帰って来たゾロメ女の逆襲⑩ ~今回は「気になるタイトル」にかこつけていっぱい本を紹介したい衝動に駆られたのですよ、の巻~
もう何年も前のこと。
職場(図書館ではなく一般企業)の同僚N子嬢に「なにか面白い本、ない?」と聞かれたので、わりと自信満々に中島らもの「今夜、すベてのバーで」を進呈しました。
が、受け取った彼女は開口一番「へんな題名ー」。
この小説、私は中身もタイトルも大好きなので、彼女のコメントにちょっとがっくりし、「えー!?そおかなー?」と不満の声を漏らしました。
すると、N子嬢はもう一度表紙をじっと見て言いました。
「なーんだ。タイトルは『今夜、すべてのバーで』だけなんだね。『中島らも、今夜すべてのバーで』かと思ったから、どういう意味?あとは誰がいるの?中島達だけで全部のバーに行けるの?と思っちゃった」。
そう言われて私もあらためて表紙を見ました。
作者名とタイトルがほぼ同じ書体、色、サイズで続けて書かれています。
しかも作者の名前が、係助詞かと見紛う、人の名前業界では異端のかな2文字・・・とあらば、確かに勘違いしてもしょうがないかもと思いました。
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なにゆえ、唐突に古い話を持ち出したかというと、あの『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』というタイトルを見聞きするたび、私はこの『中島らも、今夜、すべてのバーで』というタイトル(じゃないけど)を思い出すのです。
なんだか似てませんか、このふたつ。
ちょっと変わった人名が入っていることだけじゃなく、雰囲気が。
意味がわかるような、わからないような。
文体が正しいような、正しくないような。
具体的なものを指し示しているような、茫洋としてるような。
だからどうした?と言われると、全くもって、どうもしないんですけどね。
そもそも、片方はタイトルですらないし。
タッタッタッタ!(言い逃げする音)。
さて、前フリはこのくらいにして(長い!)・・・
ふだんは好みの作家の本ばかりを追って読みがちですが、たまに、タイトルそのものがどうしても気になって手にとる本があります。
最近では小田雅久仁さんの『本にだって雄と雌があります 』。
話題にもなってましたが、とにかくタイトルのインパクトが大きかった。
この本の凄さは、中身のインパクトがタイトルにまったく負けてないこと。
最初から最後まで、物語が読み手の想像力を凌駕し続けるような、麗しい逸冊(造語)です。
谷川直子さんの『おしかくさま』。
途中までは「おかくしさま」だと思っていたという極秘の衝撃事実(?)はさておき、表紙とタイトル込みで、なんのこっちゃ?と気になって読みました。
新興宗教小説?お金小説?ですが、私には何より新機軸小説で面白かったー。
『ちょんまげぷりん』または『ふしぎの国の安兵衛』で一方的に昵懇きどりの(?)荒木源さんの『オケ老人! 』もなんだか面白そうでソソられました。
高齢者達のオーケストラの話です。
盛りだくさんで漫画的予定調和な感じもありますが、ぐいぐい読めて楽しかった。
小説以外では
小島慶子さんの『女たちの武装解除 』も捨てがたいタイトルと表紙と内容だと思いますが、一推しは浅生ハルミンさんの『三時のわたし』です。
イラストレーター兼猫ストーカー兼エッセイストのハルミンさんが、ミニマムな文章とイラストで、1年間365日分の「午後3時にわたしはなにをしていたか」を綴った絵日記です。
最初は、シンプルな切り口だな、なつかしい番組を思い出させるタイトルだな、としか思いませんでしたが、読み終わったときには「秀逸な企画だ!ステキなタイトルだ!」に変わってました。
私、落ち込んだときはこの本の適当なページを開きます。
決してポジティブ系でも人生訓っぽくもない日記なのに、眺めるとフシギに落ち着くのです。
ふだんの自分が使っていない脳内回路が開いて、落ち込んだ事実や理由を希釈してくれるのかもしれません。
何をしてても、どんなことを思っていてもいいんだ、と肩から力が抜けるというか。
「愛すべきしょーもない者達よ!」と、自分を含めた世界丸ごとを、ヨシヨシと撫でたくなります。
ところで先日、ラジオをつけたら阿川佐和子さんの『聞く力』の話題だったのですが、私はしばらくの間、「ん?『菊池から』って何?」と思ってました。
「中島らも」と「菊池から」も似てませんか?
タッタッタッタ!
by月亭つまみ
こんなブログをしています。正体不明な女二人のブログ。 お昼休みなぞにのぞいてみてください♪→→「チチカカ湖でひと泳ぎ」
TOKO
本好きは人が何を読んでいるかも気になる習性を持っておりまして、電車の中で本を読む人があれば近寄ったり、それが図書館で借りられたものなんだとか、小説らしい…なんてことは、いつも思うわけです。
本日のつまみさんのご紹介も、いちいちAmazonと行き来してしまいました。
チェック、チェック、でまた時間が過ぎて行きます(笑)
時々、こんな話も聞かせてください!
つまみ Post author
TOKOさま
うれしいコメント、ありがとうございます。
はい!
また書かせていただきます!!
今後とも、よろしくお願いします。
つまみ Post author
TOKOさま(追加)
電車の中での他人の読書、気になります。
最近は携帯(スマホ)をいじっている人の方が断然多いので、「本を読んでいる人」というだけで好感を持ってしまったりするわけですが、隣に座っている人、前に座っている人の読んでいるものがなんであるか、なんとしてでも知りたい!と、かなり怪しい行動(実際は顔と目をこそこそ動かすだけですが)をとったりします。
そして、努力の結果、判明したそれが、自分の好きな本だと気づいた日には!
異性なら「付き合って下さい」と言うかも(ウソ)。
逆に、まったく好みではない本だとわかると、一方的に「アタシのこの努力を返してよ!」と憮然とし、説教したくなります(ちょっとホント)。
いずれにしても怪しいったらありゃしません(笑)。
みもり
中島らもさんの奥様が書かれました本も衝撃的でした!
(こちらは女性目線なので、思うところ様々ありでした)
らもさんのこの本は救いようがないのですが、ユーモアがあり
また、やはり切ない…そんな気持ちになる本でした。
つまみ Post author
みもりさま
はいはいはい!
あれは衝撃でした!
確か中島美代子さん。
事実は小説より奇なり、と言いますが、それを地で行く破天荒?センセーショナル?な内容だったと記憶しています。
らもさん、現実に近くにいたらホントに大変そうですが、小説というフィルターを通すと、とても魅力的で好きでした。
もう、亡くなって10年近くになるんですねえ。