いくひたるひ(生日足日)
生気にあふれ何事も満ち足りた日、吉日、神事・儀式の日を祝っていう (コトバンクより)
コロナ前のことですが奈良にでも行こうかなと思いつき、出かけました。
新幹線の中で調べていたら三輪山の大神神社の卯の日祭という行事を見つけました。行ってみると神社の境内では酒祭りの準備をすすめていたので11月のちょうど今頃のことです。
卯の日祭では、拝殿にあがってもよいとのことで、巫女たちの神楽舞や神職が神饌をつぎつぎと運ぶさまを近くで見ることができました。
その頃は年の初めに亡くした親友のことが頭から離れない毎日だったので、祝詞のなかの「いくひたるひ」という詞がきわだって聞こえ、鬱だった亡友にとって日々は生く日足る日でなかったのだと悟った気がしたものでした。
休暇を好きにとって行きたいところに行ける日常は生く日足る日(本来の意味より少し広い解釈ですかね)だと私は思ったよ なんて伝えたら、率直なウィットに富んだこと言っただろうなとも考えたのでした。
さて、うさぎです。
大神神社には、なでると体の痛いところを癒してくれる「なで兎」という青銅製の兎の置物があります。その頃いた一代目のうさぎは超短毛種で足裏にソアホックという褥瘡ができやすい種類でした。
床材に注意していても両足裏の毛がはげて時々赤くなっていたので、よし!と意気込んでなでに行きました。
銅像は少し顔を上げ耳をぱっとひらいた伏せの姿勢で波模様のついた台座に置かれていました。
いざなでるとなるとあまり熱心なのも気恥ずかしく、ささっと足をなでるだけにしてしまいました。後ろに人が待っているわけでもないのにこんなところで格好つけというか、心の中では全身何回でもなでたい気持ちだったのですが、自意識過剰に負けました。
半年後、うさぎは病気になってやわらかなラグの上にいることが多くなりました。そして最期の日、横になっているのをなでながらふと足裏を見ると、なんとソアホックがすっかり治っていたのです。あ、足裏きれいになってる と発見すると同時に、頭の中でなで兎様のつややかな姿がクローズアップされてきました。
御利益あったなあ、なで兎様すごいなあ。
そしてすぐに欲張って、あのとき全身なでていたら違ったのかななどと思った下僕です。
今回、久しぶりに思い出しました。当時は「生く日足る日」という言葉について延々と考えていたのだけれど・・・。
大神神社のホームページに祭事やなで兎について書かれています。
卯の日は御神縁の日なのだそうです。
用語解説
ソアホック/飛節潰瘍 後足裏の褥瘡です。ウサギの足裏はみっしりと毛で覆われていますが、圧がかかり続けると毛がはげてタコになり、場合によっては潰瘍や皮膚炎になります。硬くて平らな床面やウサギ自身の肥満、運動不足は避けたいところです。ミニレッキスなどの超短毛種は特に要注意です。