サヴァランは見た。この街のひとびと #3
ここへ越してから5か月が過ぎ、
あれほど暑かった夏もいつの間にやら通り過ぎて。
さて、祭りは終わったな。
と思う。
長年の禁デパート生活から一転、
デパート至近に越してきた当初は
見るもの見るものきらきらと新鮮で
「おお~~~、帰ってきてよかった~~~!!!」と
我ながら愚かすぎる愉悦に浸った。
さてっと。
祭り はこのくらいにして。
地に足の着いた暮らしをしなければ。
なにかこう 少しでも
日々のたつきのたすけになるお仕事はないかしらん。。。
16年このかた「仕事」から離れ
おまけにパソコンがからっきしダメなわたしを
使ってやってもいいよ という奇特な場所はないかしらん。。。
地に足の着いた生活。
地に足の着いた生活。
とある予備校の小論文の採点、講評というお仕事が
目についた。
応募の書類を送ったのはたしか6月。
8月のお盆を前に
「小論文採点者 採用試験 問題」という
分厚い封書が郵送されてきた。
これはてごわい。
予想以上にてごわいかも知れない。
仕事の詳細と手当の説明に添えて
次のような一文があった。
「この条件なら応募を辞退したいとおっしゃる方がいらっしゃいましたら
その旨お伝えいただければ結構です。
その場合、お送りした答案の採点はしていただかなくて構いません」。
「手当」は想像通り少ない。
「世の中」は、思っていた通り厳しい。。
しかし。
やりますよ。やらせていただきますよ。
わたしみたいなおばさんを使って下さるなら。
細かすぎる印刷文字に目がちかちかしようが、
自分の興味のあることにしか使ってこなかったアタマが
にわかの思考を余儀なくされて飽和しようがフリーズしようが、
たとえこれが、来年度からのお仕事といういささか間遠なものであろうが。
とはいえ。
問題到着がお盆前
締切がお盆明け
というスケジュールはわたしには少々厳しかった。
シュジンは山口から帰省をし、
中学生の息子はこの時期だけはべったりと家にいた。
外では蝉までがうるさいこの時期に、
口を開けば「お腹すいた」という男子に都度餌を与えながら
「生命倫理」だの「民主政治」だの「民藝」だのとは。
夏の暑さとは別の汗が流れた。
結局、男子も蝉も
うるさい外野がすっかり寝静まるのを待って、
おばさんは深夜
ローガンキョーをかけることになった。
お盆が終わり、シュジンは山口へ。息子は学校へ。
わたしは、
仕上げた「夏の課題」を予備校へ持参した。
どうか、お願いです。
来年からわたしを使ってください。
パン!パン!
予備校からの帰り道。
地下鉄の4駅分を歩くことにした。
―――あのお仕事は想像以上に骨が折れる。
実際、最初に、資料を見たときは、
「辞退したい方」に
うっかり手を挙げそうになった。
しかし、
ローガンをかけてしょぼしょぼと読んだ一文が
おばさんをすっかり痺れさせていたのだ。
「小論文における添削・評価とは
決して技術上の指導にとどまるものではなく、
採点者と被採点答案との論争であり、内容的対峙である」。
受験生と同じ
長文の課題文を読み、設問に目を通し
さらに解説と模範解答、
出題意図と採点基準、
採点のためのサンプル答案、、、
それらに目を通して、
はじめて「お仕事」がスタートする。
答案1枚につき、600まんえんと少し。
じ、地味だ。。。。。(笑)
これが高いか安いかは
この際、食器棚の上にでもあげてしまっていい気がし出した。
解答をする受験生と、実際に会うことはないだろう。
でも、今を生きる若ものたちの
なんというか、その、
若く活きのいいあたまとこころと対話ができる。。。
なんか、おもしろいんじゃないのぉ???
これ。
地に足の着いた生活は
わたしの場合は
お尻に火のついた生活でもあり
爪に火を点す生活でもあり。
お仕事を通じて
若い息吹をぐぐっと身近に感じられ、
こんなわたしを使ってくださるという奇特な場所があるのなら、
たとえそれが時給換算600まんえんであろうとも!
がんばれば、ひと月分の食費ぐらいは
わたしのこの手で生み出せるということではありませんか!
あーた!!!
身内に沸き起こる ときならぬ高揚感を胸に。
予備校からの帰り道
いつも行く近所のスーパーに寄った。
250まんえん。
380まんえん。
520まんえん。。。。
ケッコン以来抱えていた
「520まんえん越え」への得体の知れぬ罪悪感から
あのお仕事はわたしを解放してくれるじゃないの!
ああ、神様!!!
ふと。ただならぬ気配を前方に感じた。
「あ、ビジンだ!
ビジンという異星人が今、わたしの前を横ぎった」。
しかもこのときの異星人は、わたしが知っている異星人であった。
わたしは彼女を知っている。
彼女はわたしのことなんかこれっぽちも知らないが。
実は、わたしは彼女のブログに日参している。
こんな記事とか
こんな記事とか
こんな記事などなどが
参考になるような気がしているからだ。
そして。
「こういう華のあるジンセイも世の中にはある」と
身近に、いや、
身遠に、眺めるために日参しているのだ。
( 確か古語では
「眺める=遠くを見やる。物思いにふける」という意味があったはず )
間近に見る彼女は、
思っていたよりうんと背が高く、
その肌は陶器のごとく、
そして並はずれて華奢なひとだった。
元 地元局メインキャスター
今はフリーアナウンサー&モデルの42歳
ああいう華やかな人生が
この街のそこかしこにあるのだよ。。。
スーパーからの帰り道。
わたしが「殊勝な気持ちになる日」に限っていつもあらわれる
あの いたずっらこの神さま が、
わたしの目の前をスキップして通り過ぎるのを
サヴァランは見た。
【サヴァランのやさぐれ中すday 】更新予定~ (少し順番が変わりました)
第1火曜 …「もってけBENTOU」
第2火曜 …「サヴァランは見た!」
第3火曜 …「おばばの靴」
第4火曜 …「やっぱりおやつ♡」
いつでもどこでもやさぐれサヴァラン♪
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