【月刊★切実本屋】VOL.34 人生は畳語(重ねる言葉)だ!
今週のカリーナさんの記事で、カイゴ・デトックスのマガジン“Zine(ジン)”の販売が告知されました。
Zineについては、今回の記事のみならず、昨年秋の【カイゴ・デトックスin京都】開催決定以降、その関連の記事で、幾度となく紹介させていただきました。
昨年の後半は、いろいろなところで「ジンって知ってる?」「ジンだよジン」「ジンだってば」と、一時期の山本リンダぐらい「ジンジンさせて」いたので、2020年の年が明けた頃にはもう、自分の手からいったんジンを解き放ったような気分でいました。
ですから、今回の告知でたくさんの方から注文をいただいて、驚くやら、嬉しいやら、(販売の告知が遅くなって)申し訳ないやら、です。
中には、一人で複数冊注文してくださる方もいらっしゃいます。
「この非常事態のせいで会えない友達に贈りものをするのですが、そのセットにこのZineを入れますね」という注文メールには、今の状況下でいちばん爽やかな風を感じました。
このサイトで芽吹いた「カイゴ・デトックス」が、読者の方のアシストでZineを介して拡がる…こんなにうれしいことはありません。
そんななか、Zine首謀者の(ひとりの)わたくしは、創刊号の出来に必ずしも満足しておりませんでした。もっと自分が読みたい雑誌にしたかったと反省しているのです。
創刊号は、手堅く「置きに行った」感が多々あります。
初回なのである程度しょうがないとはいえ、次の号こそ、安全にストライクをとりに行くだけでなく、スピードの緩急や変化球を使った雑誌にしたい!
言うわりには具体的なイメージはありません。
ところが、先日、『へろへろ』という斬新なタイトルの本を読んで、めきめきとイメージ(だけ)が湧いてきました。
これは、福岡にある「宅老所よりあい」という老人介護施設ができるまでを、ひょんなことからここと関わり合いになったフリーの編集者が綴った本で、渾身&脱力&抱腹絶倒&火事場の馬鹿力&しょぼくれた売れない中年編集者(writer)の成長ノンフィクションになっています。
いやあ、おもしろかった。「よりあい」を立ち上げた下村恵美子さん、そもそもその立ち上げの発端になった大場ノブヲばあさん、この二人のキャラがスゴ過ぎる!…いやいや、多少地味ながら、下村姐さんと二人三脚で「よりあい」を形にしていく、「コアラにおかっぱのかつらをかぶせマジックで太い眉を描いた」ビジュアルだという村瀬孝生さんも負けていない。
他のスタッフも、まるで吉本新喜劇の誰かのようで(全然知らんけど)、果ては、谷川俊太郎という、日本でいちばん有名な詩人すら、この本の中では新喜劇のゲスト演者にしか見えません。
そう。ここまで書いてきて気づきました。この本、登場人物のキャラがすごいのは確かなのですが、ここまで読み手をわくわくさせるのは、著者の筆力によるところ大です。伊達に長年くすぶっていなかった。破壊力がハンパない。
そして、ここからが本題なのですが(えっ!?((((;゚Д゚)))))
著者はある日、下村&村瀬 両氏から「『よりあい』の雑誌を作ってほしい」と依頼されます。エネルギッシュで人間機関車のような下村さんから「鹿子さんがおもしろいと思うことをそのまま書いてくれればそれでいい。わたし、そういう雑誌を読んでみたい」と言われるのです
雑誌界隈から長く干され、暗く澱んだ沼に腰まで浸かり、身動きできない日々を過ごしていた著者にとって、これは何にも代え難い金言でした。彼は即座に雑誌のタイトルを決めます。『ヨレヨレ』と。そしてこう心に誓うのです。
僕は単純に「読んでおもしろい雑誌」にしようと思った。老人介護施設の出す雑誌だからこそ、おもしろくしたいと思った。身内や介護専門職だけが読む雑誌じゃつまらない。むしろ、そういう世界にまるで縁もゆかりもない人たちが手に取り、読んでもらえる雑誌にしたかった。腹を抱えてげらげら笑ってもらえたら最高だ。
これですよ、これ!
自分がカイゴ・デトックスのZineに思い描くイメージはこれなのです。
シビアな閉塞感いっぱいの日常で、冗談やくだらないことを妄想する時間がなかなか持てなくても笑いたい。お笑い番組を見たり、本で爆笑するのもいいけれど、笑いのネタは、むしろ自分が日々窮することの方が、それを笑い飛ばすことの方が、開く風穴は大きい気がするのです。
…いや、そんな御託はどうでもいいのかも。とにかくわたしは、この本を読んで、おもしろいZineが作りたいという気持ちがあらためてふつふつと湧いてきたのでした。
あ~、大風呂敷広げちゃったかな。
そしてここからが問題なのですが(えっ!?((((;゚Д゚)))))
実はわたしはまだ、雑誌『ヨレヨレ』を見たことがありません。入手できていないのです。ああ、どうしたら買えるの?
読んでもいない雑誌に触発されて、それを今後のZineの指針にしようとする暴挙。でもいいんだ。触発されちゃったんだもの。
雑誌『ヨレヨレ』のキャッチコピーは【楽しもう。もがきながらも。】とのこと。
早く、おもいっきりもがいたりドキドキしながら楽しめる日常が戻ってきますように!もう、心がざわざわする日常なんて、あきあきだよ。
by月亭つまみ