共感なんてくそ食らえだ、という年にする。
新年明けましておめでとうございます。
今年の決意をしたのである。いつしたのかというと、ちょうど新年が明けて、ガキ使の「笑ってはいけない」がまだ終わっていないころの時間。家族で「明けましておめでとうございます」と声を掛け合って、そろそろ眠いなあ、と思った頃合いに、決意したのである。
何を決意したのか、というと、今年は「共感なんてくそ食らえだ、という年にする」ということである。年末にネットで見たライター養成講座みたいなサイトで、今時のライターの最優先項目に「共感性が高い文章を書くこと」などと書いてある。確かに、文章を書いていて、人から共感してもらうのはうれしいことかもしれない。でも、それは、書いてあることの結果であって、人から共感してもらおうと思って書くのとは違う。
昨今、小説だって、映画だって、すべてが共感最優先である。たとえば、僕が教えている映画の学校で学生が作る映画には共感最優先の編集があちこちに施されている。男と女が車の中でもめている。女が泣きそうになりながら歩き出す。男が後を追い、女が立ち止まる。男の手が女に触れたその瞬間に、カメラが切り替わり、彼らが海辺にいたことがわかり、真っ青な海を背景にした男女の画が僕たちの眼前にどどーんと提示されるのである。これは、みんなが「こういうカットつなぎをすると、なんか来るよね」ということを知っているつなぎである。つまり、「おおっ!」とみんなが思ってくれる、という予定調和を確信犯的にやっている共感優先のカットつなぎだと僕は思うのである。
テレビでも小説でも映画でも、昨今多いのは「ここ、感動するところ」という切り札の陳腐化である。そりゃそうだ。誰かに共感してほしくて作られたものが、人の心の奥底に響くわけがない。作り手自身が意外に思うほどに奇妙な組み合わせが、数年後に胸に迫ってきたりすることがあるのだ。
ということで、共感なんてくそ食らえだ、という気持ちで今年は行きます。もちろん、共感させるような文章を書いてください、という依頼には応えます。仕事だから。でも、根っこでは「共感なんてくそ食らえだ」と青い炎を絶やさずに生きていきたい。
以上、新年の所信表明でありました!
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植松眞人(うえまつまさと) 1962年生まれ。A型さそり座。 兵庫県生まれ。映画の専門学校を出て、なぜかコピーライターに。 現在、神楽坂にあるオフィス★イサナのクリエイティブディレクター、東京・大阪のビジュアルアーツ専門学校で非常勤講師。ヨメと娘と息子と猫のマロンと東京の千駄木で暮らしてます。
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