第42回 羅小黒戦記(ロシャオヘイセンキ)ぼくが選ぶ未来
「羅小黒戦記(ロシャオヘイセンキ)ぼくが選ぶミライ」は2019年公開の中国のアニメーション映画です。昨年(行けなかったけど)日本で字幕版が公開され、先週土曜日、いよいよ日本語吹き替え版が公開されました。本国では最初、2011年に動画サイトでシリーズものとして公開されています。とっても可愛いし面白いので、更新日ではないけれど、ご紹介します!
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猫の妖精・羅小黒(ロシャオヘイ)は、開発で森を追われ、街で人間に襲われます。危ういところを妖精・風息(フーシー)に助けられ、一緒に暮らそうと誘われます。そこへ人間離れした力を持つ人間・無限(ムゲン)が現れ、せっかく見つかったと思った住処は壊されてしまいます。そして、ロシャオヘイはムゲンに連れ去られ…。
ロシャオヘイの成長物語であり、妖精と人間の未来を模索する物語であり、かの大ヒット映画と同様「君たちはチカラをどう使うか」を問う物語でもあります。フーシーとムゲンの影響を受けながら成長していくロシャオヘイは、最後に何を選んで、何を選ばないのか?
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子猫の姿も可愛いが、人間の姿のロシャオヘイも三頭身で可愛い。「うる星やつら」のテンちゃんをちょっと成長させた風にも見える。それだけでなく、アクションシーンや戦うキャラの表情、街の中心で破滅の象徴が広がっていく様や、現実ではないどこかの風景などに、日本アニメへのオマージュが深く感じられます。日本のアニメを好きでいてくれているのだなあと、アニメーターでもないのに、嬉しくなります。これらの共通点を以ってオリジナリティに欠けると言うのは早計です。そのような点は些末なことです。それほどに、この作品は魅力的。
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緑深い森の中を、黒い子猫が素早く弧を描いて跳んで逃げる様子を描いたシーンに満ちる「このアニメは、タダものでは無い」感!強者の「気」がぶつかり合うようなバトルシーンの速さと激しさ!
ムゲンとロシャオヘイのやりとりで見られる「動作」と「間」には、日本アニメでは感じられないリズムがあります。京劇や香港映画でお馴染みの中国武術がオリジンなのでしょう。逃げるロシャオヘイをムゲンがヒョイと捕らえる、そのタイミングすら見ていて楽しい。画は省いてあるのだけれども、筆で刷いたような曲線の流れが見えるよう。素早い動きからの「止め」が生理的に気持ちいい。
太い線で描かれるザ・2Dなキャラクターは、馴染みぶかい造作で、日本の観客にも受け入れやすい。広々と圧迫感のない自然の風景や、街に隠された妖精の住処など、背景美術も美しい。また、固定電話が普及するより先にスマホが普及したと言われる、現代中国の様子も垣間見える。
クスリと笑える場面やのんびりした場面とバトルシーンの緩急は、観る者も無理なくついていけます。
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画面に集中できるので、私は海外アニメでは吹き替え版が好きです。最近はできるだけ声優さんの名前を事前に見ないようにしているのですが、シャオヘイとムゲンは、実に「聞かせる」声優さんたちです。さすが!
子どもにも、アニメを見たのはジブリ(と鬼滅の刃)だけという人にも、たくさんアニメを見ている人にも、おすすめのエンターテインメント!
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動画は公式HPよりお借りしました。
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