【月刊★切実本屋】VOL.47 そりゃあ、自律神経失調症にもなろうってものだ。
はじまりは5月のある日、天気予報が言った。「本日は全国的に黄砂が多く飛ぶでしょう」。
肺に持病のある身にとってPM2.5は鬼門で、その値で喉のイガイガ度が変わってくるので、常日頃からけっこう気にしている。その証拠に、今の住まいのベランダから見える西方面の景色(我が家の西は新宿で、その先の南西方向は富士山)、特にビル群を見ただけで、PM2.5の数値がだいたいわかるくらいだ。ぼんやりしてよく見えないとキケンで、さらにそこに黄砂が加わると、キケン度がアップすることは経験で知っている。
なので、天気予報の黄砂情報を聞いた時点からすでにうっすらと憂鬱な気分になったのだった。
案の定、その日から咳が増えた。職場が学校なので、日々、コロナ罹患のストレスが大きいのはもちろん、職場や通勤の電車で「咳を我慢する」ことも、これまた、なかなか大きなストレスなのだ。
PM2.5&黄砂のせいで物理的に増えた咳は、実はさほどのことではなかったのかもしれないが、気は心、病は気から、と先達も言うように、その日を境に、私は体調が不安定になってしまった。
常に具合が悪いわけじゃない。同時に、症状は咳だけじゃない。お腹の調子も低下し、食欲もいまひとつの日もある‥となれは、あの憎きコロナ症状にも抵触し、そっちも疑うことになる。
でも、そんなダウナー(死語?)の日もあれば、ウソのようにスッキリさっぱりして「あれ?昨日の私はなんだったの?ネガティブなことを考えまくった自分よ、いずこ」的なイケイケの日(死語?)もあるのだ。
憎きコロナも、あの手この手と一筋縄ではいかないフェイントをかけてくると噂には聞いているが、私の年齢、私の持病からいって、もし罹患していて、咳や胃腸の調子がその症状であるなら、合間に「イケイケの日」は混入されないだろうと思った。なにより、どの瞬間をとっても体温は正常ときた。
そんな日々を過ごして早ひと月である。体調が良かったり悪かったりを繰り返して今日に至っている。昨日は元気だったのに今日は不調、明日はわからない、のリピーター。仕事は休んでいない。労働に気が進まない日もあるが、それはいつものことだし、行けば行ったで元気になったりするし、熱があったらさすがに検査かな、と思うものの、発熱は一貫してない。
そして今日、正確には6/9だが、かかりつけの地域の基幹病院に行ってきた。年に2回、6月と12月が持病の定期検査なのだ。
主治医にこのひと月の不調を訴えると、コロナに関するストレスの、ある意味、典型的な症状のように見えると言われた。特に、持病で咳が出る人は、大なり小なり、私のように、人前で咳をしてはならんというプレッシャーでよけいに咳が出る、というジレンマを抱えているようだった。
なんだか、それを聞いただけでちょっと気が楽になる。
とはいっても、咳の回数は気のせいではなく実際に増えているわけだし、痰もからむし、画像検査の結果も良くはないし、ストレスを増やさないようにと言われてもどうしていいかわからないし、あわよくば「基礎疾患持ち扱いでワクチン接種の前倒し」も難しいことがわかったし(自分の持病が「コロナの重症化が懸念される疾病」に入っていなかったのはよかったのだけれど)根本的な解決法が明示されたわけではないので微妙なのだが、画像も含め、現時点ではコロナの疑いはたぶんないと呼吸器専門医に言われたことで、かなりホッとした。
なんだ、やっぱり私には、そのことが呑み込んだ鉛だったのだ、とあらためて思う。
これをきっかけに、自律神経も復調しないだろうか。ってか、早くワクチン打ちたい。
反ワクチン、コロナ陰謀論支持者の自説の開帳も、それはそれで自由だとは思うが、日々、罹患するか、あるいは罹患させているんじゃないか、というストレスの渦中で仕事をしていると、自分なりの仕事の質が保てなくなることも大きなストレスであることがわかる。まさに、ストレスがストレスを呼ぶ、負のスパイラルに陥るのだ。
ワクチン接種を望む理由は、コロナのストレスから回避したいことだけじゃない。一刻も早く、心おきなく納得できる仕事をしたいから接種を希望するのだ。
そんななか、現在、荻原規子の『RDG レッドデータガール』にハマっている。
漫画化、アニメ化もされたようだが、私は小説の方を堪能中。スピンオフも入れて全7巻だが、今読んでいるのは第4巻「世界遺産の少女」だ。
中高生が主人公の超常現象ファンタジーははっきり言って苦手な分野なのだが、自分の能力に無自覚なヒロイン泉水子(いずみこ)がまどろっこしいけれど魅力的で、彼女の成長物語になっているし、相手役の深行(みゆき)クンのツンデレぶりもツボ。
いいトシしたオバチャン(私)が、自身の心身の不安定さを忘れる(あるいは乗り越える)のに、いいロイター板になりそう、なれるかな、なれ!
by月亭つまみ