ガーデン病院(仮名)で国際化と高齢化に遭遇。多様性は、いまここに。
脳出血で倒れ、遷延性意識障害と確定診断の下された夫が、療養型病院であるガーデン病院(仮名)に転院して3週間がたちました。「遷延性意識障害」とは、いわゆる「植物状態」のこと。療養型病院とは、積極的な治療をするというより、症状の「維持」に努める病院のことです。
こうかくと救いのない暗いイメージが無限に広がりますが、どこにでもいいところ、面白さはある!(笑)確かにバラ色ではない。でも、なにがしかいいことはある。いや、ほんとに。
まず、病院がビューティフルです。新しく清潔でホテル仕様。仮名の由来であるオサレで気持ちのいい屋上庭園付き。その屋上庭園には、ガラス張りのリハビリ室から出入りできるようになっていて「療養型とはいえ、リハビリやるからね感」を漂わせています。保険制度上、どこまでやれるかは、いささか疑問の残るところですが、意気込みを見せてくれるだけでもオーケー。実際に担当の理学療法士さんや言語聴覚士さんは、熱心で頼りになります。
館内どこでもかすかにオルゴールのBGMが鳴っていて娘を産んだときの新生児室を思わせる音環境(「誕生」と「療養」という生命のある種両極の近似性!)。病棟は「白」以外の色をできるだけ入れたくないのか、どこもかしこも白い。それがやや圧迫感を与えるものの、小汚い濁った色よりずっといい。清潔第一!
フルオープンの、ここもまたまぶしいほどに真っ白なナースステーションには、チャーリー・ブラウンが年をとったような医師が常駐。普通の病院よりは暇なのと(失礼!)、フランクな性格があいまって、何かあると声をかけたり、かけられたりします。そしてちょくちょく病室をのぞいてくれたり、事務室にまで書類をもってついてきてくれたりします。
一番ほっとしたのは、どのスタッフも「投げやり」でないこと。これ、大きい!急性期病院や回復リハビリ病院に比べると圧倒的にマンパワーが不足しているので、多少待たされることはあるものの「にこやかに聞いて、忘れず対応」してくれます。ここをクリアできただけでほんと安心しました。
初日のことです。フロア最大の豪華個室の入り口側に座る付き添いの女性と目が合ったので「看護師さんには、ナースステーションまで言って頼んでます?」とあいさつ代わりに話しかけたら、怖い顔でスタスタとやってきて「ナースコールを押す。押しても来ないなら、言いに行く」。
その後、わたしが一度、ナースコールを押したのを見ていたのか、不意にやってきて「来た?」と尋ね、首を振るとスタスタとナースステーションに行き、「早く行ってあげて!!呼んでる!」とせかしてくれました。その面倒見のよさ、押しの強さ、自分の要求を逡巡せず伝える姿勢…。大陸的だ。たくましい。のちに別の女性との会話から中国系の人だとわかったのです。家族を介護しているようには見えないから、お金持ちの患者さんに雇われているのかな。どんな人生を歩んでいるのか、興味あるなあ。
東南アジア系、おそらくフィリピンの女性と思われる中年の介護福祉士さんもいます。日本語が堪能なベテランで、自分より20歳ほど年上の日本人スタッフを子分のように引き連れて満面の笑顔で登場し、テキパキとオムツ交換をしてくれます。段取りのよさ、愛想のよさ、パーフェクト!
「おばあちゃん!」と呼んでもだれからも叱られないだろう年齢の介護福祉士さんも複数いて、せかせかと廊下を歩き、これまたテキパキとケアをしてくれます。知恵袋的な介護術を知っているのも特長。ああ。みんな、ここにいたるまでにどんな道を歩んできたのだろう!?ひとつだけ言えるのは、この世は「働き者」に満ちているということです。
夫が倒れてから、これまで会わなかったいろんな人たちに会ってきました。その最たるものが、夫自身です。最重度の障がい者となった現在の夫を受け入れ、多様な人生と思わぬところで出会い、驚いたり、感心したり、影響を受けたりしながら、その「多様性」を受け入れて生きていこう。 多様性とは、耳当たりのいい華やかなものだけではないのです。自らとその家族の変質と現在を受け入れるのもそのひとつなんだよね。
今日は、KEIKOのデコボコな日常が更新されています。視覚障がいのあるKEIKOさんが楽しむお花見とは?哲学の道、歩きたくなりました。
今週もオバフォーはコツコツと更新します。「よもじ猫」への投稿、ありがとうございます。いつでも気軽に猫ちゃんの姿、投稿くださいね。待ってまーす。
Jane
“多様性とは、耳当たりのいい華やかなものだけではないのです。自らとその家族の変質と現在を受け入れるのもそのひとつなんだよね。”
本当に、その通りですね。