人生はカスタードクリーム:海老マカロニグラタン
昔々、通っていたケーキ教室でカスタードクリームを作る機会がありました。
卵黄、砂糖、薄力粉を混ぜ合わせ、牛乳を加えて小鍋で加熱していくのですが、極力目を離さないようにして木べらで混ぜ合わせなければなりません。
先生が少し強めの声で言いました。
「なかなか固まってこないでしょ?でもそこで気を抜いて目を離したり手を止めたりしないでくださいね。突然来ますよ!来たらあっという間ですよ!」
すると、それを聞いたKさんがひと言。
「更年期のようなものですね」
当時私は30代。Kさんは50代に差し掛かったくらいの、とても素敵な女性でした。
「そうなんですか?」と聞く私に、Kさんはとても穏やかな声で
「そうよ。まだ大丈夫って思っているとね、突然始まるの。一旦始まったらもう一気に色々面倒なことが起きるのよ。だからミカスさん、気を抜いてはダメ」
あの時は実感できなかったけれど、今となってはKさんの言葉は間違っていなかったとつくづく思います。更年期障害なんて私にはやって来ないんじゃないの?なんて思いながら暢気に小鍋をかき混ぜていたら、「あれ?これは何?」と思うようなほんの小さな引っ掛かりに気付き、「もしかしたらこれが更年期障害?」と思っているうちにあれよあれよという間に体のあちらこちらに差し支えが出てくる。こうなったらもう、カスタードには火が入り過ぎて、もろもろと不細工に固まるばかり。
更年期だけではありません。人生の問題のほとんどは「まだ大丈夫」と悠長に構えている時に突然やって来て、あれよあれよという間に不細工に固まっていきます。
仕事も、健康も、介護も。
そう、人生はカスタードクリーム。誰かが上手に作ってくれればきれいで美味しいけど、自分で太刀打ちしようとするとそれはそれは厄介で、なかなか上手くいかなくて、ともすればおろおろとしているうちに手遅れになってしまう。
「だからミカスさん、気を抜いてはダメ」
ああKさん、あの時のあなたの言葉は、20年以上経った今の私の背中をぱーんと叩いて喝を入れてくれてますよ。自分の事も、自分以外の事も、本当に厄介だけど、もう少しだけ気を抜かずに頑張ろうと思うもの。そして、つやつつやときれいなカスタードクリームを炊き上げたいと思うもの。
さて、なかなか来ないようで突然来ると言えば「玉ねぎをしんなりするまで炒める」という行為。私もこのミカ料で割と書いてしまいますが、実際にやってみると毎回「しんなりってどれくらい?」と戸惑ってしまうのです。で、「これはまだしんなりではないのかなぁ?」と思っているうちにあっという間に玉ねぎに色がついてしまったりするのです。今日ご紹介する『海老マカロニグラタン』も玉ねぎを炒めます。白くてきれいなグラタンにするため、玉ねぎに色は付けたくないのですが、しんなりの見極めが出来ない私は毎回おたおたしてしまいます。
海老マカロニグラタン
- 海老は殻をむいて背わたを取り、きれいに洗っておきます。
- マカロニはやや固めに茹でておきます。
- 玉ねぎは5ミリ幅くらいに切っておきます。
- しめじは手で小房にわけておきます。
- フライパンに油を引いて中火にかけ、玉ねぎとしめじを炒め、それぞれに火が通ったら海老と少量の白ワインを加えてさっと炒めます。エビを炒め過ぎると固くなってしまうので気を付けて。最後に塩こしょうで味を整えて火を止めます。
- ホワイトソースを作ります。
鍋にバターと小麦粉を入れて弱火で加熱します。
バターが解けてきたら、泡だて器を使ってしっかりと混ぜ合わせていきましょう。バターと小麦粉がしっかり混ざり合うように、よく混ぜてください。
鍋に牛乳を加えていきます。少しずつ加えては混ぜ合わせ、焦らずに根気よくやることでダマになることを避けられます。
牛乳を温めておくとダマにならないと言われますが、わざわざ温めなくても、常温なら大丈夫。とにかく、ゆっくりと焦らずに。
ダマなく混ざり合って、丁度いい濃度になったら火を止めて、塩と白コショウで味付けをします。 - 耐熱の器に、マカロニ、炒めた玉ねぎ・しめじ・エビを入れ、ホワイトソースをたっぷりと加えます。
- オーブントースターで表面に焼き色がつくまで焼いたら出来上がりです。
「あさイチ」では「グラタンの話で1時間半!」(んなわけない!)と紹介されたPodcast『That’s Dance!』ですが、ただ今『あなたのおすすめ洋菓子』と『昔あったアレ、どこいった?』を募集しています。
こちらからどしどしお寄せください。
ミカスでした。