茶碗には… : 豆腐のたらこあんかけ
この記事でお知らせした通り、昨年末、母がグループホームに入所しました。
申し込みから入所が決まるまでがあっという間だったので、何も準備をしておらず、ホームからもらった持ち物リストを片手に買い物に走りました。
粗方のものを揃えてから、リストの中に、ご飯茶碗、箸、湯呑があることに気づきました。
学校給食のようにホームの方で揃いの食器を用意することもできるのでしょうけれど、入所者さんたちに自宅にいるような雰囲気を感じてもらうために自分の食器を持ち込んでもらうことにしているのではないかと思います。
みんな同じ無機質な食器で食事をするよりも、それぞれが自分の食器でご飯を食べる。とてもいいシステムです。
でも、では母の支度を、と考えた時にふと考えてしまいました。
「家で母が使っていた茶碗、箸、湯呑を持って行かせたくはない」
母がこの家で使ってた食器を持たせることで、母を永遠にこの家から”追い出す”というというイメージが湧いてしまったのです。
いや、グループホームに入所させるということは、永遠に追い出したのとさして変わりのはないことなのだと思います。そして、永遠に追い出すようなことを決めておきながら、永遠に追い出すようなイメージにおののくとは、なんて勝手な自己保身か。
それでも私は、新しい茶碗と箸、湯呑を買って、母の荷物に入れました。
自分の気持ちを楽にするために。
それにしても、洋服やその他の身の回り品には何も抵抗を感じなかったのに、茶碗と箸にはどうしてこんなにその人の存在を感じてしまうのか。
そこでふと思い出したのが、私の大好きなドラマ『赤い霊柩車』に毎回登場するシーンです。出棺の際、霊柩車などの葬列が出発する前に、葬儀社の社員役の山村紅葉さんが地面にお茶碗を叩きつけてぱりーん!と割るのです。
(地域や宗派によって違いがあると思います)
その習慣について調べてみると、故人が使っていた茶碗を割ることで「もうこの世にあなたの茶碗はないから戻って来てもご飯は食べられない」と伝えて、魂が戻ってきてしまうことを防ぐためだということがわかりました。茶碗が割られた瞬間が、死者と生きている者との決別の瞬間、ということですね。
また、ご飯茶碗には聖具として霊的な意味があるため、他の生活道具とは少し異なる存在なのだという話もありました。
母の支度を整える時、私は、葬儀での茶碗割りのことや、ご飯茶碗が特別なものであるということなど考えもしませんでした。それでも、母が長年使っていた茶碗をホームへ持たせることに抵抗を感じてしまった。
やはり私の中に(もしかしたら多くの日本人の中にも)、ご飯茶碗にそれを使う人の存在がしみ込んでいるという意識が(無意識ながら)あったのでしょうね。
さて、ホームといえば、先日、伯母が入所している老健から連絡がありました。
伯母が入所しているフロアの入所者さんがインフルエンザ感染したため、しばらくは面会することができないとのことでした。
この季節、高齢者施設はもちろんのこと、私たちもインフルエンザや風邪に十分注意しなければなりませんね。食べ物でどうにかできるものではないかもしれませんが、免疫力を高めたり、体を温かくしてくれるものを食べて乗り越えることはできないかしら、と考えてしまいます。
というわけで、今日の一品は『豆腐のたらこあんかけ』。
以前ご紹介した『豆腐のあんかけ』のスピンオフ版です。違うか。
熱々にしてお召し上がりください。
『豆腐のたらこあんかけ』
- 豆腐を適当な大きさに切り、水を張った鍋に入れて中火で加熱します。豆腐は、木綿、絹、どちらでもお好みで。ちなみに、私は木綿派です。
- 1のお湯が、豆腐がゆらゆらするくらいに沸いてきたら、蓋をして弱火にします。
- たらこは皮に切れ目を入れて広げ、ナイフの背などでこそげて皮から身をはがします。
- 別の鍋に、だし汁、塩、酒、みりんを入れて強火で加熱します。たらこが加わるので、この段階では味を薄めにしておきましょう。
- 4が沸騰したら火を弱めの中火にし、3のたらこを加えてほぐすように混ぜます。
- たらこの粒がだまにならないようにほぐしたら、水溶き片栗粉を加えてとろみをつけます。
- 鍋で温めてあった豆腐を器に盛り、たらこあんをかけたら出来上がりです。豆腐もあんも熱々で食べられるよう、豆腐は食べる直前まで温かいお湯の中で芯までしっかり温め、たらこあんも食べる直前に出来上がるようにタイミングを計ってくださいね。
そういえば、ご飯茶碗やお箸など、自分専用の食器を使うのって日本だけでしょうか?少なくとも欧米ではそいういう習慣はないような気がします。
日本人が自分専用の食器を持つ理由。そんなこともちょっと調べてみたくなりました。
ミカスでした。
Jane
ミカスさんの豆腐のたらこあんかけの写真、まるで古寺に咲く桜のようにきれいですね。いつもお皿の合わせ方などの演出がお上手で、本当においしそうに見えますね。豆腐のたらこあんかけ、簡単にできておいしゅうございました。
ミカス Post author
Janeさん
ありがとうございます。
そんな好きな褒め言葉、なんだか泣いちゃいそうです。
豆腐の白とたらこのピンク、確かに春に美しい一皿ですね。
桜の季節にまた作ってみようと思います。