寂しさのオリンピック。
昨日、オリンピックの開会式があったのだけれど、もうなんというか、観客のいない巨大な競技場だけでもえらくシュールな印象だった。そして、あんなに大騒ぎしていた開会式のセレモニーがなんの特徴もなく、そこに増長された拍手の音だけが響くというしらけ具合。森山未來の踊りは妙に浮いてて面白かったけれど。
思えば、競技場のコンペ案が差し替えられたあたりから、色々と不穏な空気が漂っていて、シンボルマーク盗用疑惑でケチが付き、新型コロナによる延期でいよいよ混迷を深め、森さんが失言で辞任したあたりから、怒濤のような過去の問題発覚と辞任のオンパレード…。でも、これは今回のオリンピックだから、ということじゃない気がする。
新型コロナは別にして、世界のSNSへの依存が極まった結果なのだという気がする。シンボルマークの盗用疑惑だって、世界中の人々が陪審員みたいなことになっていたし、最近の辞任騒ぎにいたっては秘密警察みたいになっている。それもこれも、SNSへの依存がひとりひとりの過度な正義感を熟成した結果に思えてならない。
僕が手伝っている映画の学校では、グループ制作がことごとくうまく行かない。個人で粘りながら作る作品はかろうじて作れるのだが、グループになると自分の役割しか果たせないセクショナリズムに陥ってしまう。互いに関心もないし、互いに思いやりもない。
僕のまわりの学生たちだけがおかしいなんてことは絶対にありえない。きっと彼らを教えていた高校の先生たちだっておかしいのだろう。ということは地域社会にもおかしな奴は多いのだろうし、世界中のたがが外れているのかもしれない。
そんななかで力を発揮するのが、寂しい人間の必須アイテムSNSである。個人的に、今回のオリンピックのゴタゴタはSNSが強烈に拡張した寂しさパワーの成せる技であり、ひとりの寂しさが怨念のようなものに代わり、「決してうまくいってほしくない」という負のオーラを世界中に発してるような気がしてならないのだ。
だとしたら、このシュールなオリンピックこそがニュースタンダードなのかもしれないし、オリンピック衰退のターニングポイントなのかもしれない。
植松さんとデザイナーのヤブウチさんがラインスタンプを作りました。
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植松眞人(うえまつまさと) 1962年生まれ。A型さそり座。 兵庫県生まれ。映画の専門学校を出て、なぜかコピーライターに。 現在は、東京・大阪のビジュアルアーツ専門学校で非常勤講師も務める。ヨメと娘と息子と猫のマロンと東京の千駄木で暮らしてます。
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