【月刊★切実本屋】VOL.15 憧れの芸能人
30年来の清水ミチコファンです。今まで、早稲田大学大隈講堂、草月ホール、よみうりホール、世田谷パブリックシアター…のライブに行ったことがあり、どれもサイコーでしたが、確か草月ホールでのライブからの帰り道、前を歩いていた若いカップルが「なんだかわかんないけど、とにかく『明日から頑張ろう!』って思えた」「あ、わかるー」と会話していて、「同感!そんな君たちに幸あれ!」とエールを送りました、心の中で。
その昔、飲み会で「憧れの芸能人は?」という質問をされ、「清水ミチコ」と回答したところ、「完璧」と褒められました。なにがどう完璧かは、言いも聞きもしませんでしたが、なんだか、その人と一瞬分かり合えたような気がしました。最近は誰にも「憧れの芸能人は?」と聞かれませんが、四半世紀以上経った今でも同じ名前を出しそうだし、変わらずに「完璧」のような気がします。
清水ミチコ、なんだかんだ、すごい。
芸能界における「ど真ん中ではないのにその人が居る時点でそこがなにかの中枢にも見える立ち位置」自体もすごいけれど、絶妙なポジションのまま30年になること、なにより、その間のいつ、いかなる瞬間をとっても、「今まさに旬じゃ?」と思わせる鮮度保持力(?)がすごい。
彼女の理想のポジショニングには、「本業の芸のクオリティが高い」という大前提によるものなのは、多くの人が認めるところでしょうが、長いことテレビ番組情報誌「TV Bros.」の読者だった私にとっては、その文章力によるところも大きいです。
今回取り上げる本、清水ミチコ著『私の10年日記』は、「TV Bros.」に連載されていた「私のテレビ日記」の書籍化です。発行は2006年で、1996年~2005年分の日記が収められています。発売と同時に購入したこの本を、私はもう何十回開いたかわかりません。
目のつけどころがsharpで、リズム感があって反射神経に秀でていて、流行りの表現を使っても迎合に映らず、饒舌で説明の省略箇所が多くても、わかりやすくて読みやすい文章…ホント、憧れるなあ。
この本を開くのにいちいち理由は要りませんが、自分の文章が読みづらいなあと思うときは(いつもじゃんってか。ほっとけ!)開きたくなります。そして、敗北感に打ちひしがれつつ、自分にも清水ミチコ的センスの萌芽のようなものはないかと脳内を捜索(というとかっこいいけれど、要するに「ジタバタ」)するわけです。精神の同化を試みる、みたいな。モノマネ芸人に憧れる素人のサルマネ?!
この日記にはふつうに芸能人がたくさん出てきて、ふだん、芸能界に憧れなど持っていないつもりの自分なのに、羨ましい。たとえば、黒木瞳サマ(同世代つながり)の日記があったとして、そこにいくら、ザ・芸能人!的な人が登場しても、まったく羨ましいと思わない自信があるのに、なぜでしょう。
あ…そうか。私は、いろんな芸能人と交友がある清水ミチコさんが羨ましいのではなく、清水ミチコさんと交友が持てるそのへんの芸能(!)の方々が羨ましいんだわ。そりゃあ、黒木瞳じゃ羨ましくないわけだ。…失礼なっ!
感性を研ぎ澄まして推敲に推敲を重ねたような文章も素晴らしいですが、唯一無二の言葉のみを並べたような文章は、ちょっと自己陶酔っぽくて疲れます。それより、流れや勢い重視の、自分の視点にやたらフォーカスし過ぎない、正確であろうとし過ぎない(どうせ人間なんて嘘つきなんだからさ)文章の方が私は好きかもしれません。そんな意味でも、まさに清水ミチコさんの文章がピッタリ!
『私の10年日記』はどのページを開いてもハズレなしですが、一日選ぶとしたら、やっぱり2002年のあの日。サブタイトルは【ものすごいショックで落ち込んだ!フテ寝した!】 。
出だしは「ナンシー関さんが亡くなっちゃった」と、ある朝、水道橋博士から電話があった。ものすごいショックで、あれ?自分はこんなに好きだったか?と思うくらい泣けて落ち込んだ。
そして最後の締めは、そういえば、最後にメールのやりとりしたヤツはどんな内容だったっけと思って、パソコンを開いてみたら、「水野真紀さんについて」だった。し、し、しのびにくい。
そんなわけで、今回は、みなさん、とうにお気づきのように、清水ミチコさんの文章を自分なりにモノマネしてみたわけですが、いかがでしたでしょうか。
えっ?気づかなかったですか?
つ、つ、つたわりにくい。
by月亭つまみ
◆木曜日のこの枠のラインナップ
第1木曜日 まゆぽさんの【あの頃アーカイブ】
第2木曜日 つまみの【帰って来たゾロメ女の逆襲 月刊 切実本屋】
第3木曜日 はらぷさんの【なんかすごい。】
第4木曜日 つまみの【帰って来たゾロメ女の逆襲 やっかみかもしれませんが…】
まゆぽさんとの掛け合いブログです。3ヶ月ぶりに更新しました。→→「チチカカ湖でひと泳ぎ」
はしーば
そうか!清水ミチコの魅力は頭の良さなんですね。
ナンシー関、みうらじゅん、能町みね子にも似た気配を感じる非凡さ。
それに、ぶっ飛んだモノマネをしても汚く、嫌味になったりしないさじ加減はセンスの良さですかね。
私も、ライブには何度か足を運んでいます。
J-WaveのMAKING SENSEもよく聞きました。
「私の10年日記」も読みました。
つまみさんと同じアンテナが立っていたのもなんか、嬉しいです。
爽子
つまみさん、わたしも、行った行った!
清水ミチコさんのライブ。
いつだっけ?と思ったら、ちょうど五年前の今日でした!
つまみ Post author
はしーばさん、こんばんは。
あっついですね。
わーい!ライブ行った仲間\(^o^)/
同じ方向のアンテナ、わたしも嬉しいです!
そうなんですよね、さじ加減の見極めこそがセンスですよねえ。
J-WAVE、三谷幸喜との番組ですよね。
あれも、とぼけてて面白かったなあ。
つまみ Post author
爽子さん、ちょうど同じ日って、奇遇ですねえ。
私も「お楽しみ会」というタイトルのライブに行ったなあ、そのときになにか冊子を買ったなあ、と探したら出てきました。
2007年お楽しみ会「リップサービス」。
20周年記念で作られた冊子がこれです。