「検索しない」が流行っている。
最近、僕の中では「検索しない」ということが流行っている。たとえば、さっき開高健が以前エッセイか小説の中に「三つの真実にまさる一つの美しい嘘」ということを書いていたなあ、と思ったのである。思ったのであるが、確信が持てないのである。真実が三つだったのか、嘘が三つだったのか。
おそらく、真実のほうが重いのだと普通なら考えるのに、時には嘘のほうに価値がある場合もある、ということを伝えるフレーズなのだ。だとすれば、嘘が三つだと「束でかかってやっと勝てる」という意味合いになってしまう。だからこそ、美しい嘘、という言い回しで、熟慮したたった一つの嘘でなければ意味がない。すると、相手が一つの真実ではなく三つの真実という「強敵」であっても牙城を崩せることだってあるのだ。とかなんとか考えるのが楽しい。スマートホンでネット検索した日にゃ、こんなに頭をグルグルさせて楽しむことなんてできやしない。
最近は、いろんなものがネットにつながっているので、なんでもすぐに検索できてしまう。ことわざを検索すれば、ことわざの意味から由来、そして、ことわざが使われている小話から、タイトルに使われている映画やお芝居まで次々とヒットする。そして、あっという間に疑問が解消して、事なきを得るのである。なんなら、漢字の書き順までアニメーションで教えてくれる。
仕事なら本当に助かる。さっさと調べて、さっさと処理して、さっさと終わってしまいたい。そんなときには、ネット検索様々である。なんなら、難しい漢字はそのままコピー&ペーストすればいい。
でも、そうやって検索して得た結果は本当にすぐに忘れてしまう。少なくとも僕は忘れる。あっと言う間に。ということで、僕は極力検索しないことにしたのである。
今の世の中、どっからが仕事でどっからが遊びなのかもよくわからないようになってしまった。おそらく、パソコンとスマートホンとインターネットのせいで。というか、主にインターネットのせいだな。
顔も見たくない人の住所と、大好きな人の住所が同じスマートホンのアドレス帳に記入されている。仕事で送られてきた胡散臭いパワーポイントの企画書と、思い出深い音楽のアイコンがデスクトップに並んでいたりもする。検索結果だって、玉石混淆である。見たいと思っていた映画のことを調べたいだけなのに、仕事のことを思い出させるようなどうでもいい記事も一緒になって泥沼の中から引き上げる。
手を煩わせずに得た知識はすぐに忘れてしまう。総じてネットは鬱陶しいことを思い出させる。この二つの理由から僕のなかでネット検索を疎ましく思ったのである。
ただ、心が弱いくせに負けず嫌いの僕は、疎ましく思ったものから逃げ出すのもしゃくだと思うのである。というわけで、僕は積極的に、ポジティブに「検索しない」ということを流行らせているのである。僕の中で。
時々、「ああ、もうここまで出かかっているのに」というときにスマートホンに手が伸びそうになる。そんなときは、周囲にいる誰かに聞く。または、目の前にある本屋に飛び込んで辞書を引く。ネット検索しないことが流行っているので、基本、それ以外はなにをしてもかまわない。
すると、近くに座っている仲間が意外な分野に博識であることを知ったり、辞書で隣の項目に面白い発見があったり。なんというのか、昭和的というか牧歌的というか、そんな心温まるあれやこれやに遭遇する機会が増えたのである。
ということで、over40をごらんのみなさん。華麗なる加齢の目にはブルーライトも良くないそうなので、「検索しない」という僕のブームに乗りませんか。
植松さんとデザイナーのヤブウチさんがラインスタンプを作りました。
ネコのマロンとは?→★
「ネコのマロン」販売サイト
https://store.line.me/stickershop/product/1150262/ja
クリエイターズスタンプのところで、検索した方がはやいかも。
そして、こちらが「ネコのマロン、参院選に立つ。」のサイト
http://www.isana-ad.com/maron/pc/
植松眞人(うえまつまさと) 1962年生まれ。A型さそり座。 兵庫県生まれ。映画の専門学校を出て、なぜかコピーライターに。 現在、神楽坂にあるオフィス★イサナのクリエイティブディレクター、東京・大阪のビジュアルアーツ専門学校で非常勤講師。ヨメと娘と息子と猫のマロンと東京の千駄木で暮らしてます。
★これまでの植松さんの記事は、こちらからどうぞ。
perako
共感しましたー。でもスマホ依存症の我が身、一緒にブームに乗る覚悟ができません(^_^;)
uematsu Post author
perakoさん
半日だけ、密かに乗ってみてください。
きっと、新しい世界が開けると思います(笑)
mikity
植松さん、こんにちは。
わたしも「検索しない」やっています。
私の場合、目の前にいる人にもつい強要してしまします。
「あ、だめだめ、検索しちゃだめ!」って。
瞬時に答えを出さないで、あれこれ話をしていくうちに、
思わぬ着地点にたどり着くのも楽しいものです。
uematsu Post author
mikityさん
そうなんですよね。
ゲーム感覚になると楽しめる気がします。
悶々としながら答えにたどり着くのか、
それともたどり着かないのか。
いやもう、もっと流行らせたい(笑)
つまみ
uematsuさん、私はスマホで検索をしたことがありません。
人にさせたことはありますが、自分ではしません。
理由は「なんか、めんどくさいから」で、たぶん老眼が拍車をかけています。
パソコンでも、あえてしないことがあります。
知ったからなんなのさ、別にいいか、と頻繁に思うのは、もともとの好奇心が足りないからでしょうか。
本の感想も、自分でどこかに書くときは、書いてから人のを見るようにしています。
書く前だと影響されてしまって、感想の感想になるのはちょっと違うかなあと。
そんな私は、ハナからブームに乗っていたと言えるのでしょうか。言えないのでしょうか。
uematsu Post author
つまみさん
それは、ブームというよりも、もはや生き様です。ついていきます(笑)
カリーナ
植松さん!!やってみようとしましたが、だめです。
さっきもツイッターで「貝塚市のゆるキャラが・・・」と話しかけられ、
次の瞬間、検索して「つげくん」というキャラだとわかりました。
その前には、ベランダの水やりをしたのち、
「うどんこ病 重曹」を検索しました。
「うどんこ病 重曹」に至る前には
「うどんこ病 原因」「うどんこ病 対策」「うどんこ病 農薬」
「うどんこ病 酢」を経ています。
一行動のまえに5検索。
今日もこのあと大量の検索をしてしまいそうです。
uematsu Post author
カリーナさん
やるならゲーム感覚ですよね。
出ないと、次々検索したいことが出てきますから。まあ、いきなり難易度の高いゲームに挑む感じでしょうか?
でも、昔は検索なんかなかったですからねえ。
不思議です
爽子
自分を縛るのは無理でした。
3時間で、降参。
あかんわー。
uematsu Post author
爽子さん
僕は最初やった時、10分で検索はじめてました(笑)