ゾロメ日記 NO.72 走馬燈のようにめぐりながら
◆6月某日 東京へは もう何度も行きましたね
何度も書いている気がするが、私はラジオ好きだ。特に音楽を聴くのが好きかもしれない。突然ラジオから、好きな曲や昔の思い出の曲が流れてくると、自発的に聴いたときよりもずっと心の奥まで沁み入る気がするのはなぜだろう。
さっき、ラジオからマイペースの「東京」が流れた。1974年の曲とのこと。古い!レコードを持っていたわけでもないのに、ラジオから頻繁に流れていたせいでメロディも詞もしっかり記憶されている。とりたてて名曲だとは思わないが(思わないんかいっ!)、この曲が流れていた頃の、まだ中学生だった自分が蘇る。
福島市の中学に通った私の修学旅行先は東京だった。お決まりの国会議事堂や東京タワーには行かず、今はなき秋葉原の交通博物館や浅草の国際劇場に行った。後々知ったところによれば、修学旅行としてはレアな見学コースらしい。誰のセレクトだったのだろうか。
国際劇場では松竹歌劇団(SKD)の春のおどりを見ることになっていたが、劇場に入ったら映画『続・愛と誠』が上映中だった。<修学旅行のしおり>には確かに「SKDの春のおどり鑑賞」とある。解せなかった。映画を見ていた一般客も、突然中学生が何百人も入ってきて(福島市でいちばん生徒数の多い中学で、9組まであった)違う意味で「解せない」顔をしていた。
当時の国際劇場は、映画とレビューを交互にやるシステムだったりしたらしいが、そんなことは知らなかったので、訳がわからないまま、ごっそりと空いている前列(映画だから当然だ)に座った。
映画は小30分しか見なかった。とても暗かった。けれどよかった。最初からちゃんと見たいと思った。休憩後、あわよくば再び『続・愛と誠』が始まったりしないか…と淡い期待を抱いたが、<修学旅行のしおり>どおり、SKDレビューが開幕した。
レビューは派手で生々しくてかっこよかった。でも、別世界過ぎてあまり乗れなかった。暗い青春を垣間見た直後なので、パラダイスをプレゼンされても、という感じだったのかもしれない。そしてレビューは最後のラインダンスに突入した。
のけぞったのは前列にいたせいばかりではないと思う。「笑っているけど鬼気迫る大人の女の人」を何十人もいっぺんに、しかも間近で見るのは初めてだった(その後もあんまり見ないけど)。圧倒されて息苦しくなったが、近くに座った男子生徒たちは脳天気に「あ、右から三番目のストッキングが伝線してる」などと騒いでいて、「男子は息苦しくならないのか。性別は関係なくバカなのか」と思った。
◆6月某日 何も思わずに 電車に飛び乗り
今日は母親の命日だ。西暦2000年、春の気配濃厚な東京から、まだ雪が残る福島県の会津に帰省して、数ヶ月間、母親の闘病の付き添いをした。
最初、母親は実家近くの病院に入院したが、ようやく会津にも桜が咲く頃、隣の市にある大きな病院に転院した。
その病院には重症度によって何パターンもの集中治療室(ICU)があって、母は短期間に、あらゆるレベルのICUに宿泊(?)した。レベルによって家族の、入室の際の手続き、待機場所、面会時間が違った。そして、全てのパターンを制覇した頃、母は最初の病院に戻り、数日後に息を引き取った。
あの日々は本当にキツかった。母が日に日に悪くなることと、くつろげる場所がなかったことが大きかった。自分の食欲がどんどん落ちて、これはマズイと思った。それで、付き添いの間隙を縫って二度ほど東京に戻った。1泊ぐらいしかできなかったけれど、必死で東京を目指した。
東京に向かう列車に乗ると、「家に帰れるんだ」と思って涙が出そうになった。在来線から新幹線に乗り換えて、徐々に首都圏に近づくと、自分のホームグラウンドに戻ってきた気がし、喧騒や空気のよどみにさえホッとした。あれから17年になる。
◆6月某日 いつもいつでも夢と希望を持って
足の悪い義母が家の中で転んでしまった。救急車を呼び、即刻入院となった。
義母は長いこと、どんなに足の状態が悪化してきても、頑張ってリハビリをすれば治る、と本気で思ってきた人だ。でも、今年の2月に義父が亡くなってから、希望や我が身のじれったさをあまり口にしなくなった。
義母を見て「現実を受け入れることも大事なのではないか」と思うこともあったが、こうなると、やっぱり義母には夢と希望を持ち続けて欲しい。今回の入院は残念だが、同室の人たちとのコミュニケーションなどを通して、またポジティブさを取り戻してくれないかなと思っている。まさに「転んでもただでは起きない」精神で。
by月亭つまみ
第1木曜日 まゆぽさんの【あの頃アーカイブ】
第2木曜日 つまみの【帰って来たゾロメ女の逆襲 月刊 切実本屋】
第3木曜日 はらぷさんの【なんかすごい。】
第4、5木曜日 つまみの【帰って来たゾロメ女の逆襲 ゾロメ日記】
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