第54回 Dr. STONE
長い長い雨が続いています。どうか皆さまが安全にお暮しでありますように。
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「Dr. STONE」は、稲垣理一郎・Boichi原作漫画のアニメだ。集英社の週刊少年ジャンプ掲載作品で、第64回小学館漫画賞少年向け部門受賞している。2021年1月にTV放送とネット配信開始。これまでの放映はコミックス10巻あたりまでをカバーしており、続編制作が決定している。
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謎の現象で全人類が石化されて数千年後、ある日石化が溶け、科学少年、千空(せんくう)が目覚めた。周囲はジャングル。まさに異世界転生だが、彼は科学の力で世界を取り戻そうと考える。そこに当然のことながら、立ちはだかる者が現れる。 霊長類最強と呼ばれた高校生、獅子王司(ししおうつかさ)だ。彼は、旧世界は既得権を持つものが若者から搾取していた世界だったので、それは復元せずに若者だけで新しい世界を創ろうと、言う。はてさて、新世界のゆくえやいかに…。
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千空は、科学の知識を用い、長い長いロードマップにそって、地道に必須サバイバルアイテムを作り出し、難度の高い課題をクリアしていく。その副産物で便利アイテムを作り、周囲に幸せをもたらす。ときに便利アイテムとサバイバルアイテムの優先順位は逆かもしれないが、そこは否定する。こういう照れやさんなキャラクターは好きだ。徹頭徹尾合理的に見えて人の気持ちも考えている。同じ稲垣理一郎原作のアメフト漫画「アイシールド21」の蛭魔妖一(ひるまよういち)を思い出す。
どうやって千空が目覚めたのか?彼は何をどういう順番で作っていくのか?具体的にどんな道具で司に対抗するのか?そして、彼が出会った先住民は何者で、どこから来たのか?その道程にワクワクする。周囲もまた愛すべきキャラクターたちばかりなので、その絡みも楽しみだ。アニメを見ているだけで「知る」ことを楽しめて、「クラフト(ものづくり)」に興味がわく。
ときおり、千空の行動や発想に現実の漫画の名シーンやゲームの仕様が見られる。一瞬オマージュかと思うが、それは違う。架空のキャラクタ-のふるまいを真似たり、ゲーム感覚で課題をクリアしていくのは、漫画やゲームに慣れ親しんだ者が取りがちな態度だ。千空は、現代を生きてエンタメを楽しんでいたのだ。
その千空もまた架空のキャラクターだ。画面(紙面)の中で彼は、原始的な世界で長い時間をかけてものづくりに励む。そんな地道な作業を続ける千空をまねる人たちが、スマホネイティブの子どもたちの中にもきっと現れることだろう。
漫画・ゲーム分野に興味がない人も、見ているだけで面白いと思います。特に第1期の20話あたりから、グッときますよ。
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アニメ公式サイトからは、「Dr. STONE 科学部」という番組がYouTubeで配信されている。また、かのQuizKnockとのコラボ企画も見られる。
それにしても科学の歩みは地道だ。ワクチンだって、地道な研究と科学技術の積み重ねの成果だものなあ。