誰も信じてくれない:かぶとツナのオリーブオイル焼き
先日、電車に乗って久しぶりに県境を越えました。
骨折で入院していた伯母が退院をして老健に戻ることになったので、それに付き添ったのです。
いつもなら混み合う横浜駅も新型コロナウイルスの影響で閑散…と言いたいところですが、ちょうど神奈川県の緊急事態宣言が解除された直後だったので、それなりの人出が見られました。
とはいえいつもよりは楽に座れる電車の中で、ふと、昔々に電車の中で出くわした不思議な光景を思い出しました。
それはまだ私が20代前半だった頃です。
東京に住む友人に会いに行く途上、山手線の中でした。
平日の日中だったので、車両内の座席もちらほらと空きがありましたが、3駅程で降りる予定だった私は、ドア脇のポールに寄り掛かるようにして立っていました。そう、下の写真のように。
しばらく車窓に流れる風景に目を奪われていた私ですが、ふと視線を車内に戻すと、同じドアの反対側のポールに、私と同じように寄り掛かって外を眺めている男性がいることに気づきました。
年の頃なら50代後半くらいでしょうか。極々普通の男性ですが、車内にスーツ姿の男性が多い中、ポロシャツとズボンといういで立ちなので、サラリーマンではないのかもしれません。それにしても、黒々とした髪。年格好の割に白髪が全くないのね。襟足と比べると頭の上の方の髪は妙にぺたんこ…って…ん???
頭皮を黒く塗ってるやないかーい!!!!
そう、その人は、波平さんスタイルに禿げた頭の毛がない部分を黒く塗りつぶしていたのです。
気付いてしまったらもう、そればかりが気になります。
見たい、でもまじまじ見てはいけない、でも、これを見ないで何を見る?!
千載一遇のめぐり合わせではないか!!
見てないふりで見ました。(どんな状態?)
油性マジックなのか、それとも毛のない頭皮のための塗料(?)があるのか、男性の頭皮はべったりと黒く塗りつぶされていましたが、よく見ると(あくまでも見てないふりでね)ぷつぷつと鳥肌のように毛穴の存在がわかります。
ここまでする人がいるのか…と妙な感慨を覚えつつ一旦落ち着いてみると、新たな気持ちがが湧いてきました。
「これを誰かと分かち合いたい」
人の見た目を誰かと一緒に笑いたいというわけではありません。
ただ、人は自分の脳の処理能力を超えてしまうほど不思議な出来事に出くわしてしまうと、自分一人では解決できずに誰かとそれをシェアしたくなってしまうものなのだと、その時初めて知りました。
友人との待ち合わせに向かう途上だったので、私に連れはありません。
ですからもちろん、この出来事を直接誰かと分かち合うことはできません。ならばもう他人でもいい!と思った私は周囲を見回しました。私と同じことを考えている人と目が合ったなら、無言で目配せをして、「ね?」とこの気持ちを分かち合うことができるのではないかと。
しかし、その願いも虚しく、大都会の電車に乗り合わせた人たちはみな下を向いたまま、目を合わせるどころか、その男性にすら気づいていないようでした。
私が降りる前に、男性は電車を降りていきました。
待ち合わせ場所に着いた私は、久しぶりに会った友人への挨拶もすっ飛ばして、山手線の中で出会った男性のことを話しまくりました。しかし、実際に男性を見ていない友人と、私の温度差はまるで北半球と南半球レベル。口角泡を飛ばして説明をする私の話を、「ふーん」と冷静に聞いていた友人は、話の終わりに一言「そんな人いるわけないよ」
その後も何人かに「山手線事件」について話しましたが、やはり、実際に見ていない人にとっては容易に信じられる話ではないらしく、「へぇ」と低温で流されてしまうことがほとんどでした。
そこまで信じてもらえないと、まるであの光景が私が作り出した妄想や夢だったような気すらしてしまうのです。
さて、私はなぜかかぶを見るとつい買いたくなってしまうのですが、そのくせさほど好物ではないので、さてどう料理しようかと迷うことがしょっちゅうあります。先日も買ってしまった挙句に散々悩み、結局シンプルに焼いて食べてみました。これが美味しい。妹に「かぶを焼いて食べたら絶品!」と言ってみたところ、「かぶを焼くだけ?それだけで本当に美味しいの?」と、これまた信じてくれませんでした。かぶの鮮度にもよりますが、甘くて美味しいよ。
かぶとツナのオリーブオイル焼き
- かぶは皮つきで使いますので、葉を切り落としてからしっかりと洗って水をふき取ってください。
- 1のかぶをくし切りにします。大きさによって4等分か6等分に。葉っぱは3センチくらいにざくざくと切っておきましょう。
- ニンニクひとかけをスライスします。
- ツナはできればフレーク状ではなくて塊状のものを使ってください。
手で大きめにちぎっておきます。 - フライパンにオリーブオイルと3のニンニクを入れて火にかけます。
中火でニンニクを揚げ焼くようにして、焦げる直前、うっすらと茶色になったらフライパンから取り出します。
そのまま取り出さずにおくと、焦げてしまって苦みや焦げ臭さのもとになってしまいますので注意です。 - 5のフライパンにかぶを入れ、うっすらと焼き色が付くようにそれぞれの面を焼きます。炒めるのではなくて、焼く。
- かぶに焼き色がついたら、葉っぱとツナを加え、蓋をして蒸し焼きにします。
- 葉っぱに火が通ったら(くたっとしていないけれど青臭くないという、良い加減に火を通します)、塩とこしょうで味付けをします。
- 器に盛りつけて、上に5のニンニクを散らしたら出来上がりです。
※塊状のツナはこんな感じ
信じてもらえないこと、「はいはい」と軽く流されてしまうことのもどかしさをその時に嫌と言うほど味わいましたから、私は、今あなたがどんな話をしても、とりあえず真剣に聞きますよ。たとえあなたが、エイリアンに拉致されて宇宙船の中で脳にマイクロチップを埋め込まれたと言っても、聞きます。ぬ「まじか?!」と言って信じます。
だって世の中は、私たちの想像なんて簡単にぽーん!と超えてしまう出来事があふれているのですから。
ミカスでした。
アメちゃん
ミカスさん。私は信じます。
この話、まえにも話した気がするんですけど
作家の北原武夫先生も、禿げた部分に墨をぬっていたらしくて
それがまた、汗でツーッと流れるのですって。
それを川上宗薫先生が(←川上宗薫先生というのが笑える)
「先生、墨がたれてますよ」って教えてあげるんだそうです。
偉大な作家先生も塗ってたのです。
「ない部分はとりあえず塗る」という行為は時代が変わっても…ですね。
そーいえば私は高校時代、朝の通学の列車で
手のひらにインコを乗っけたお兄さんを見たことがあるなぁ。
ほかにもいろいろびっくりするような、他言できないコトに遭遇します。
先日、にわかに信じがたいある爆弾ネタを義姉に話したら、信じるどころか
それをもポーン!と超える爆弾ネタで返して来たので、ちょっと笑いました。
ミカス Post author
アメちゃんさん
アメちゃんさんが信じてくださったこと、そして他にも塗っている人がいたことがわかったのもうれしい限りですが、それと同じくらい川上宗薫先生という懐かしい名前に感動しています。
昔、コバルト文庫という少女向け小説のシリーズがありましたが、確か、川上宗薫先生が書いた本もあったと記憶しています。
と、話が脱線してしまいましたが…
やはり、長い人生では、にわかには信じ難い出来事に出くわしてしまうことってありますよね。
アメちゃんさんとお姉さんが遭遇したアンビリーバブルな出来事も気になります。
Jane
遅ればせながら今日作ってみました。かぶは違う種類だし(固くて茎のあたり紫の)、茎はなかったのですが、おいしかったです。オリーブオイルのせいか野菜でも結構腹持ちする感じです。にんにくを取り出すのがちょっとしたポイントですね。蒸し焼きも焦げるかな?と思いましたが焦げませんでした。今まであまり手を出さなかった野菜で新しい料理ができてよかったー。
ミカス Post author
Janeさん
作ってくださったのですね。
ありがとうございます。
確かに、日本と同じ種類のかぶって北米にはないですよね。かぶ、長ネギ、柔らかいキャベツ、カナダにいる時は日本の野菜が食べたかったです。
Janeさんに、アメリカの食事情をレポートしていただきたいなぁ。日本食を作る時、手に入りにくい材料の代わりどんなものを使うか、とか。