第5回 「ホビット 決戦のゆくえ」
「どうする?Over40」読者のみなさま、こんにちは。
イラストレーターの小関祥子です。
一ヶ月以上ぶりの更新となってしまいましたが、みなさん、お元気でしたか?
わたしといえば、展示があったり、東北のお茶「気仙茶」を紹介するイベントがあったりと、あわただしい日々を過ごしておりました。
そんな中でもペースダウンしつつ映画館には通っていたのですが、なかなか腰をすえてご紹介することができなくて…。
(シルベスター・スタローンおじさんたちによる部活動のような映画「エクスペンダブルズ3」は、多幸感に満ちていて最高に楽しかったです!)
さて、ようやく生活のペースも落ち着いてきましたところで、満を持して12月13日より公開となる映画「ホビット 決戦のゆくえ」のご紹介をしようと思います。
先日、試写会に伺う機会に恵まれまして、公開に先駆けて見てまいりました。
◆今回の映画(作品名は公式サイトにリンクしています)
「ホビット 決戦のゆくえ」
◆映画のあらすじ
臆病で平凡なホビット族のビルボは、竜に奪われたドワーフの国と財宝を取り戻すべく冒険の旅に出た。旅の仲間は13人のドワーフと、魔法使いのガンダルフ。やがて、森のエルフたちも加勢して、いよいよ竜と対峙する。火炎を吐く竜の凄まじい襲撃、財宝の奪還によって生じた仲間たちの対立、その裏側に忍び寄るさらに巨大な敵の存在――ついに明らかにされる冥王サウロンの邪悪な企み! 押し寄せる敵の大群に、破滅の足音が近づいてくる。団結か、全滅か。大地を二分する壮大な戦いの火ぶたが切って落とされる!(公式サイトより)
映画「ホビット」シリーズは、イギリスの作家J・R・R・トールキンの原作「ホビットの冒険」を、ピーター・ジャクソン監督が映画化したもの。
ピーター・ジャクソン監督といえば、トールキンによる架空の世界「中つ国」の歴史を描いた「指輪物語」を映画化した「ロード・オブ・ザ・リング」三部作(2001年~2003年にかけて公開)も手がけています。
映画「ホビット」の第一作目「思いがけない冒険」が公開されたのは、2012年の冬。
以前から「ロード・オブ・ザ・リング」シリーズが大好きで、公開を心待ちにしてた私は、結局、映画館で4、5回この作品を鑑賞しました。
何度も映画館に足を運んだ理由はもちろん、1本の映画としてのクオリティーがとても高かったこと、大きなスクリーンであの映像美を味わいたかったことが挙げられますが、おそらく、2012年の私にとって「ホビット」は1本の映画以上の存在だったのだと思います。
私の郷里は、福島県いわき市。太平洋側の、小さな地方都市です。
生まれ育った土地ですが、10代の私には退屈で、閉鎖的で、とにかく早く出たくてたまらない場所でもありました。
その郷里が、2011年3月、東日本大震災に見舞われました。
「いちどは郷里を失いかけた(これについてはいろいろな意見があるかと思いますが、わたし個人がどのように考えているか書き始めるときりがないのでこのくらいにしておきます。しかし、そのときは本当にそう思っていたのです)」経験は、わたしの中にずっと残り続けていました。
映画「ホビット」シリーズは、竜スマウグによって奪われた王国=郷里を、ドワーフたち(力自慢の頑固な種族)が取り戻そうとする旅を描いたものです。
特にドワーフたちを束ねる王トーリンは、リーダーとしての責任感もあり、ひときわ強い望郷の念を抱いています。その故郷を恋しく思う思う気持ちが、無謀な旅へと彼らを向かわせます。
主人公のホビット(平和と安定を愛する種族)・ビルボは、彼らの強い望郷の念に胸を打たれ、ドワーフたちの旅に同行することを決めます。
2012年の冬、わたしを何度も何度も映画館に向かわせたのは、映画館の大きなスクリーンいっぱいに広がる美しい中つ国の風景、すばらしい俳優陣が演じる魅力的なキャラクター、重厚かつスリリングな物語の力ももちろんありますが、何よりこれが「望郷の物語である」ということが大きかったのだと思うのです。
映画「ホビット」そして「ロード・オブ・ザ・リング」シリーズのすばらしさは、そのままトールキンによる原作「ホビットの冒険」と「指輪物語」のすばらしさでもあります。
ドワーフやホビットなど、実在しない種族にも関わらず、そこに描かれている人物像はどれもみな味わい深く、弱さや愚かさ、気高さ、愛、勇気など時には矛盾する感情を抱えています。
つまり、どのキャラクターも、とっても人間くさいのです。(人間でない種族に対して、人間くさいという表現を使うのもなんですが…)
そして、そんな人間くさい彼ら……つまり、わたしたちによく似た彼ら……が大きな出来事の前に悩み、決断し、戦う姿は、架空の世界とは思えないほど。
だからこそ、原作も映画も、長きにわたりたくさんのファンを魅了し続けてきたんでしょうねえ。
今回紹介する「ホビット 決戦のゆくえ」では、ドワーフたちの旅の結末が描かれています。
2012年からずっと、この「ホビット 決戦のゆくえ」の公開を楽しみにしてきましたが、見てしまった今、今回もまたすばらしい作品に仕上げてくれた喜びと、旅が終わってしまう寂しさで、心が千々に乱れております…。
幸運にも試写会で一足先に見ることができましたが、見終わった後、お誘いした同じく「ホビット」「ロード・オブ・ザ・リング」好きな方とふたり、夜の新宿をとぼとぼ歩きながら
「終わっちゃいましたねえ…」
「ですねえ…」
「すっごく面白かったしいい映画だったのにねえ…」
「さみしいですねえ…」
虚脱感の中、こんな会話をしておりました。
うれしい。けれど、かなしい。
なんだか、人生の味そのものだなあ……と今もぼんやり「ホビット 決戦のゆくえ」のことを思い出しながら、劇場公開されたらまた見にいこうと思っています。
keiko
初めまして。
13日の公開を楽しみにしていたので、こんな素敵な感想を読ませていただいて増々気持ちが盛り上がってきました。ドワーフの望郷の想い、考えると観る前から涙腺が緩んでしまいます。
年末年始、この映画を観て、ロードオブザリングのDVDを自宅でゆっくりみようと思います。
小関祥子 Post author
>keikoさん
うれしいコメント、ありがとうございます!
keikoさんも、旅の仲間ですね。
ロード・オブ・ザ・リングは、今見ても「よくぞあの原作を、ここまで見事に映像化した!」と
ほれぼれします。
コラムでは書き忘れましたが、キャストの顔がどれをとっても「うん、この役はこの人しかいない」と
納得で満ちているのがすばらしいです。
(イライジャ・ウッド以外のフロド、オーランド・ブルーム以外のレゴラスなんて、もう想像できません)
ぜひぜひ、よい旅を。そして、仲間たちとの名残を惜しんでくださいませ。