Posted on by 小関祥子
第11回 「あの日のように抱きしめて」
映画「あの日のように抱きしめて」を見てきました。
第二次世界大戦後まもなくのドイツ。
アウシュヴィッツから生還したが、顔に大怪我を負ったために整形手術を受け、それまでとは違う顔になったユダヤ人の妻ネリーと、妻は死んだと思い、その遺産を手に入れるために本人とは気づかぬままなりすましを妻本人(!)に頼むドイツ人の夫ジョニー。
ネリーは自分だと気づかない夫にショックを受けるが、親友レネから聞かされた「ジョ
ニーは裏切り者だ」という言葉の真偽を確かめるため、夫の申し出を受ける。
かつての自分のように髪を染め、化粧をし、ジョニーの指導のもと、かつての自分…ジョニーの妻であるネリー……にネリーはどんどん近づいていく……。
ものすごくエモーショナルなタイトルだけど、描き方は非常に抑制されていて、音楽の使い方がすばらしかった! ちなみに原題は「PHOENIX」…フェニックス、不死鳥です。劇中何度も「スピーク・ロウ」という曲が流れるのですが、その使い方もとてもいい。
ナチスドイツ政権下のドイツでは、ニュルンベルク法という法律が制定され、そこではユダヤ人とドイツ人の婚姻は禁止されていました。
法が制定される前からの夫婦であっても、離婚するよう圧力がかかったといいます。この法律のことを知っていると、この映画をさらに深く理解することができると思います。
「正しく」いられなかった、人として「良き」ことを選べなかった……そんな人たちの話は、大人になるほどしみるようになります。こんなことするなんて馬鹿じゃないの?とかなんて駄目な奴!とか、かんたんに切り捨てられなくなるんですよね、大人になると。
だって、自分だって「正しく」いられなかったこと、人として「良き」ことを選べなかった経験が積み重なっているからなあ。
あきら
こんばんはー! 「東ベルリンから来た女」の女優さんだ! と思ったら、同じ監督なんですねー。予告は映画館で観ていたのですが、記事を読ませていただいたら、どうしても観たくなりました。「正しく」いられなかった、「良き」ことを選べなかった・・・、本当に。
うちの近所にもスピーク・ロウというジャズの店があるんですが(笑)、そういう知識がまるで無いので、その曲のこともお陰で検索してみました。ユダヤの血をひいたドイツ人の方が作曲して、のちのスタンダードになっていったんですね。ナチスから逃れてアメリカに渡ったとか。
そうか、そういえば、「耳元で囁いて」なんだな。ますますたのしみになりました。が、あーん?!もしかしてもう上映は終わってるーー?? 調べたら今日まででした(苦笑)。DVDをたのしみに待つことにしまーす!!
小関祥子 Post author
あきらさん、コメントありがとうございます。
この映画、あきらさんならどうごらんになるかなーと思っていたので
コメントうれしいです。
そう、スピーク・ロウの作曲者もまた、あの時代の荒波を生きた一人なんですよね。
映画って意図的に選ばれたもので構成されるものですから、あの曲を劇中で使うのも
もちろんわかってやっていることなんでしょうけれど、これがまたハマってるんですよ。
そちらでの上映はもう終わってしまっていて残念ですが、ぜひDVDで。
負けた国の人間がどうやって生きてきたか…みたいなことが気になって、
最近、戦争中、戦後のドイツについていろいろ読んだり考えたりすることが多いです。