第38回 風の谷のナウシカ
「一生に一度は、映画館でジブリを。」と言われたので「オームと巨神兵は大画面で見たいかも。」と、映画館に行ってきました。
『風の谷のナウシカ』の原作漫画は人間臭さが出ているけれど、映画では超人的な主人公になっていて子供向けだと思い込んでいました。が、それは違いました。ナウシカは姫とよばれて女の子の設定ですが、性別や年齢は関係なく、統べる者の理想的な姿、視座、資質、覚悟のお話でした。今頃気づいたの?と言われるでしょうか。私はこの年になり初めてこういう感想を持ちました。
経験値が増えて総合的に見ようとする余裕がでてきたから。映画館では周囲の様子が目に入らないので没入できたから。と、理由(言い訳?)を考えましたが、何度もテレビで見て、知っている気になっていたのでしょう。
ナウシカが虫に襲われたベジテ市の少年アスベルを助けようとして、二人とも腐海の地底下に落ちる場面があります。目を覚まし清浄な空気に驚いたナウシカは辺りの様子を見てこようとするのですが、その時にアスベルが「あまり遠くに行かないで」と声をかけます。
ここで明らかな違和感。こんなセリフあったっけ?何気ない言葉がけが妙に引っかかりました。銃を持っている自分がナウシカを守る?置いて行かれるのが心配?(アスベルは知らない事だけれど)ナウシカは腐海やムシたちのことはよくわかっているから、一人でも生きて帰れる可能性はアスベルより高いのではないかな?
少年が姫を守る枠組とは違う枠組みで、解釈を試みる。超人的な姫のファンタジーをようやく受け入れられるようになった一方で、変遷する時代の価値観が私の中に入り込んでいるのです。
ジブリ作品はアニメーションが素晴らしく美しいので、テレビ放映されるとつい見てしまいます。『紅の豚』は何度見ても面白い。『千と千尋の神隠し』は映画館で見て、ガイドブックをきっかけに児童文学の面白さに目覚めました。ただ、宮崎駿監督作品の、凛とした少年少女の潔さと行動力に彼我の差を感じ、メッセージを明快に打ち出してくる強さが眩しくて、直視できないところがありした。(あまりにビッグネームなので、今まで大きな声で言えませんでした 笑)昔読んでピンとこなかった本が、再読すると別のものが見えるのと同じで、名作アニメもまた見返してみると面白いものですね。
『千と千尋の神隠し』の湯婆婆も、『もののけ姫』のおっことさまも、『ゲド戦記』の竜も、画面いっぱいで迫力がありました。『ゲド戦記』のような静かなお話のなかでも、石組みの橋の欄干の上を走ったり、30センチほどの出っ張りの上を壁伝いに歩いたりするんだ。千と千尋の釜爺もいいけど、ゲド戦記のハイタカの菅原文太もいいな。『もののけ姫』の宣伝コピー「生きろ」は、ポスターの文字の大きさに反して、息も絶え絶えに言われるセリフの一部だったんだ。などなど。
4作品のセレクションが今の私たちへの応援になっていますが、一作品だけ推すなら、やはり『風の谷のナウシカ』。空からユパさまを見つけたり、腐海の樹林や王蟲を見上げたりは、大画面ならではの楽しさ。
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『機動警察パトレイバー 』劇場版4DXを見ました。1989年の公開時は日本にいなかったので初めて見たけど、とっても面白かったです!
自分の座席は水しぶきをオフにしても、後ろから飛んでくるし、風が吹いて肩が冷えるし、4DX上映では薄いパーカーを羽織るのが良いかも。(体調の悪い時は無理そう。)