファンデーションも塗るようにしました。
だからといって、人生のなにかが変わったわけではありませんが。
アメちゃん
唯一無二の井上陽水で思い出しましたが
本人と気づかれないように注意をしてタクシーに乗ったのに
行き先を告げたとたん
「あ!陽水さん!」と運転手に振り返られた…
という逸話を、どっかで聞いた記憶があります。
昨日、勝手にお知らせギャラリーに行ってきましたよ!
ラスイチで残っていた羊の作品。
未年生まれの私への贈り物だー!と勝手に決めつけ、お持ち帰りいたしました。
かわいいよ〜。
栄夫さんの作品は良い意味での脱力感と、てきとうさ(←私にとって最高の賞賛です)が
魅力的ですね。
意図しては出来ないこの魅力に、ちょっと嫉妬します。
カメにのった少年の憂い顔が、私のツボにはまって
帰りの電車で
「甲羅のフィット感がしっくりこないのだろうか…」とか想像して
ずっとクスクス笑っていました。
勝手にお知らせ&爽子さんのコメント。ありがとうございました!
つまみ Post author
アメちゃんさん、こんばんは。
井上陽水の声は、本人と清水ミチコさんにしか出せないですよね(^O^)
わあー!
勝手にお知らせギャラリー、いらっしゃったのですね。
いいなあいいなあ。
そうですよね。栄夫さんの人形の魅力のひとつはてきとうさですよね。私もそう思います。
そして、カメに乗った男の子、左右の目の形の違いに憂いが出てますね。
「甲羅のフィット感がしっくりこない」という表現がしっくり来過ぎて大笑いしました。
はらぷ
はらぷです!!(突然のカットイン)
わー、爽子さん先日はありがとうございました(じつは京都で一緒にランチをしたのです、うふふ)
先発隊のご友人、人形まで!うううありがとうございます。
そしてアメちゃんさんも行ってくださったとは…嬉しいです!
最後の羊はアメちゃんさんのおうちにもらわれていったのですね。
じつはこの展示をいい機会に京都に遊びにいっていて、1日と3日に少し会場に寄ったのですが、わーんお目にかかりたかったです。
祖父の人形はてきとうさが魅力、私もほんとにそう思います。
いっこいっこ違うし、目なんか下書きしてあるのにぜんぜん線を守っていない(笑)
そのてきとうさのなかに、動物の造形とか女の子のドレスの模様とか、繊細な部分が見え隠れしていて、その塩梅がさいこうだなあと思います。
そうか、カメの少年のあの目は、尻のおさまり具合の悪さが原因か(笑)
つまみさん、その手の本の居心地のわるさ、ものすごくわかります。
とかいって以前ベスト本で紹介した本も、まさにそういう本だったと思うけど、すごく面白かったけど、この人嫌いと思った(笑)
反撥をおぼえる自分が、単に嫉妬してるだけの、つまんないにんげんなんじゃないかと思わずにいられないし、「面白い」と思うことさえ「面白いと思える自分」と思っていたいだけなんじゃないのと思わされて、もうどこまでも「自分」「自分」っていうか、なんでこんな自我ばっかりなんだよ、疲れます。
なんか、そんなような話をちょうどミカスさんのコーナーでもしたような気が…。お題はゴーヤで(笑)
アメちゃん
なんども登場でゴメンナサイ。
>はらぷさん。こんにちわ!
たしか同時代ギャラリーのHPだったかなぁ、リンクされてたTwitterに
「京都に行く」と書かれてた(ような気がする)ので
もしかして、はらぷさんが来られるのかなぁと
お会いできるといいなぁ…と期待して出かけたんです。
ギャラリーに居られた方も
「きょうはお孫さんが来られるみたい」とおっしゃってたのですが
私は12時半頃に行ったので、たぶん早すぎでしたね。
カメ少年は、なにか悩んでいますよね^^。
あと私は「バランス人形」も好きです。
またどこかでお会いできたら良いですね。
羊は、私の「かわいいこれくしょん」に新加入して、一緒に並んでいます。
はらぷ
アメちゃんさん、ふたたびこんばんは!
ああー、そうでしたか!
最終日、私はけっこうおそい時間に行ったんです。
もっと早く行ってればお会いできたかも…ざんねんでした…!
アメちゃんさんの「かわいいこれくしょん」気になるー。
そして、「バランス人形」いいですよね!私も大好きです!
しかし、あれこそ作ったものに頓着しない祖父を地で表していて、つまり…行方不明です!ははは。