島民百景〜ビーチのおしごと
正確には島民ではないのですが、
看板のわりには全然夏っぽくない話題が続いているので
今回はビーチなお話。
おそらく他の離島もそうだと思いますが
シマ島は海水浴客がどっと押し寄せる夏が
1年でいちばん賑やかなようです。
ふだんは開いているのか閉まっているのかわからないような
シーンと静まりかえっていた商店が
ある日突然ガラガラとドアを開け
赤や青や黄色や、カラフルな浮き輪を軒先に並べていたり
てっきり空き家かと思っていた建物に突然あかりが灯って
千客万来な民宿に早変わりしていたりと
別の町に来たのかと思うほどの変貌ぶりにとまどいましたが
何にせよ、町に活気があるとうれしいことであります。
何よりうれしいのは、通りに若い人がたくさんいること。
年寄りはダメだとか、やっぱ人は若いのがいいよねとかそういう話じゃなくて
エネルギーの塊みたいな10代、20代が笑っている、
それだけのことで、人をこんなに元気にさせるとは知りませんでした。
若さって光、なんだなあ。
ひゃっほう
若さといえば、島にこの時期しかいないのが
ライフセーバーのみなさん。
7月の終わりから9月のピーク時期までのあいだ
島内の各海水浴場にライフセーバーが配置され、
海水浴客の安全を見守っておられます。
まあこのライフセーバーさんたちが元気なのなんのって。
本土から体育大学の学生さんたちがやってくるそうで
どなたさまも筋骨隆々、真っ黒に焼けた肌を
てっかてかに光らせておられました。
そんでもって、誰かがビーチに入ってくると
すーっとナチュラルに近寄ってきて
「こんにちはー! 今日の船でいらっしゃったんですか?
波が高くなっていますから、浮き輪、気をつけてくださいね♩
あ、今夜神社でイベントありますので、よかったらどうぞ♩♩」
ニコッ*\(^o^)/**\(^o^)/**\(^o^)/*
ま、まぶしいっ
目がつぶれるっ!!
ひとりひとりに声をかけて安全喚起しつつ、
さりげなく滞在期間やメンバーの関係性を調べ、
なおかつ島の観光案内までするというプロフェッショナルぶり。
ライフセーバーとはまったく接点がない生活だったので
そんなことまでするのかーと感心しきりでしたが
彼らの「命を守る使命感」たるやすさまじいもので
ビーチのなかだけでなく、海岸通りを歩いている人ひとりひとりに
「こんにちはー!☆*:.。. o(≧▽≦)o .。.:*☆」
走り過ぎる車にも1台1台立ち上がって
「こんにちはー!*・゜゚・*:.。..。.:*・'(*゚▽゚*)’・*:.。. .。.:*・゜゚・*」
車にまで挨拶しなくてもいいのでは、てか聞こえないんじゃ?
とよけいなことを思ってしまうのですが
家に帰るまでがレスキュー的な教育を受けているんでしょうか…。
一事が万事この調子で、1日中あっちに挨拶、こっちに声かけ、
笑顔で歓談していたかと思えば突然走り出して海へとダイブ!
と若さ爆発全力疾走なので、見ているこっちが心配になるくらいですね。
そうかと思えば夕暮れどき、
海水浴客がぞくぞくと帰っていくなかで
突如ライフセーバーさんが水際までダッシュして
「わああ○×△☆$%$#&あ☆□▲%○が%おお!!!!!!」
と海に向かって絶叫していて度肝を抜かれるのです。
何かの儀式的なものかしらと思いつつ
ウンウン確かにいろいろあるよね、人間だもの、
と妙に納得したりもして。
なので、日がくれてビーチから人影が消えたころ、
自転車で宿へ戻るライフセーバーさんと道ですれちがうたび
誰だか判別できない道のはるか彼方まで
ライフをセーブしなくてもいいよ、と思うのであった。
それではみなさま、また来週〜。
Text by じじょうくみこ(へたイラスト含む)
Illustrated by カピバラ舎
*「じじょうくみこのオバサマー」は毎週火・木・土曜日更新です。