映画をスマホで見る時代なんて、こないと思う。
映画コンテンツのニーズが高まっている。主にアメリカを中心にいわゆる配信サービスが大きく売上を伸ばしているそうだ。Amazonプライム、Netflixなど、僕も個人的に加入している。月に数百円というお金を払えば、メジャー系の映画作品を無料で見ることができるし、過去に放送されたテレビ番組やオリジナルの番組も見ることができる。
2年ほど前だったか、アカデミー賞にノミネートされた『ローマ』という映画は作品賞をとるという下馬評だったが、結局、作品賞を外され、監督賞、撮影賞、外国語映画賞を受賞した。正直、ここまで賞を渡すくらいなら作品賞にすればいいのに、と思ったのだが、さすがに大御所審査員であるスピルバーグの「映画館で公開されなければ映画ではない」という見解を無視するわけにはいかなかったのだろう。その後、Netflixは配信と同時に、または先行して劇場公開するようになった。
クオリティの高い作品を輩出していることと、今年初めからの新型コロナによる自粛生活で、配信サービスが急速に加入者数を増やしているのである。昔見た、懐かしい映画を見たり、見逃していたテレビ番組を一気に見たり、配信サービスは僕達のいわゆるテレビ離れをより一層加速させている気がする。
しかし、そのことで映画を見る環境は大きく変わり始めている。誰もがテレビで配信サービスを見ているわけではない。どちらかというと、パソコンやスマホで見ている人が多い。見たいときに見たい作品を自分の部屋や外出先、通勤途中でも見ることができる。こうなると、高いお金を払って映画館にいかなくてもいいと思う人が増えるはずだ。もちろん、劇場の大きなスクリーンで見るのとスマホで見るのは違う、ということはわかっていてもだ。
映画がオワコンと言われて久しい。たくさんの映画が作られ公開はされているが、そのクオリティはおしなべて低い。そこへクオリティの高い作品を続々と作り出す配信サービスが出てくれば、そこに人が集まるのは当たり前。これからもこの流れは暫く続くだろう。そうなると、危機的な状況だった映画は息の根を止められるかもしれない。
スマホでもなんでも、見る人がいるなら映画は生き延びるられる、という人もいるが、パソコンやスマホで映画を見るのは辛い。実際、Netflixで作られた「ローマ」や「アイリッシュマン」といった鳴り物入りの大作も、実は見始めて最後まで見ている人は半分にもみたない、というデータがある。生活の合間合間に顔を覗かせる細切れの時間にスマホで見るのには映画は長すぎる。そして、画面から伝えられる風景や表情で、人の感情の機微を伝えようとする映画にとってスマホの画面は小さすぎる。
やがて、映画はさらに衰退していくだろう。映画をスマホで見る時代なんて、きっと存在しない。映画は映画として映画館で観られる状況を続ける努力をするしかないのだ。または、自宅にいて配信サービスを「映画として見る」という新たな環境提案ができるような工夫を業界がしていくしかないのだ。コンテンツとして映画が求められていると調子に乗っていると、結局は配信サービス普及のためのキャンペーングッズのような扱いをされて捨てられてしまう。そんな気がして仕方がないのだ。
植松さんとデザイナーのヤブウチさんがラインスタンプを作りました。
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植松眞人(うえまつまさと) 1962年生まれ。A型さそり座。 兵庫県生まれ。映画の専門学校を出て、なぜかコピーライターに。 現在は、東京・大阪のビジュアルアーツ専門学校で非常勤講師も務める。ヨメと娘と息子と猫のマロンと東京の千駄木で暮らしてます。サイト:オフィス★イサナ
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