『土を喰らう十二ヵ月』が喰らっていたもの。
『ナビィの恋』が印象に残っている中江裕司監督の新作『土を喰らう十二ヵ月』はとても面白い映画だった水上勉が書いたエッセイが原作で、主演は沢田研二、料理の監修は土井善晴が担当している。
信州の山深い村で暮らす老作家は、妻を十数年前に亡くして一人暮らし。愛犬のサンショと散歩に出かけ、自分で野菜を作り、育て、料理をして食べている。時折訪ねてくる女性編集者は妙齢で、二人は年の差を超えて、なんとなく良いムードではある。
そんな彼らの一年間を見つめる映画なのだけれど、出てくる料理がどれもこれもうまそうだ。映画の中で「土の味」と表現される木訥な料理が見ていてうらやましい。そして、主人公を取り巻く人々もそれこそ土の味がするほど木訥でわかりやすい。
ああ、こんな暮らしがあるんだなあ、と想い、なんとなく泣きそうにならいにうらやましい。うらやましいけれど、実際にそんな暮らしを求めてはみても、きっとなにかある。なにもない田舎暮らしといいつつ、主人公には味噌造りのうまい義理の母がいたり、たまに訪ねてくれる編集者がいたり、いざというとき大工仕事を頼める頭領がいる。つまり、恵まれているのだ。そんな恵まれた環境も含めて、きっと僕は田舎暮らしに憧れているのだろう。
けれど、僕には自信がない。たぶん、僕が田舎暮らしをしても途中で逃げ帰ってきそうな気がしてしまう。映画を見ていて、途中からなんだかため息と涙が同時に出そうになってしまったのはそのためだろう。
映画に出てきた沢田研二のように、優しく生きることも、奈良岡朋子のように覚悟していきることもできそうにない。となると、町の片隅でいろいろ気を遣いながら生きるしかないのか、とも思うのだが、それもまた……。
ということで、僕は今日から丁寧に生きる練習をしようと思うのだ。まず何をする? と考えて思いついたのはテレビを見ないこと。子どもの頃からテレビっ子だったので、僕は四六時中テレビを見ていて、ヨメから叱られている。見ていなくてもつけているのだ。これをまずはやめてみよう。土を喰うまでにはまだまだ時間がかかりそうだけど。
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植松眞人事務所
植松眞人(うえまつまさと): 1962年生まれ。A型さそり座。 兵庫県生まれ。映画の専門学校を出て、なぜかコピーライターに。現在はコピーライターと大阪ビジュアルアーツ専門学校の講師をしています。東京と大阪を行ったり来たりする生活を楽しんでいます。
串団子
原作の土を喰らう日々は井上靖ではなく水上勉です。
カリーナ
ご指摘ありがとうございます。修正しました。
uematsu Post author
串団子さん
すみません。
間違ってました。
申し訳ありません。
カリーナさん
修正ありがとうございます。