勢いよく振り返る。
歳をとると、いろいろと億劫である。
好奇心はそれなりにあるはずなんだけれど、「面白そうだ!」と叫んで走り出す、ということは滅多になくなってしまった。
カーラジオやテレビから流れてきた新しい音楽を聴いて「いい曲だなあ」と思うことも少なくなり、ましてや、そのままチケットを手に入れてコンサートに駆けつける、なんてことは皆無だ。
そんな話を友人にしたところ、「それは、自分の体を守るためだな」と言う。「だいたい、おまえ、好奇心の赴くままにうろうろしてたら、危険が危ないじゃないか」と。出た!「危険が危ない」!。
その友人がいうことには、歳をとると、体が「素早く動くな」と指令を出してくるらしい。「そらそうやがな。もう若くないんや。転んで怪我でもしたら命取りや」と。そして、「そやから、後ろから声かけられたときも、年寄りは首だけクイッと後ろに向けて様子を見たりせえへん。世の中の年寄りを見ててみ。みんな、声かけられて後ろを振り返るときには、ゆっくり、上半身ごと振り返りよる。首をくるっと回して、頭だけ後ろを見ようとするなんてことはない。そういうのである。
実際、僕も気をつけて見るようにしていたのだが、本当でした。十代の若者は後ろから呼ばれたら、ヒョイっと首を回して様子を見る。で、二十代も同じように振り返りますが、やや猜疑心が生まれて、振り返る前に「なんや、俺に絡んでるわけやないやろな」と動作がややゆっくりになる。で、さらに三十代、四十代で動作は緩慢になり、五十代、六十代になると、首だけヒョイっと回して、筋でも違えたらどうしよう、という不安がもたげてくるのだという。
そういえば、そんな気がしてきた。というか、知らず知らず、自分も勢いよく振り返るなんてことがなくなってきていることに気がついた。そして、そんなときに見た、物まね芸人の「物まねのコツ」という話の中で、「年配の方の物まねをする時のコツがあります。たとえば、歩いていて方向転換をするときに、首だけじゃなく上半身全体で左右を見たりすると似てくるんです」と話しているのである。
と、ここまで来て、何の話だ、ということなんですが、「若く見られたいなら」ってことですよ。若くて見られたいなら、決して体全体で右を見て、左を見て、ゆっくり方向転換なんてことはしなきゃいい。声をかけられたら、ヒョイっと首を回して、はつらつと応える。そうしていれば、いつまでも若々しく見られるってことになるわけです。
いや、ホントかどうか知らんけど(笑)。
でも、友人の話もあながち間違いではないという気がしてくる。それじゃあ、僕もここで若々しくあるために、はつらつと勢いよく振り返ってやろうってことになるのかというと、それはない。僕は若く見られるよりも、身の安全を重視してゆっくり上半身全体で振り返る方を選ぼうかな、と思っております。はい。
植松さんとデザイナーのヤブウチさんがラインスタンプを作りました。
ネコのマロンとは?→★
「ネコのマロン」販売サイト
https://store.line.me/stickershop/product/1150262/ja
クリエイターズスタンプのところで、検索した方がはやいかも。
そして、こちらが「ネコのマロン、参院選に立つ。」のサイト
http://www.isana-ad.com/maron/pc/
植松眞人(うえまつまさと) 1962年生まれ。A型さそり座。 兵庫県生まれ。映画の専門学校を出て、なぜかコピーライターに。 現在、神楽坂にあるオフィス★イサナのクリエイティブディレクター、東京・大阪のビジュアルアーツ専門学校で非常勤講師。ヨメと娘と息子と猫のマロンと東京の千駄木で暮らしてます。
★これまでの植松さんの記事は、こちらからどうぞ。