第37回 アラコキ暴走の期待と今年度初のオススメ本、の巻
先般の「笑っていいとも」終了における賑々しさのピーク時、私はtwitterでこんなtweetをしました。
大瀧詠一や安西水丸の訃報でも感じた「亡くなったことで人柄や業績や逸話が語られ、再評価され、生きてる間に知りたかったと苦い後悔を覚える」が、タモリは「笑っていいとも」を終わらせることで「間に合わせてくれた」気がする。
今後はいっそ、間に合ったことをこっちが後悔するぐらい暴走して欲しい。
われながら的を射たつぶやきだと思ったのですが(気色悪い自画自賛) 反響は「友人約1名がとても誉めてくれた」にとどまりました。
いや、別にそれが不満というわけではないのですが、このつぶやきの後に、あのあまちゃんの忠兵衛さん・・私にとっては人生で初めて見た日活ロマンポルノ『天使のはらわた 赤い教室』でのおなじみの蟹江敬三が亡くなっていたことが報じられ、あらためてtwitter140字には収まり切らない気持ちが噴出してきたのでした。
プシュー!と。
私はタモリが好きですが、どちらかというと「タモリ倶楽部」「ブラタモリ」そして1990年代はじめから15年ぐらい続いたニッポン放送のラジオ番組「タモリの週刊ダイナマイク」限定のタモリファンです。
ですから、いいとも終了に特に思い入れはありませんでした・・いや、ないつもりでした。
実際、もう長いことちゃんと「笑っていいとも」を見ていなかったし、最近はマンネリだ視聴率低迷だと叩かれてもいたようなので、自分も世間もさほど感慨などないだろうと思っていたのです。
でも、そういう問題じゃなかったのですね。
私は全然わかってなかった。
ちゃんと見ていた見ていないにかかわらず、30余年続いた生放送の昼の帯番組が終わるというのは、あって当然の日常風景が忽然と消えるような、なくなることでその価値に気づいて呆然とするような、特別な「訃報」だったのですね。
今回の「訃報」の特殊さは、番組は終わってもタモリは生きているということ。
大瀧詠一や安西水丸や蟹江敬三のように、いなくなってから「こんな作品もあんな活動もそんなコメントもしていたのか。その存在をもっとリアルタイムで感じておけばよかった」という苦い後悔を感じなくてすむということ。
このことに国民はこぞって安堵感を覚えているのではないでしょうか。
それが、番組終了時のタモリ株急上昇のなによりの理由のような気がします。
存名中はほとんど話題にならなかった(有名)人でも、亡くなったとたん、マスコミや世間からいっせいに悼まれ嘆かれることは、当然といえば当然です。
死とはそういうものなのでしょうし、人を彼岸に送る一環の中にそういうことも組み込まれているのだろう、と。
でも、もしかしたら多くの人が、そのことにわずかな違和感や後ろめたさを覚えているのではないでしょうか。
少なくても私はそうです。
故人を惜しむコメントや文章が感情的であればあるほど「そんなに言う(書く)なら生前本人に、世界に、言えば(書けば)よかったのに」と思ってしまいます。
でもタモリに関しては、本人に、世界に、言える(書ける)。
みんな、そのことにカタルシスさえ感じているのではないかと思ったりしています。
かつてナンシー関は「タモリは『笑っていいとも』でおじいちゃんになりたがっている」と言いましたが、今回、私の脳裏にはやけにその言葉がよぎりました。
ユーモアのセンスがあって、物分りがよく、説教臭くなく、気安くて、威圧感のない、ボケたふりはするけど頭脳明晰な理想のおじいちゃん、それがいいとものタモリだったのではないか、と。
本人もそのポジションがラクチンで続けてきたけれど、もともと誰の「おじいちゃんでもない」し、実は飽きていたのかもしれない、と邪推したりしています。
これからは好き勝手なことをしまくるうっとうしいジジイになって、今回の「終了ご祝儀相場」を急落させて「あのとき“タモロス”と悲しんだ自分はなんだったのだろう?」と世間の顰蹙を買えば面白いのに、と個人的には思います。
アラコキ(古希)の暴走を期待しています。
唐突ですが、ここで本の話題。
今年度最初に読んだ小説が藤岡陽子さんの『手のひらの音符』でよかった。
スミマセン!タモリともいいともとも全く関係ありません。
ヒロインは45才の服飾デザイナー。
過去と現在が交錯しながら、彼女を含めた登場人物達の半生が語られます。
ミステリーでも大河小説でもなく、順風満帆とは程遠い展開ですが、読後感は爽やかです。
それはラストに向かって希望の光が集約されているからだと思われます。
人生はままならないことが多いけれど、かといって、誠実さやひたむきさが否定されるものではないという作者の気持ちが、直球で放たれて、読んでいる方にもじわじわ心地よく侵食してきました。
たまにはまっとうな力に組み伏せられた気分になるのも悪くありません(笑)。
オススメです。
by月亭つまみ
こんなブログもやってます♪→→「チチカカ湖でひと泳ぎ」<
rieko
いいともの後番組のあまりの内容のなさ?いや早く言えば面白くなさに今頃になってタモロスに陥りました。
空気のような存在の番組だったと実感しています。
蟹江さんは、亡くなったと知ってから、その夜の土曜サスペンスドラマにちょうど出ていて、たっぷりと堪能しました。
ごちそうさんの後の意続いてる朝ドラもイマイチ入り込めないし、お昼の時間の過ごし方が変わりそうです。(←かなり疑わしいが)
つまみ Post author
riekoさん、コメントありがとうございます!
いいともの後番組、ほとんど見ていないのですが、かなり準備期間があったわりには誰がどう見ても、そそられないですよねえ。
いいともの存在が大き過ぎて、制作者が腰が引けてしまったんでしょうか!?
私もちょっとごちロスです。
15分とはいえ、お昼の過ごし方、変わりますよね。
そして、食事を作る意欲も低下しました(言い訳)(^_^;)。
sprout
本屋に行ったら平台にタモリ論がずらっと並んでいて、つまみさんの名ツイートを改めて思い出しました。タモリ、まだ生きてんのに(笑)
「死とはそういうもの〜」のくだりから「〜カタルシス」のとこまで、ま・さ・に!!!
私の細胞にスポスポとはまるような言葉をありがとうございます。
あー、デトックスした気持ち。
つまみ Post author
sproutさん、その節はtweetを誉めてくれてありがとうございました。
あれがあったからこそ、今回の文章になりましたのですよ。
ホント、本屋で並んでますよねー、タモリ関係本。
うっかり死んじゃわないか心配になってしまう。
あずみ
タモリさんが本当にあの世に言っちゃったら、おんおん泣いちゃうだろうなーと思っているあずみです。
今回のいいとも終了と、夜の特番(見てないけど、記事で読んだ)は、私にはタモリさんの生前葬に思えてしかたなかったですよ(涙)。
つまみさんのTweetをオンタイムで見てなくて残念です。私も見てたら大絶賛してました!
アラコキ大暴走希望っす(タモリさんに限定で)
つまみ Post author
あずみさん、コメントありがとうございます!
生前葬!確かに!!
あの状況で涙を見せなかったのは「さすが!」と思いましたが(サングラスに隠れていたやもしれませんが)、生前葬で本人は幽体離脱していた、と解釈すると納得してしまいます。
納得するな、ですけど(^_^;)
今日、大型書店で、太田出版の「ケトル」という雑誌を見かけたのですが、「大瀧詠一が大好き!」と「やっぱりタモリが大好き!」が仲良く平積みされていて、ドキッとしました。
http://www.ohtabooks.com/publish/kettle/
↑これ、半分、あの世に行かされちゃってません?(;´д`)
あずみ
「ケトル」の表紙見ました! ありゃー、あれは確かに半分行かされちゃってる。よく言って幽体離脱中?
タモリさんみたいに年取りたいっすねぇ。
つまみ Post author
あずみさん、おはようございます。
でしょでしょ、ちょっと行かされちゃってますよねー。
そうですね。
タモリ的加齢法にあこがれます。