淡々と勤勉に、明るさと温もりをもって。
毎週土曜日は、娘とふたりで病院に行き、夫を車椅子に乗せてリハビリ室と屋上庭園に出るのを習慣にしています。
病室に入ると「来たよー」と声をかけて持参した水筒をもって一角にある洗面コーナーへ。そこで水筒の熱湯と水を混ぜて熱めのお湯を作り、顔をふきます。それからドライシャンプ―で髪の毛をワシワシとこするようにして、これまた熱めのお湯で頭皮を拭く。ついでに鼻の穴にタオルを入れて鼻くそなんかもふきとる。鼻毛が出ていたらカットする。
口の中は毎週、歯医者さんと歯科衛生士さんがそれぞれ1回ずつ徹底的にきれいにしてくれ、その他の日は看護師さんもきれいにしてくれるので、ほとんどの場合きれいなのだけど、口の周りによだれが乾いてこびりついていたりするとマウスピースをとって洗い、痰の吸入器に歯ブラシをつける「吸引機付き歯ブラシ」で歯や歯茎や歯茎の裏側などをガーっとこすって磨き、ジェルで口の中全体や唇も湿らせてマウスピースを戻します。
再度気管切開をしてから痰は落ち着いているのだけど、ときどき、せき込んで痰が喉の穴からニュルリと出るので、さっきの歯ブラシを装着した吸引機に今度は、痰吸引のチューブをつけて喉の穴に入れて吸引し、その先端部分のみはずしてニュルリ部分も吸いこむ。
その間に娘が車椅子に乗せてもいいか看護師さんに訪ねに行き、OKが出たら、車椅子と移乗をスムーズにするスライドボードを持って戻ってくる。わたしはロッカーから靴と靴下と電動マッサージ機をもってきてスタンバっておきます。
ベッド上のたくさんあるクッションや枕を片づけて、足を保護している褥瘡予防のダイソーで買ったカバーを外し、靴と靴下を履かせて、娘が車椅子をスタンバイ。このあたりは、娘主導。ベッドの高さを調節して移乗しやすい位置に車いすを持ってきてくれ、わたしは靴を脱いでベッドに乗って、娘が足、わたしが上半身を担当して夫をベッドに足を降ろして座らせます。この上半身をよいしょと持ち上げるとき、毎回、「ああ。やばいかも。無理やりかも」と思うけど、今のところ無事故。なんとか、もちこたえてます。
そこから娘が夫の脇に手を入れ、わたしがズボンとオムツをいっしょに握ってスライドボードに沿うようにして車椅子に乗せる。わたしはベッドから降りる。
座りが浅いときは、娘が上半身、私が足をもって車椅子をいったん寝かせてググっと体を持ち上げ、再度座らせて(その間に「よだれ!」とか言いながらタオルで拭いたりする)、車椅子に足をのせるパートを装着し、夫の両足の間にクッションをはさみ、熱めのお湯で手のひらを拭いて「行ってきまーす」と言って詰所に声をかけてリハビリ室へ行き、両足にそれぞれ1.5キロの重りをつけてしっかりと足が地面につくようにして、主に肩から腕、手のひらをマッサージして庭をぐるりと回って帰ってきます。
夫はこの間ずっと神妙と不本意と無関心と陶然とがまじりあったような顔をしています。
「ただいまー」と声をかけて病室に戻ると、さっきと逆のことをして夫をベッドに戻し、今の時間は右向きか左向きかを確認して寝かせ、あちこちにクッションや枕を入れ、足を熱めのお湯でふいて保護カバーに入れて全身に布団をかけます。最初にやり残したひげそりなんかもこのときに。
今年の3月以降、こうやって、わたしたち親子3人は毎土曜日を過ごしてきました。
ときには、「ちゃっちゃとやって買い物して帰ろう」なんて無慈悲なことを言いつつホイサッサとやっていますが、この、ある種珍妙な3人の時間が、いつまでも続くものではないぞとは思っています。この春、娘は間違いなく家を出るし、重篤な病である夫の命の長さもわからないからです。そしたら、懐かしく思い出すでしょう。
大事にする、とか、味わう、というほどしっとりとした感覚ではないのですが、過ぎ去ることを知りながら抗わず、どこか淡々と、しかし勤勉に、明るさと温もりをもって同じことを繰り返した一年でした。
この「どこか淡々と、しかし勤勉に」というのは、ふりかえれば、今年のわたしそのものです。そういえば、スーの散歩も、淡々と勤勉にこなしてきたな。仕事もそうだし、オバフォーもそうだといえなくもない。
結論。よくがんばったんじゃない?
来年がどんな一年になるのかわからないけれど、淡々と勤勉に、明るさと温もりをもってやっていけたら、もう、十分です。それは、わたしが心身ともにある程度は健やかでないとできないことだから。
オバフォーでのわたしの記事は、年内最後となりました。一年間、おつきあいくださり、ありがとうございます。オバフォーの更新はまだまだ続くので、遊びにきてくださいねー。それにしても11月のカイゴ・デトックスは楽しかった。また、来年も無理せず面白いことしようーー。
Jane
この記事をもって今年のホリデーシーズンも「淡々と勤勉に」乗り切れそうです。ありがとうございました。本当にオバフォーには助けられました。
yuhina
カリーナさん、今年一年どんなに励まされたか知れません。ありがとうございました。
「淡々と勤勉に明るさと温もりをもって同じことを繰り返す」
私の来年の抱負に決定しました。
来年は介護デトックスにも参加したいな〜。
少し早いですが良いお年を!
びな
賑やかなお店ですれ違う多くの人はとても楽しそうに見えるけど、でも実際のところ、いろんな事情を抱えながら生きてるのだろうなということがようやくわかってきた50代です。
カリーナさんの淡々の日々が少しでも長く続きますように!
アメちゃん
記事を読んでいたら、ちょうど去年の今頃、
父が入院してた時のことを思い出しました。
看護士さんが痰の吸引に来たら、私は病室から出て
廊下に貼られてる食事の献立表なんかを見て待ちました。
父はいっさい食べられなかったけど
クリスマスにはケーキが出るのかぁ…とかいろいろ思いながら。
今年は私もいろいろありましたが
カイゴデトックスで生カリーナさんに会えたのは、楽しい思い出になりました。
カリーナさんとは、美味しい珈琲とケーキでも食べながら
たわいのない事でおしゃべりしたいなぁって思いました。
では、ハッピークリスマス&良いお年を。
きゃらめる
もうえべっさんですけど敢えて新年早々おめでとうございます。
いま記事を読みました(笑)
わたくしも淡々と勤勉に、毎日四方八方に小爆発しつつも辛うじて放棄することなく、日々をこなしています。
カイゴデトックス、ほんとに楽しかった〜たった2ヶ月前とは思えないほど遠いところに過ぎ去った気がするけれど、あの場があったからこその今のわたくしが有る!bravo!!オバフォー!!!
あの興奮をもう一度、いや何度でも♪
カリーナ Post author
Janeさん
お返事が年を越してしまいすみません。
こちらこそ、JANEさんの言葉に
クスッとしたり、ハッとさせられたり、
楽しい一年間でした。
占いによると今年は、修行の一年らしいです(-_-)
適度にグータラして乗り越えます!
今年もよろしくお願いします。
yuhinaさん
わああ。そんな風に言っていただいて光栄です。
自分で書いた記事を改めて読み返して
わたしもこれを今年の抱負にしようと
改めて思いました(笑)
カイゴ・デトックス、ご都合がつけばぜひ!
お会いできるのを楽しみにしています。
びなさん
本当にそうですよねえ。
私もぴなさんと同じようなことを思いながら
年末年始の街を歩いていました。
ぴなさんの一年が充実し、楽しいときでありますように!
アメちゃんさん
ほんとに、ほんとに!
私もお会いできてよかったです。
こうやってコメントのお返事を書く時も
お顔を思い出して書けるのがうれしいです。
また、ゆっくりお茶したいですねえ。
きゃらめるさん
おめでとうございます!
ほんとに楽しかったですねえ。
お会いできてよかった。
きゃらめるさんのユーモアが
場を楽しくしてくれました。
また、会いましょうね。
健やかで楽しい一年になりますように!