四十路独女じじょうくみこの「崖っぷちほどいい天気」(10)〜半世紀前のヤマトナデシコ七変化、てか母。
インドのコンカツ事情から目が離せません。
お読みになりましたか、当『別冊どうする40』内でインド在住・青蓮さまが書いておられる『マサラをちょいと〜人生にもスパイスを効かせて』の最新作。「インドは親の決めた相手とのお見合い結婚がほとんど」とインド人の知り合いから聞いてはおりましたが、お見合い相手を新聞で公募するとは知りませんでした。進んでるんだか古いんだかわかりません。
そういえば、お見合いじゃないけどアメリカの新聞にも恋人募集欄があったのを思い出しました。身長・体重・ルックスなどの詳細条件はもちろん「こんな性癖の人募集」と堂々と書いてあったりして「さすがはユナイテッドステイツオバメーリカ!」と感心いたしました。
インドにはインド、アメリカにはアメリカの事情がございます。そして今回は我が「じじょう家の事情」にまつわるお話でございます。
前回、キヨちゃん74歳プロデュース縁談話をいたしました。残念ながら成就はしませんでしたが、「今さらコンカツなんて、どうせ四十路なんて」と固定観念で自縄自縛状態だった私にとっては、肩の力が抜けるいいチャンスになったのでヨシという気分。そもそも酔っ払ってるうちに始まって終わった見合いなので、そうそう心も痛みません。キヨちゃんも「人の気持ちはどうにもならんし…ねえ?」と相変わらずラブ&ピース&ロケンロールで世界を包み込んでおりました。
ところがひとり母だけが「ダメなの? ねえホントにダメなの? 会って確かめてみたら?」としつこく食い下がってきました。何事に対しても冷めている母が、こんなに熱くなるのを初めて見ました。不審に思って「なんでそんなにトシちゃんにこだわるわけ?」と聞いてみたのです。
「トシちゃんのお母さんのハツエさんには、昔ずいぶんお世話になったことがあるのよ。ほらお母さん、家出した時にいろいろ面倒見てもらったじゃない」
ほらも何もありません。いきなりの飛躍に頭がついてきませんが、家出って何。もの心ついてからこっち、母が家出をしたという記憶は一切ありません。
「あら話してなかったっけ? お父さんと結婚してすぐの頃だけどね、お父さん愛人作っちゃってワタシ家出ちゃったの」
コラコラコラ
いきなりドエラいのブッこんできたな
母はお見合いで知り合った父から熱烈求婚を受けて20歳で結婚し、すぐに姉が生まれて、そのあと私が生まれた…と長らく聞かされておりました。ところが実際は、どうも父には結婚前につきあっていた女性がいたようなのです。その人は、車で2時間ほど行ったA市でスナックだか飲み屋だかで働いていた年上の女性。仕事でA市にひんぱんに行く機会のあった若き父は、何かの拍子でその人と知り合い、ずぶずぶの恋愛関係に陥っていたのでした。
あの父が
あの物静かで優しくて面倒見がよくて
口を開けばオヤジギャグしか言わなかったあの父が
オナラが兵器並みの殺傷力を持っていたあの父が
愛人ですとな?
父の家系はわりと厳格な家だったらしく、「水商売をしている年上の女」と大事な長男を結婚させるわけにはいかなかったのでしょう。父の母、つまり私のおばあちゃんは「直接交渉」の末に女性を父と別れさせ、一方で父と母との縁談を強引に進めたのでありました。
ところが結婚して少したつと、父は再びA市に通うようになり、夜になっても帰らない日もちらほら。不審に思った母は、ようやくそこで父と愛人がよりを戻したことを知ったのでした。
「なにしろ新婚でしょう。お母さん、ショックだわ腹立たしいわでプイッて家出ちゃったのよ。その時ハツエさんがすごく親身になってくれて、おうちにしばらく居候させてもらったり、アパートを探してもらって1人暮らししていたの。半年くらいだったかな。トシちゃんもその頃小さくてね、一緒に遊んだりしてね、なつかしいわあ〜キャッキャ」
それ以来、母とハツエさん一家とは親交が続いていたようで、一番つらかった時に助けてくれたハツエさんと母親思いのトシちゃんに、母が並々ならぬパッションを抱いていることがようやく理解できたのでした。
しかし、もはや私の中でトシちゃんは宇宙の彼方にブッ飛んでいます。問題は父です。どうして彼は年上の愛人に走ったのだろう。そして、どうして母のもとに戻ってきたんだろう。
「お父さんは小さい頃にお母さんと生き別れになったから、年上の女性に甘えたかったんじゃないの。でもその頃ワタシは20歳だったし、女として完成されてなかったから物足りなかったんじゃない」
え
女として完成されてなかったってどゆことどゆこと、父が帰ってきたってことはつまりお母さんは女として完成されたってこと、だから私が生まれたってことどういうことそういうことヤダこわくて聞けなさすぎるううう〜〜
お見合いデビュー戦の背景に、よもや半世紀前の痴情もつれ話を聞くことになるとは…。人に歴史あり、男女にワケあり。純情感情過剰に異常、あっちもこっちも恋せよ乙女。
くじけず、がんばれオレ。
By じじょうくみこ
Illustrated by カピバラ舎
*「崖っぷちほどいい天気」は毎週土曜日更新です。
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爽子
完全にノックアウトされました。
女としていまだに完成されてない爽子です。
おかあさまは、おいくつで、完成なさったのかしら。
すみません、怖くて続きが書けません。
今回は、人に歴史あり。に集約されますね。
参りました。
のびのびと恋をして、婚活続行してください。
応援しております。
ジャスミン
両親って「男と女」いう目では見ないですからねぇ
思春期ではないのに、なんだか生々しくショックを受けます
うちもありましたね~ 両親ではありませんが
10年ほど前に叔母が「あんなお父さんだけど(私の祖父)浮気してたからねぇ」って
びっくりしました…そんな過去があったとは
私もそれ以上 聞けませんでした
横浜レイコ
女としての完成とは・・・・もしや・・・ごにょごにょ。
となると、熟女としての完成とか老いの完成とか考えちゃいますね。
親のあれこれを聞くと複雑な気持ちにさせられます。
初めて「性交」というものを知った少6の頃、ショックで倒れそうになりました。
あんな仲悪い両親がそんな事して姉と私と弟が・・ってね。
JK様、毎日暑いのでご自愛専一に。
mogu
あの~、物陰(柱?)から、そ~っと覗いているのは、じじょうくみこ様でしょうか。
このイラスト大好きで、(もちろん崖の上で笑顔で髪をなびかせている女性も)
いいタイミングで文章の間に挿入されているなぁと感心します。
次のオチは何?何?って。興味がそそられます。
私も、そ~っと物陰から覗くように「崖っぷちほどいい天気」を楽しませていただきます^^
父のオナラ、確かに、父のオナラは最強(凶?)でした。これも父親の威厳なのでしょうか。
じじょうくみ子 Post author
>>爽子さま
お暑いところ、コメントありがとうございます〜(^^)/
女として完成どころか入口にも立ててない気がするじじょくみでございます(汗)
なんなんですかね、女の完成形って。とか考え始めるときりがないので、このままマイペースに(いやそれがいけないのか?)がんばってまいりますm(_ _)m
>>ジャスミンさま
いつもコメントありがとうございます〜(*^_^*)
そうなんですよね、自分の親とかおじいちゃんおばあちゃんの色っぽい話って、全く頭にないので結構衝撃的ですよね。くわしく聞きたいような聞きたくないような。
いまお子さまをお持ちのお母様方は、お子さんとどんな話をするのですかね。
>>横浜レイコさま
毎度コメントいただきありがとうございます〜m(_ _)m
せせせせせせせいこう!レイコちゃまったら!
あれはショックを受けますよね。ああそんな時もあった。みんな通る道。あまずっぱい。
あまずっぱいもの食べて夏を乗り切りましょう(なんのこっちゃ)
>>moguさま
コメントいつもありがとうございます〜(^_^)
おお、イラストについて触れてくださったのはmoguさまが初めてです!
ありがとうございます〜♪嬉しいです。
カピバラ舎さんというイラストレーターさんが描いてくださったイメージイラストです。本人とは全く違う想像上の生き物です。
ちなみに崖イラストは2パターン、のぞきみイラストは3パターンあります。違い、気づかれました?
父のオナラがくさいのはデフォルトですね。腹の中に何か飼ってるのかもしれません。
mogu
崖2、のぞきみ3パターン、改めて見直しました。
毎回読んでいるのに違いを見過ごしてた!!
間違い探しみたいで楽しかったです^^
カピバラ舎さん(個人の方?)によろしくお伝えください。
波が見える崖っぷちは、怖い!!、絶望の淵に立たされ、奇跡の一発大逆転を狙うしかない。
波が見えない崖っぷちは、希望がまだまだある感じ!!なぜか、余裕すら感じる。
健気に寄り添う、一輪の花もいいのね。。 水分不足もろもろ、私も夏枯れしないようがんばります。
カピバラ舎
「崖っぷちほどいい天気」連載10回目おめでとうございます〜!!
毎回こっそり楽しみに読ませていただいてますよ♪
(描いた本人も、タイトルイラストを内容によって変えているとは気付きませんでしたっ!)
こちらにお礼を書かせていただきますが、
moguさんイラストに着目してくださってありがとうございます!
覗く女!?を描かせていただいたカピバラ舎(個人)です。
気に入っていただけたらうれしいです♪
“じじょうくみこ”という人はきっとこういう外見だわよ、と
名前から想像して出来上がりました(^^)