第6回:大島弓子とくらもちふさこ
私のベストマンガはですね、まずは『ぼのぼの』(いがらしみきお)。シンプルなのに深いです。今自分にとって必要な言葉が必ずどこかに隠れている気がして、お風呂に浸かりながらじっくり読みます。
この中で、「後でこまるんだったら、後でこまればいいじゃねぇか」っていう名言があって、貝を全部食べてしまい、後で食べたくなったら困ると心配するぼのぼのにアライグマくんが言った言葉なんですけど。取り越し苦労や要らぬ心配が多い私には目からウロコの言葉でした。
「なんとかなるさ」じゃなくて、「こまればいいじゃねぇか」っていうのがぐっとくる。
それから、『娚の一生』(西 炯子)!
西炯子!好き!!
う、うれしい!主人公の恋人の海江田が大好きなんです。達観しているように見えて、実は内側には若いつぐみへとの関係への不安を抱えていたりするところが無性にかわいい。「こんなおじさん、たまらんわぁ」と身悶えてしまうほどなのですが、よくよく調べてみたら海江田51~52歳でした。同い年だよ…。
51…?!60代後半くらいのかんじですよね(笑)関西弁で、古い平屋に暮らしてる、複雑な過去を持つ哲学科教授のじじい。最高すぎる。筋張った足首の描写とかたまりません!
この海江田と、同じく西炯子の『姉の結婚』に出てくる真木、そして『エースをねらえ』の宗方コーチが私の理想です。こうして見ると、少し、いや大分?闇というか、見えない深さを抱えてる男性が好みなんだな、私は。
わかる(笑)西炯子は、『三番町萩原屋の美人』のご隠居も好き。
あともいっこは『童夢』(大友克洋)です。ピュアなエネルギーの美しさと恐ろしさをまざまざと見せつけられる傑作。エッちゃんとチョウさんの対決シーンは圧巻なの。鳥肌が立って、そしてなぜか泣けました。
チョウさんが子供たちの力(念のようなもの)で追い詰められていく場面にも圧倒されました。絵がきれいなんだよなぁ。
私は大友克洋のマンガはこわくて読んだことないんです。読んだら押しつぶされそうで。でも読まずに死んだら同時代に生きたものとしてもったいなさすぎる気がしてる。
大友克洋は、夫の本棚にあって読んだ。『気分はもう戦争』『ショートピース』『AKIRA』とか。
んで、私のベストマンガはやっぱり『おしゃべり階段』(くらもちふさこ)!
別冊マーガレットに連載時、自分もまさに高校生で、加南と線と同じ時間を生きているようなリアルタイムの格別さはやっぱり大きかったと思う。今読んでも、無駄なシーンやセリフがただの一個もない!と断言できるぐらい好き。
立川先生が加南を励ますシーンも印象的ですが、加南がバスケの試合をしている線を見て「みんな あの人があたしの好きな人よ」と心の中で言うシーンがたまらん!
くらもちふさこは、以前つまみさんが記事に書いたときのみんなの反応も熱かったよね。
とにかく絵が上手い!そしてどんどん絵柄を変える!技術やセンスにも注目してます。あと、男の子がワルですよね~。自分がモテることがわかってる。そんな男の子と相思相愛になれるなんて、究極の夢物語だなあと思います。一番好きなのは、『海の天辺』。学校の先生との恋物語で、胸キュンの連続です。『天然コケッコー』も好き。
わたしね、この企画をきっかけに、kindleで『A-Girl』を買って読み直しました。
これ、高校生の話なのね。今読んでみても、「これが高校生!?」って驚くくらいにおしゃれ。1984年、33年前にこんな高校生を描いていたなんて、くらもちふさこ恐るべし!です。
「確か昔読んだ漫画に、自信のない女の子が超完璧な男の子のつむじを見て(しゃがむ男の子を見下ろす状態で)、『つむじはみんな同じでかわいい。また自信がなくなった時には彼にしゃがんでもらおう』てな感じのことを思う場面があったよなぁ、素敵なシーンだったよなぁ、どの漫画だったかなぁ」と、何年も考えていたのだけど、今回その疑問が氷解しました。「A-Girl」でした。この企画のおかげで長年の謎が解決!「A-Girl」傑作!
私は『いつもポケットにショパン』が好きでした。これを読んで、自分にも隠れた才能があると思って、そのあとちょっとピアノの練習を頑張れた。しかしそのために道をあやまったかもしれない(笑)
おかあさんとのひりひりした関係がすごく印象に残っていて、でもお母さんも傷を抱えた一人の人間なんだっていう…くらもちふさこのマンガは、すごい大人ですよね。
あとね、『秋日子かく語りき』(大島弓子)。これ以上の短編少女漫画はないっ!
おお、断言したぞ。
するさ。同じ事故にあって、秋日子はかすりきずで生き残るんだけど、おばさんは死んじゃうの。で、秋日子の体を借りて一週間だけこの世にもどるっていう話なんだけど、この量で、こんなにいろいろな感情が味わえるんだーと畏怖に似た気持ちすら覚えた。しかし、入れ替わったおばさんの年を越えてしまったんだ、わたし。
ちなみに、私の友達もこのマンガが大好きで、こどもに「夏日子」ってつけたよ。もちろん、女の子。
私もこれ単行本持っていて大好き。お父さんがフランクリンを取り戻しにきて、夜のフォークダンスにみんなきて、茂多が信じてくれて、よかった。明日からまた秋日子の人生は続く。ナレーション役の秋日子の友だちがまたいいんだよね。
おばさんの年に近づいてから読むと、さらにいろんなことを考えますね。私が特に好きなのは『夏の終わりのト短調』『夏の夜の獏』…夏ばっか。
『夏の夜の獏』って精神年齢の高い男の子が、家族やクラスメートが子どもや赤ちゃんに見えるってやつですよね。
そうそう。その子の目線で描かれているので、自分が大男で、親や先生が子どもに描かれてるんです。
大島弓子作品て、自分が他の形(猫とか別人とか)になっちゃう話が多い気がします。その形を借りていることで、普段見えないものが見えるっていう。
おじいさんの世話にきてくれているあこがれの女の人と、お兄さんが結婚するっていう場面で、今まで子どもだったお兄さんが急に大人に描かれるの、すごく印象的だった。
西炯子に大島弓子、くらもちふさこ…
動悸がとまらない…!続く!!
※次回更新は10月4日(水)です。
アメちゃん
大人になってから、まともに読んだ漫画が
「あさきゆめみし」と「となりの山田くん」と「あたしンち」ぐらいの私には
今までハードルが高すぎてついていけませんでしたが
やっとここで、くらもちふさこが出てきてついていけます!
「おしゃべり階段」は、どのシーンも今まさに読んでるみたいにありありと浮かびますが
私が好きなのは、ラストシーンで
可南が駅の階段を駆け上る途中、後ろを振り返ったら
そこには、立川先生や中野くんたちの顔が浮かんでいて
1話から一気に読んだ私も、
「ああ、みんな…懐かしいなぁ」って、可南と同じ気持ちを味わえるところです。
でもくらもち作品は、「おしゃべり階段」以前の初期の作品が私は大好きです。
「白いアイドル」「赤いガラス窓」「わずか一小節のラララ」
「メガネちゃんのひとりごと」「スターライト」。
70年代の作品になるのかなぁ?素敵な作品ばかり。
くらもちさんって、たしか高校生ぐらいでデビューしてるんですよね。
あの完成されたストーリーを考えたのが10代20代ってすごいなぁと思います。
「いつもポケットにショパン」あたりから
ちょっと絵が変わってきたように思うんですけど
手足や服の描き方にクセが出てきて、その絵のタッチがなんだか私はなじめなくて
読まなくなりました…。
でも、別冊マーガレット展でくらもちさんのカラーの原画を観ましたが
やっぱり素敵でしたよ(池田理代子さんのベルバラの原画はもっとすごかったが)。
つまみ
アメちゃんさん、こんばんは。
以前、くらもちふさこについて自分の記事で書いたときにもアメちゃんさんにコメントをいただきました。
その節も含め、ありがとうございます。
実は私も、どちらかというと、「おしゃべり階段」以前のくらもち派です。
以降ももちろんスバラシイのですが、私には都会的というかスタイリッシュ過ぎて、ちょっと臆してしまうところがあったかも。
「白いアイドル」「赤いガラス窓」、いいですよねえ。
あと、私は「糸のきらめき」も印象的でした。
吉田美奈子さんを初めて見たとき、なぜかこのマンガのことを思い出しました。
そして、「おしゃべり階段」のラスト!
何度読んでもたまりません!
久しぶりに行った中学校、そして地下鉄の階段の途中で、あの頃のみんなや怯えていた頃の自分を見つけ、なつかしく振り返る。
最後に、先に地上に出た線が「加南!」と呼び、その声に地上を見上げると日差しがまぶしい…。
ああ、いいなあ。
そういえば、登場人物の多くが東京のJR(当時は国電)の駅名だったりしたこと、読んでいても知らない人もけっこういますね。
中野君、立川先生、国分寺さん、神田君、国立先生…。
日野光咲子ちゃん、荻窪君ってのもいましたね。
なんといっても、線の苗字が「中山手」ですもんねえ。