翻弄する人、される人 : おからサラダ
父が腰を痛めた。
朝6時前、携帯の着信音で目が覚めた。その段階でもう、嫌な予感しかしない。携帯に電話をかけてくるなんて、母のグループホームか伯母の老健ぐらいしかない。しかもこんな早朝に。何か緊急のことが起きたに違いない。
発信者を見ると、父。同じ家の中にいるのに?ボタンの押し間違いでもしたのかと思いつつもとりあえず出てみると…「具合が悪いから部屋まで来てくれ」
まじか…。
父の部屋まで行ってみると、上半身を傾げて、父が布団の上に座っている。
「腰が痛くてどうしようもない。動けない」そうだ。
わずかに上半身を動かすだけで、「痛い!いたたたたたたたたた!!」と尋常ではない声を上げる。
まじか…。
実はこの日、私はある人と会う約束をしていた。
久しぶりに会えるその人に電車に乗って会いに行き、予約をしたお店でランチを食べ、あれこれとお喋りに花を咲かせ、とても面白そうな映画を一緒に見る予定だった。何日も前からそれはそれは楽しみにしていたわけで。
そう、私が「まじか」を連発 (心の中でね) したのは、父の腰を心配したからではなく、楽しみにしていた予定をキャンセルしなければならないからだった。
自分はつくづく底意地の悪い人間だと思う。
普通なら、まずは年老いた親の突発的な不調に驚き、心配して「まじか…」が出るはずだろうに。
でも、母を自宅で介護していた頃から老いた人が最優先で、突発的な事態が起きるたびに自分の予定を諦めなければならない日々を送ってきたせいで、私の性根はほんの少しだけ(と思いたい)ねじ曲がってしまっているのだ。
私の日々を翻弄する老いた人の突発的事態は、大抵、結果的には大ごとではなく、「痛い、痛い」「苦しい、苦しい」と大騒ぎした小一時間程後には、もうけろりとしていて、楽しみにしていたことを諦めた私の気持ちだけが置き去りになる。そんなことが繰り返されたら、ちょっとくらいねじ曲がったところで許されるのではないだろうか。
いやいや、ねじ曲がることも許されるはずなんて、やっぱり底意地が悪いのだ、私という人間は。
結局、まるで断末魔の叫びのような声を上げて痛がる父を前に、私は約束をしていた相手にお断りの連絡を入れた。心の中では、まるで動物園に行く約束を反故にされてふて腐れる子供のような苛立ちと、そんな自分に対する嫌悪が大喧嘩をしていたけれど。
父は、その日の昼過ぎには普通に立ち上がって、台所まで普通に歩き、「お腹が空いた」と普通に自分でパンを焼いて食べた。ほらね、結局はそんなものなんだよ。だけど、万が一深刻なことになったらと思うと、やっぱりないがしろにすることはできないじゃないか。
さて、最近私を翻弄するのは老いた人ばかりではない。
血糖値、体重、血圧、そんな私の体の数字にも、私は一喜一憂させられている。
ひとつ下がっては小躍りし、ひとつ上がってはうなだれる毎日なのね。食べるものにもちょっと注意深くなっている昨今。
というわけで、今日の一品は『おからのサラダ』です。ポテトサラダが食べたい。でも、じゃがいもは糖質が高くて食べられない。そんな時の代用食として作ってみたら意外と美味しくて、我が家の定番に加わりました。
最近は、ダイエットや健康のためにおからパウダーが流行っているそうですね。パウダーでもこのサラダは作れますが、私は、近所の豆腐屋さんで生おからをもらって(何か買った人には無料でおからをくれます)作ってます。
『おからのサラダ』
- きゅうりを薄切りにして、塩を振って置いておく。
- 固ゆで玉子を作って、刻んでおく。大きさによって食感が変わるので、お好みの大きさでどうぞ。私は、細か過ぎず、白身の食感がはっきりわかるくらいの大きさが好きです。
- ハムを5ミリ幅くらいの短冊切りにする。
- ボウルに、生おからと1、2、3を入れ、マヨネーズ、塩、胡椒を加えて混ぜ合わせたら出来上がり。
※おからがパサつく場合は、ヨーグルトを少々加えてみるのも良し。
※生おからじゃなくても、おからパウダーを水または牛乳でのばしたもの
でもOKです。
こちらを困らせるためにわざと翻弄しているのでなければ、翻弄する人とされる人ではどちらがしんどいのだろうと考える。考えたところで結局答えはでないのだけど、やっぱり翻弄されたくはないし、極力翻弄することなく年を取っていきたいものだと切に思うのだ。
ミカスでした。
なのなのなさんによるイラストACからのイラストをお借りしました。
Jane
もし私が同じようなシチュエーションにあったら、私も「まじか」って思うでしょう、ミカスさんと同じ意味で。またお友達とお約束し直してください!
ミカス Post author
Janeさん
思いますか⁈ やっぱり⁈
ほっとしました。
そうですね、新しい約束をしてゆっくり会いたいと思います。
アメちゃん
うん。私も「ウソやん…」って思うな。
ミカスさんと同じ意味で。
私だって、会いたい友人も同級生も居ない田舎へ帰省するのは
ただただ親のためだけなので
こちらへ戻ってきたときの開放感たるや!…です。
親に悪いなぁっておもいますけど。
おからのサラダ、作るの簡単そうですね!
今度試してみよう。
匿名
私は、ウチの犬が吐いてぐったりしてる時に父の携帯から電話がありました。
母に何かあったとすぐに思ったけど、電話に出ませんでした。
今、この子(犬)を置いて行かない。と思った。犬がよく吐く事は知ってるけど、この子は滅多に吐かないし、家には誰も居ないし。
結果、母も犬も大した事はなく、母は脳梗塞のような倒れ方をした膀胱炎だったけど、ほんとに脳梗塞だったらどうしてたかなー
でもやっぱり置いては行けなかったと思います。
これが人からは優しい人と思われてる私の実態です(笑)
ミカス Post author
アメちゃんさん
やっぱり思いますか。
老いた人のペースに合わせて付き合うと、やはりそこには複雑な気持ちが生まれますよね。
おからサラダ、ぜひお試しください。
マヨネーズはちょっと多めがいいかもしれません。
ミカス Post author
匿名さん
匿名さんの場合、どちらも命にかかわる問題ですもの、判断は間違っていないと思います。
優しくないわけじゃない。
それにしても、どちらも大ごとにならず、本当に良かったですね。
鈴木
とてもかわいそうになって、メールしてます。この親さえ居なかったら仕事もバリバリ、好きな事も沢山できるのに、と思うのは自然な事。親不孝だと自責の念にかられたりじぶんを否定するのが不自然です。親の無理難題、ワガママに途方に暮れて「あー早く解放されたい」と思うのが当たり前。その気持ちを抑えたり殺したらダメ。ただ実際に手をだして介護なり世話をした経験が無い人には、決して言わないように。「幾つになっても親が居るといいわね」と言う人とは距離を置きましょう。義父と父を見送り、94歳の母を、妹と老々介護中の70歳の経験からチョット一言、でした。
ミカス Post author
鈴木さん
ありがとうございます。
人生&介護の先輩からの言葉、心強くてちょっと泣きそうです。
介護をしていると、「そう思うのが自然だよ。そう感じていいんだよ」って認めてもらうことが大きな支えになります。
無理せずにいきます。