グアテマラ。そこで見た不思議な光景と懐かしい味
私はグアテマラに一年ほど住んでいた。
スペイン語の勉強ということで、学校に通いながら頼まれた日本人宿での管理人という仕事までし、暮らしたことがあった。1日6時間個人授業でホームステイ3食付き格安のプランで、多くの日本人が訪れるシェラ(ケツアールテナンゴ)というグアテマラ第二の都市。
そのころは、あまり気にも留めずに過ごしていたが、楽しみの一つであるローカルレストランへ度々訪れては、そこで見る光景を不思議な気持ちで見ていた。
哺乳瓶に黒っぽい液体の物を、乳幼児に飲ませているのだった。
不思議に思いながら、ローカルのなんかの栄養剤だろうと思っていた。結構な数のお母さん方が飲ませているのを見た。あるとき、スペイン語の先生に聞いてみた。なんと、飲ませているのは、コーラだという。マスコミが流した嘘の情報、コーラは栄養があると。。。にわか信じがたい飲み物を、ミルクの代用として飲ませているんだという。
マスコミが流した誤った知識を人々は何にも考えずにやっているんだと。。。。いろいろびっくりすることは多いが、きちんとした知識を持った人たちはそんな事はしないが、多くの貧しい人たちは、そこにずっと住んでいる先住民族である。
マスコミの犠牲になるのは、いつでも貧しい教育を受ける事ができなかった人々である。先生は、それを知っているのである。知ってて見て見ぬふり? でもそこにもいろいろと黙っていなくれはいけなない事情もあるようだった。
どの国を訪れても、やはりそこには貧富の差があり、富める人たちは、貧しい人たちからお金を吸い上げる偽善者が多い。
私たちがきちんと話が出来る人たち、スペイン語の先生のほとんどは、教育を受けた白人の血が流れているであろう人々だった。結局私は、地域の人たちとそんなに話もできないうちに1年が過ぎ、グアテマラを後にしたのだ。
この国は、縁があり、なんと3度に渡り訪れている私。一度目は、初めてのバックパッカーで訪れた。ちょうど、内戦が終わったばかりで山賊が出るとかで、大変、危険な時でもあったが、なんとか無事に旅行を終えた。心に残っている事は、湖で洗濯をしている人々の姿。鮮やかな民族衣装。はにかんだ笑顔の人々。そしてなんといってもマヤのティカール遺跡。
二度目は、仕事で。私は縁があってTVの制作会社の仕事をしていたことがあった。スカイパーフェクトTVの旅チャンネルを受け持ち、プロデューサーという肩書で中南米の撮影に出かけた。
この時は、撮影ということもあり、グアテマラの観光庁が撮影の面倒を見ることになる。泊まる場所はすべて一流ホテル。クリントン大統領が泊まったとか、そんなホテルだった。食事もそうだったが、5つ星ホテルの食事すべてがおいしいとは限らないし、見た目も作り方も西洋風のダイニングで食べる料理だが、なぜか、おいしくない。世界中を飛び周ったのだが、5つ星で食べる食事はまったく美味しくなかった。そのうち、食べるのが嫌になるほどだった。朝から晩までコース料理。
なぜが、味気ない料理。なぜなんだろう。そう思いながらも、撮影の合間に屋台の人々がやってくるので料理をのぞき込んでいた。観光庁の方々は、汚いから食べない方がいいと英語で私たちに忠告してくる。それでも美味しそうな匂いに我慢ができずに私はついつい買って食べた。なんと美味しいこと。美味しそうに食べる私を見たクルーたちも買って食べる。屋台のおばちゃんも「美味しいでしょう!私が作ったのよ」と自慢げな笑顔。
そのうち、観光庁の方々も苦笑いしながらも買って食べている。安いし、うまいし、私は「ホテルの食事よりも美味しいわ」っていうと、びっくりしたような顔をしていた。
もちろん、私はフレンチもイタリアンも大好き。でも、西洋風に真似て作った綺麗な料理よりも、おばちゃんが作った屋台の食事の方がおいしかったのは、故郷の母が作ってくれる温かいぬくもりに似ていたからなのだろう。
そんなこともあり、私は今回でこのグアテマラという国を訪れるのは三回目である。語りつくせないくらいの思い出がある。