11月22日はカレー記念日

カレー記念日

落ちてゆく 枯葉のごとし 抜け毛かな

11月22日はカレー記念日

Jane

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カレー記念日とは?

加齢を実感したら、それはカレー記念日。
抗ったり笑い飛ばしたりしながら、毎日華麗に加齢していきましょう。

あなたのカレー記念日も、教えてください。
五七五七七形式で、下の句は「○月○日はカレー記念日」なので
上の句の五七五だけ送ってね!

日付は掲載日に変えさせていただきます。

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ゾロメ女の逆襲

第49回 秋の突発的番外編 「私はこんな物をもらってきた~結婚祝いとして更新料半分」 の巻

 

東京で初めて一人暮らしをしたのは1980年代前半で、場所は杉並区の阿佐ヶ谷だった。

あさがや

中央線阿佐ヶ谷駅の北口を出て、商店街を道なりに歩くこと5~6分、大きな病院のちょっと先にN荘はあった。

大家さん宅の敷地内に別棟として建てられた玄関共同式のアパートN荘は、黒光りした階段が昇降のたびにきしむような古い日本家屋だったが、初老の大家さんご夫婦がこまめに掃除や手入れをしていたことと、私が借りた2F東向きの4畳半と3畳+キッチンの二間はリフォームされたばかりだったことで、すこぶる住みやすかった。
訪れた友人知人も口をそろえて「ここは居心地がいい」と言った。

階段

この二間は、もともとは別々に貸していたものが、時代の推移で3畳の需要が減り、私の入居前にリフォームされたのだったが、別々賃貸時代のなごりはそこここにあった。
よくある2段式の押入が、上段は4畳半側、下段は3畳側からしか開けられなかったり、どちらの部屋にも廊下に出るドアがあったり。

いちげんさんの新聞の勧誘などは、それぞれのドアをノックするのが常だった。
最初の頃こそ、いちいち応じて「この2つの部屋は中で繋がっているのです」と申告していたが、さすがに途中からめんどくさくなり、徐々に、奥のドアはノックされても無視するようになった。

N荘に風呂はなかった。
が、すぐ隣が銭湯だった。
定休日以外は、オープンの午後3時から夜の12時過ぎまで、風呂桶が蛇口やタイルの床とぶつかる音が、強弱はありつつもほぼひっきりなしに聞こえてきた。

私は、その音をうるさいと思ったことは一度もなかった。
湯気と混じり合って適度な湿度を持っていたせいかもしれない。
窓を開けていると、音と共にほのかに石鹸の匂いが漂ってくることも、音自体の好感度アップに貢献していた気がする。
そしてなにより、すぐ近くに「ひとっぷろ浴びている」人々がいることを教えてくれる音は、一人暮らしにとってとても心強いものだったのだ。

特に用事のない夜は、その頼もしくてなつかしくてあたたかくて、でもなぜかちょっとだけ物悲しい気分にもさせる音に、私は飽きることなく耳を澄ませていた。

アパート

N荘では2年ちょっと暮らしたが、結婚が決まったので少し広い風呂付きのアパートに引っ越すことになった。
新居はN荘から徒歩3~4分の場所だった。
私は、阿佐ヶ谷・・というより、その界隈が気に入ったのだった。

 

大家さんの奥さんに「結婚するので引っ越します」と告げると、残念がりながらもたいそう喜んでくれて、結婚祝いだと言って、少し前に払った更新料(家賃2ヶ月分)の半分を返してくれた。
その上、私が「実は、友人がここを気に入っていて次に借りたいと言っているのですが」と言うと、「あなたのお友達なら不動産会社は通さなくてもいい」と言ってくれた。

 

私は、たまに家賃を滞納したり、払い忘れたガス代を立て替えてもらったことがある「ちょっと難ありの店子」という自覚があったので、そのときの奥さんの一連の対応は、うれしいというより意外だった。
そのことを口にすると、奥さんは「ここで暮らしてもらったのもなにかの縁だから」と言って笑った。

押入

今思うと、私はそのとき、大家さんの奥さんの言葉の意味がまるでわかっていなかった。
私はしたり顔で「縁・・なるほど。そうですか。ありがとうございます」と頭を下げながら、友人のY子は、敷金だか礼金だかを払わずにすんでよかったな、と思っていた。

 

大家さん夫婦は、私が思っているよりずっと店子のことを気遣ってくれていたのだ。
親元から離れて暮らす若者たちを、親に代わって見守ってくれていたのだ。
縁あって大家と店子になったから、と。

自分が中年になって、初めてそのことに気づいた。
見守られる側ではなくなってやっと、大家さんに店子のガス代を立て替える義務などないことや、出て行く店子に「結婚祝い」だと更新料を半額返す大家さんが稀有な存在だということに思い当たったのだ。

畳

結婚して2年後に、夫の両親との同居を決めて阿佐ヶ谷を離れた。
その数年後、Y子がN荘を出て福島に帰った。
それ以降も、たまに阿佐ヶ谷に行く機会があると、私はN荘まで行って、アパートがそこにあることを確認し、安心した。
けれど、大家さんのところに顔を出すことまではしなかった。

 

N荘はかなり長いこと頑張っていたが、数年前に久しぶりに行ってみると、マンションになっていた。

覚悟していたつもりだったのに、喪失感は予想以上だった。
私はすがるように隣の銭湯に目を向け、その全く変わらない姿に少しホッとした。

脱衣カゴ

あれからまた月日が流れた。
現在、あの銭湯がどうなっているかは知らない。
このご時世、ネットで調べるのはカンタンだが、あえて調べてはいない。
なぜなら、知らない方が自分がシアワセでいられるから。

たとえば、今の暮らしの中でも、夜、耳を澄ますと、あのカランカランという風呂桶の音が聴こえてきてもフシギじゃない、と思える。
一人暮らしではないけれど、あの銭湯がまだあって、音が聞こえているにちがいないと思える限り、自分も、東京の夜空の下に暮らす数多の人々も皆、完全な孤独ではない気がする。

そして、ご存命であるなら、もうかなりの高齢になるであろう大家さん夫婦も、あの音のする延長上のどこかで元気に暮らしているような気がする。

夜空

自分の脳内宇宙は自分の自由だ。

 

by月亭つまみ

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コメント、ありがとー!

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    アメちゃん

    こんにちわ!
    つまみさん、いい思い出ですね、、。
    アパートとか銭湯って、心の中に切なさと暖かさを残しますね。

    私も18で親元を離れて、京都で一人暮らしを始めたんですが
    4畳半一間・共同台所トイレ・風呂ナシのM荘に住んでいました。
    そして、ひとバス停分歩いて、古い銭湯に通ってたんです。
    (ホントに古い建物の銭湯で、ちょっとした吉原炎上的な銭湯なんですよ。)

    そのM荘は、卒業してすぐに取り壊されたのですが
    数年前、京都に行ったついでに
    「あの頃通っていた銭湯はまだ残ってるのかな〜??」と、
    記憶を頼りに行ってみたら、まだ昔のまま残っていました。

    その昔のままの銭湯を見たら、私、おもわず涙が出てきました。
    「ああ、あの頃の私、がんばってたな、、」って。
    初めての一人暮らしに、お米をどれぐらい炊いたらいいのか分からず
    いっぺんに2合も炊いてしまい
    炊飯器を開けたら、ものすごい量のごはんに泣いてしまったことなどが思い出されて
    18、19の頃の自分の肩を抱いてやりたい気持ちになりましたよ。

    そういえば
    そのM荘の1階は理容室だったんですが
    就職してからず、大阪の繁華街でいきなり
    「M荘に住んでた子でしょ?」って
    そのお店の店長さんに声をかけられたことがあります。
    別に親しく話ししたりなどなかったのに
    顔を覚えてくれてたんだな〜と、ちょっと嬉しかったです。

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    tsukimachi

    つまみさん

    こんにちは。

    いまわたしの脳内は
    トクントクンとフィルターから
    ひとしずくづつコーヒーが落ちる様が描かれています。

    わたくしごとですが間もなく40歳になります。
    だからなのか、いいえだからでしょう
    ここのところいろいろな気づきがあるのです。

    以前は気にも留めなかったことが
    実はその人の大きなやさしさの上にあったこと。
    (そしてまだありがとうと言えぬままであること)

    もう一度会いたいあの先生を探してみることを躊躇っていたのは
    きっと知ることが怖かったから、とか。
    (今年重い腰を上げご連絡したら昨年他界されていて声をあげて泣きました)

    脳内宇宙は自分の自由
    いい言葉です。

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    つまみ Post author

    アメちゃんさん、コメントありがとうございます。

    アメちゃんの思い出もいいですね~。

    そうそう。
    アパートとか銭湯、残します残します。
    風呂なしのアパート、そりゃあいろいろ不便ですけど、人生で一度は一人暮らしをして銭湯に通う経験をしておいて損はない、しといてよかった、と思ったりします。

    それにしても、山本幸久さんの『床屋さんへちょっと』に組み込んで欲しいようなエピソードですねえ。
    ほっこりさせてもらいました(^-^)

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    つまみ Post author

    tsukimachiさん、こんばんは。

    若い頃の私は、本当にいろんな人に面倒を見てもらったりよくしてもらって、そのたびに恐縮して「お返しができない」的なことを言うと、「私に返さなくていい。将来、若い人にしてあげればいい」と言われました。

    全然できてないんですけど、最近そのことをよく考えるのですよねえ。
    40歳あたりって、そういう「立場が変わる」年齢なのかもしれませんね。

    私の口癖は「人生、知らない方がシアワセなことが多すぎる」です。
    その口癖もわれながらどうかと思いますが(^^;

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    nao

    一人暮らしを始めた当時は
    若かったし、めちゃくちゃだったし
    大人に見守られて、許されたり、怒られたりしてました。
    そして、特にお返しすることもなく
    当然のようにお世話されて過ぎていきました。

    今やっている若い人のためのお世話は
    当時の大人達への私なりのお返しのつもりもあります。
    ていうか、若い人の未熟さや持っている未来もまぶしくて
    私、好きなんだな-。
    大人ってこんな風に感じるんだなと年取って思いました。

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    つまみ Post author

    naoさん!
    それ!それー!
    まさに私が現在、感じていることです♥

    若いときに戻りたいとは全く思いませんが、若い人を肯定する大人でありたいです。
    もちろん、説教もしますけど。
    ・・しちゃうんですよね、これが(^^;

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    花緒

    ええ話や…(;_;)
    私も自分が一人暮らしをしていた時の事を思い出しました。
    私は20代に大病をして、その後ずっと親に甘えていたので、自立したくて30歳の時に一人暮らしをしました。
    新中野の2階の南西の四畳半で、風呂なし、トイレ共同でした。
    20年前の当時で家賃2万8千円でした。
    不動産屋さんで、「大家さんから、日本人の真面目そうな女性が来るまで引っ込めておいてと言われてた物件です。」と言われました。
    部屋の窓の下に、掃出しという小さな窓が付いていたんです。
    上の窓の柵に折りたたみテーブルを折って置いて、掃出しの窓から足を出して座ってご飯を食べていました。
    猛暑日に一日2回、雪の日もお風呂屋さんに行くのが辛くなり、2年で実家に戻りました(^^;
    10年後、会社の帰りに行ってみたら、建て替えられてきれいなアパートになっていました。
    すごく寂しかったです。
    大家さんがおばあさんだったので、代替わりしたのかもしれません。

  • アバター画像

    花緒

    続きです。
    という訳で、風呂なしアパートで一人暮らししたという共通点だけで書いてしまいましたm(_ _)m
    アパートの周りは他の建物の壁や木が生い茂っていたので、足を出してても大丈夫だったと思います(^^ゞ
    大家さんの思い出は、私が外出中に急に雨が降って来た時、干してあった布団を取り込んでくれた事です。
    コメントがずれてるかも。。。

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    つまみ Post author

    花緒さん、こんにちは。
    コメント、ありがとうございます。

    今回の記事、このコメント欄だけでなく、メールやtwitterでもたくさん感想をいただき、うれしい限りなのですが、すんごく「奇偶」が多いのです!

    花緒さん!共通点は風呂なし、だけではありません。
    N荘の私の部屋にも掃出し窓がありました!
    そして、家賃も2万8千円でした!!
    10年ぐらい、時代は隔たっているようですが、そのシンクロにびっくりしました。

    掃出し窓のことは、今回の記事でも触れようかと思ったのですが、長くなりそうだったので割愛しました。
    なので書いていただけてうれしいです。

    私、最初は「なんだ?この昔の便所の窓みたいなのは」と思ったんですよねー。
    掃出し窓なんて知らなくて。
    道路に面した窓でしたが、そこを枕元にして、夏の夜など開けて寝ていました。
    木の渋い扉と、ビジュアルの可愛さも相まって、なんだかいろいろ面白かったです。

    そして、とっくに住んでいないのに、建て替えられていたことを知った瞬間のすごい寂しさも分かち合えてうれしいです。

    友人のY子にもこのことを伝えたい!
    伝えようっと!

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