9月にコートを買う
どうもご無沙汰しております。ミキティです。ご無沙汰にもほどがある!!
しばらくお休みさせていただいておりましたが、この秋にオバフォー祭りにお誘い頂いたことで、記事を書きたい気持ちがむらむらとわき上がり、ちょうどファッションネタでどうしても書きたいことがあったので突然の登場と相成りました。
残暑厳しい9月の終わりのこと。久しぶりに服を見に行きました。ときどきのぞくそのショップは、すっかり秋冬モードになっていました。今買うとしたら、涼しくなったらすぐに羽織れるカーディガンかなあと思いながら店内を見て回ります。ラックにかかったブルゾン、スカート、コートなどをざっと見ながら進むうちに1着のコートの前で私の足がぴたっと止まります。んん?これは!
数ある服の中でもそのコートはひときわ異彩を放っていました。そのコートだけ浮き上がって見えるような存在感だったのです。
コート??今年は買う予定ないよ。しかもこの残暑でいつ寒くなるかもわからないし、今日はカーディガンを見るつもりだったし。。。
ところが、私はいつしか店員さんに試着を頼んでいました。その店員さんは、
「ああ、そちらのコートは今年一押しのスペシャルなコートなんです。イギリスの生地メーカーのラバット社と提携して作ったものになります」と言うではないか。ということは、お値段もそれなり、、、そっとタグを裏返して見ると、そこには想像をはるかに上回る値段が書かれていました。
いやいやいや、ないないない。これはないわ~。と心の中で思いながら、冷静を装って、「あら~、お値段もスペシャルですね~、おほほ」と余裕を見せた私でありました。しかしこのお値段のコート、せっかくならどんな着心地なのか羽織ってみたい、と思い、試着させてもらうことにしました。すると店員さんから「今、お客様はシャツをお召しですけど、そちらのコートをお召しになる頃には何かもう一枚羽織られると思うのです。よろしければカーディガンをお羽織になってお感じを見られた方がよいかと思います」というアドバイスが。
さすがです!できる店員さんだ。この人は信頼できる!と、いっぺんで好感度が増しました。
そしていざ試着。ああ、まるであつらえたかのようにしっくりとくるのです。私のためのコート!?と勘違いしてしまうくらいです。後ろ姿も鏡に写してみるとシルエットが美しくどこまでも完璧です。
ひさびさに心震える出会いでした。いやあ、でも、こんなお高いコート買ったことないよ。
すばらしいコートですね、と言う私に店員さんはおおきくうなずきました。
「こうやってお店に立っていろいろなお客様とお話させていただいていると、みなさん探しているときにはなかなかぴったりくるものに出会えなくて、そうでないときにピンとくるものに出会うことが多いとおっしゃるんです。それには理由がありまして、お探しのときは、いつ、どんな場面で着るか、何と合わせるか、色は何色で形はこうでと、頭の中にイメージを描いた状態でお店にいらっしゃるのです。そうすると、この形で色が黒ならよかったのに、とイメージに近づけることが重要になり、こちらもお似合いですよと、おすすめしても「今日探しているのはそれじゃない」というふうになってしまってイメージ以外のものに目がいかなくなるのです。
そうでないとき、何となく入ったお店で「これ!」とピンときたものって、本当にその方が好きなものなんです。よくお客さまが、これって衝動買いだわっておっしゃるんですけど、これだけたくさんのお店があり、これだけ商品がある中から、それを選ばれたということは絶対に間違いがないんです。 きっとそうやって選んだものはずっと好きなままなんです。ですから本格的に寒くなってからコートを探すと、イメージを持って探すことになるので、夏の終わりにコートを見るのが一番、自分の好きなものに出会える確率が高いんですよ。」
ああ、すごく深い話でした。ようやくわたしは、長年の謎であった、お店で暑い最中にコートを店頭に並べる理由がわかりました。もうこの話にお金を払ってもいいと思ったくらいです。このときすでに私は、このコート買ってもいいかも、、、と思い始めていました。
でもその日はいったん頭を冷やそうと思い、その方の名刺にコートの品番をメモしてもらい、検討しますと言って店を後にしました。帰りの電車の中で、そのお店は家から近い百貨店にも入っており、その百貨店のハウスカードを持っているので、そちらで買えばポイントがたくさんつくなあ、などと頭の中で算段しました。いやいやいや、ちがうな。
今回はポイント云々じゃない。あのお店で今日の店員さんの話がなかったら購入する気持ちにはならなかったのだから、やっぱり後日、あのお店で、あの店員さんからコートを買いたい。ぜひそうしたい、そう思いました。
*
そして後日。お店を訪問すると、別の店員さんがカウンターの中にいました。店内には他にはだれもいません。しまった、電話で確認してからくればよかった、と思いましたが、その店員さんに、先日担当してくれた○○さんに会いたいのですが、と言うと、「はい、○○ですね、今休憩中ですので、呼んできますね」と呼びにいってくれました。ほどなく彼女が現れ、「コートですね」と言いながらにっこりと笑顔で近づいてきました。まるで私が来ることがわかっていたかのような反応でした。できる店員さんには、前回、私が購入をすでに決めていたことがわかっていたのでしょう。
好きなもので会話が盛り上がる楽しさ、その場に生まれる高揚感、経験に基づいた深い話、そういったものすべてひっくるめての購入の決断なんだよなあと思いました。
このコートを着るたびにいろんな思いが蘇ってくることでしょう。
そしたら、あのお値段も決して高くない!(高いけど、、)
そう思える心に残るよい買い物でした、