12月3日はカレー記念日

カレー記念日

靴を履く ただそれだけで 足がつり

12月3日はカレー記念日

まさち

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カレー記念日とは?

加齢を実感したら、それはカレー記念日。
抗ったり笑い飛ばしたりしながら、毎日華麗に加齢していきましょう。

あなたのカレー記念日も、教えてください。
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ゾロメ女の逆襲

【月刊★切実本屋】VOL.72 長編の夏 日本の夏

今年の夏は暑かった。厳しかった。そしてしつこかった。この文章を書いている時点での向こう一週間の予想最高気温を見ると、まだ過去形にするのは時期尚早という感じなのだが、暦の上ではセプテンバー♪それももう中旬である。夕暮れのつるべ落としっぷりにも加速度がついているので、いくらなんでももう秋ってことでよろしくお願いしたい。

コロナが5類になったとはいえ、持病の咳は出るし、あまりにも暑いしで、今年も過去3年に引き続きインドアな夏だった。休みの日は特にすることもないので(いや、あるだろう)、家事をテキトーに済ませると、ダイニングキッチンの家具の配置換えを日課にし、合間に本を読み、お腹が空くと(さほど空かなくても)なにか食べていた。このルーティンをオシャレに書けば、村上春樹のエッセイが一丁出来上がりである。おかげで、住まいの動線はいっかな定まらず、体重と読書量が右肩上がりになった。

読書に関しては長編に当たりが多い夏だった。そのきざしは今年の前半からあって、以前ここでも書いた『水車小屋のネネ』も496ページでなかなかのものだった。個人的には、400ページを超えると持ち重りがする印象だ。読み切るにもそれなりの時間と読書体力が必要で、面白くなければ最後まで読むことはできない。そこはもう、忖度も(誰に?)見栄も(誰に?)なしだ。読書体力が下降してどんなに面白くても何時間も読み続けることができなくなったので、読み終わったときの達成感はちょっとしたものである。

8月の頭に読み終わったジェフリー・ディーヴァーの『真夜中の密室』は525ページでしかも2段組みだった。この作家の小説、特にリンカーン・ライムシリーズは、どれもこれぐらいの長さだし、どんでん返しが妙のミステリーなので、500ページ超えでもさほどハードルの高さは感じない。

それにしても、毎回「今回こそ気づくぞ!引っかからないぞ!」と心に誓って挑むのにまんまとしてやられる。途中のちょっとした違和感を放置していると、忘れた頃に足元を掬われる繰り返しで、この一連の流れはもはや轍でデジャヴだ。なんなら、喜んで自分から轍に嵌まりに行っている。

このシリーズは決まって、読み終わると即、次の作品に行きたくなる。作者は70代だが、まだまだ書き続けてほしい。


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次に読んだのは『剛心』(木内昇/著)だ。448ページ。実在した明治の建築家、妻木頼黄(つまき よりなか)の半生を描いた歴史小説で、混沌とした明治維新~大正はじめという時代に翻弄されながらも、強い信念で建築に挑み続ける妻木の造形が素晴らしい。彼の業績、それにいたるまでの心理や行動がすこぶる面白いのは、史実と作者の想像力のブレンドが巧みで絶妙だからだと思う。描かれない部分にまで思いを馳せることも多く、まったく長さを感じなかった。特に、20日間の突貫工事で造られた広島の臨時国会仮議事堂完成までの経緯はワクワクドキドキで、読み終わっても鮮明に心に残っている。


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続けて読んだのも同じ木内昇の『かたばみ』。こちらは565ページで、ページ数だけでいえば、この夏最長だ。『剛心』が心にヒットしたので、直後にやはり木内さんの連作短編集『占』を読んだ。これも堪能したものの、まだ飽き足らず、3作続けての木内ワールド探訪になった。もはや耽溺だ。

この小説の舞台は東京の西部、小金井。元やり投げ選手の山岡悌子を主人公に、太平洋戦争直前から高度成長期までが描かれる。テーマは家族。もっといえば血のつながらない家族、ステップファミリーである。

これまた素晴らしかった。新聞に連載されていた小説ということもあって、読みやすく、コンスタントに読者を惹きつける場面があり、なにより、時代や世相の邪悪さと対をなすような主要登場人物たちの善良さが心に沁みる。とはいえ、そこは木内昇、善き人の描写にありがちな安易さやわざとらしさはない。善良さとともに、弱さや頑なさや脆さがきちんと描かれているからだと思う。野球、ラジオなども効果的だ。もちろん、戦争の悲惨さ、特に飛行製作所への爆撃シーンが落とす影は濃い。それら、物語の織りなす世界が、書き割り的ではなく立体的に感じられるので人物が活きる。だから人物がちゃんと生きている。


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そして最後は、昨日読み終わった全503ページの『水平線』(滝口悠生/著)だ。これは読むのに時間がかかった。読みづらかったわけではない。文章が好みだし、ほぼ読みやすいのだが、改行が少ない上に、太平洋戦争下の硫黄島、2020年の東京、父島、その十数年前の硫黄島戦没者墓参、現実と夢、生者と死者、2020年東京オリンピックが行われている世界と行われていない世界‥がふつうに何事もないかのように(あるけど)交錯し、随所に読みどころがあるので、さくさく読むことはできなかった。

滝口悠生の小説を読むのは初めてではないが、あらためて、凄い小説を書く人だと思った。幻惑されつつも、脳内で島々が、人々が、リアルに屹立し、面白くて自由で不可思議で無慈悲な世界にどっぷり浸かった。誤解を怖れずに言えばとてもヘンな小説である。同時に、これこそ小説ならでは、小説でしか描けない世界だ。

読み終わったばかりということもあって、まだ興奮醒めやらず、感想が熱を持ってふわふわしているが、鮮度があるうちになんかしら言いたい、そんな気がする小説だった。


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この夏の収穫は、まだまだ自分は長い小説が読めると確認できたことだ。これはうれしい‥というか、ホッとする。なぜなら、他にこれといった趣味がないから。読書は、消去法で決まった趣味ではないが、アクティブな欲望や推しがある人はいいなあと、ときどき思う。わたしは、他にやりたいことがないから本を読んでいるだけだもの。たまに読書を高尚、知的な趣味と言う人がいるが、イスからずり落ちそうになる。卑下はしないが、趣味を答えるとき、つい「なんかスミマセン」と思ってしまうのだ。

とはいえ、秋は読書シーズン。今回紹介した本はどれも秋の夜長におススメです。

by 月亭つまみ


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