ゾロメ日記 №56 バックステージとかリセットとか目まっ赤とかの日々劇場
【主な登場人物】
★義父・・・93才と半年。92才なりたてで視力をほぼ失うまで、認知症状は全くなく、バスを乗り継いでひとりで義母の入院する病院に日参していたことを思うと、しみじみしてしまう。現在、同じ病院に入院中。
★私・・・週2で小学校図書室でのパートをする中年。最近、子どもたちに読んで評判のよかった絵本は『どうぶつえんのおいしゃさん』。心がささくれた中年(私)も面白かった。
◆10月某日 三度目の正直とバックステージ
義父の体調が不穏で、今日が今月に入って三度目の救急外来。せん妄というか、意識の混濁が、病気(発熱)によるものなのか、認知症の進行のせいなのか、双方の合わせ技一本!なのか、素人にはわからない…どころか、プロにも悩ましかったようだ。今回、それまでより精密な検査をし、入院となった。
救急外来は、ベタな言い方だが、まさに人生の縮図だ。
揃って冷えピタシートを貼った双子とおぼしき赤ちゃんをそれぞれで抱きかかえる疲れきった表情の夫婦、子どもの名前を読み間違えられたことに激怒するお父さん、囲碁会場で倒れたという高齢男性に付き添って救急車に乗ってきたものの、患者の家族に連絡がとれず途方に暮れている中年男性、なぜか救急外来のトイレで化粧に余念がないティーンエージャー…。
共通するのは、舞台裏感が濃厚なところ。待ち時間が長いこと、救急待合室は少し薄暗いこと、が理由かもしれないが、なんだかそれだけでもない気がする。人生というか、人々の暮らしをぎゅうっと圧縮すると、抽出されるのはバックステージエキスかも、と思ったりして。
バックステージエキスってなんだ?と自分にツッコミつつ。
◆10月某日 リセット
パート先の小学校の6年生の図書委員S君は、愛想もなくバーコードのスキャンも苦手(なぜか彼がやるとなかなかピッと言わない)だがマジメ。カウンター当番はサボらない。そんな彼が今日の昼休み、突然「センセー、新聞紙で兜を折れます?」と聞いてきた。
自分から話しかけてくることはほとんどないのでちょっとうれしかったが、それはおくびにも出さず「昔、折ったことがあるけど、今は折リ方を忘れた」と答えると、思いのほか残念そう。なので、「そういうときこそ図書室の本でしょ」と本棚から折り紙の本を持ってきて、兜のページを開き、「折ってみれば。まず正方形にしてね」と言って新聞紙と一緒に渡す。
真剣な顔で工程を見、カウンターで折り始めるS君。手は私より大きいが、動きは子ども。たどたどしいにも程がある。なんだか違うことをやってるなと思いつつも黙って見ていた。
それでも紆余曲折を繰り返し、新聞紙のかたまりは少しずつ兜の形状に近づいてくる。人間、やれば(ある程度)できるものなのだ。でも、そこで無情にも昼休み終了のチャイム。S君は明らかに心残りな様子なので、「その本を借りて行って続きをやれば?」と言うと、ハッとした顔で(思いつかなかったらしい)折り紙の本の貸出手続きをし、折りかけの新聞紙を抱えてバタバタと教室に戻って行った。
S君と自分の間に、今日は今までよりも親密な空気が流れた気がした。そういう瞬間は、ままある。でも、これが次回はあっけなくリセットされていたりするのだ、案外高い確率で。
子どもって、フレンドリーかと思えば、コロッと他人行儀(他人だが)にもなるもんだと思い知る日々だ。ま、大人もそうだったりするけれど。
◆10月某日 目まっ赤
入院した義父はわりと元気だ。入院前後のことは失念しているので、家に帰ると言って聞かない。意識が混濁していないのはとてもうれしいが、ぼんやりじいさんが退いて、頑固じいさん登場である。ガンコジジイは手強い。
そういえば、昔NHKでやっていた海外ドラマ「頑固じいさん孫3人」は面白かった。今、確認したら30年前のドラマだ。あの、ジョナサン・(ビバヒルのブレンダ)ハーティーが純朴で魅力的な十代を演じていた。頑固じいさんの日本語吹き替えはハナ肇だった。なにかと隔世の感ありだ。
そんななか、今朝起きたら、3年ぶりに結膜下出血を発症していた。白目の部分が出血してまっ赤になるヤツ。一時期、頻繁にできたが、このところは登場していなかった。
これは、痛みや見えづらさがなければさほど心配はないようなのだが、とにかくビジュアルがエグい。つい最近、このサイトのメンバーもこれを発症して、見た目のヤバさを嘆いていた。同期した?!
私の場合、疲労と連動して発症することが多い。いちばん最初にできたのは15年前の母親の闘病のときで、いちばん派手にまっ赤だったのが3年前、実父と義母の同時入院時だ。会う人ごとに心配され、思わず眼科に行った。今回も3年前と同じくらいひどい。今日、義父の病棟のナースにも「大丈夫ですか?」と言われた。痛みも痒みもないが、鏡を見ると悲惨ですごく憂鬱だ。
このところ、『靴底の減りかた』(鬼海弘雄/著)、『誰もいないホテルで』(ペーター・シュタム/著)と、なかなか面白い本を読んでいたのだが、昨日読み始めた『光炎の人』(木内昇/著)もとても面白い。まだ序盤だが、凄そうな予感。寸暇を惜しんで読みたいのだが、この目、なるべく休ませた方がいいのだろうか。悩ましい。
by月亭つまみ
まゆぽさんとの掛け合いブログです。→→「チチカカ湖でひと泳ぎ」
★毎月第三木曜日は、はらぷさんの「なんかすごい。」です。
小関祥子
つまみさん、目、お大事になさってくださいね。
家族の入院や看病は、じわじわとこちらの気力を削っていきますよね。
どうぞ、あまりご無理をなさらずに。(といっても、無理せざるを得なくなるのですけれど)
日曜日、お会いできるのを楽しみにしています!
れこ
こんばんは、目病み女二号です。
「結膜下出血ってなんぞ?」と思った方、
画像検索はしない方がええですよ〜。
割った卵に赤いものが混じった、あんな感じの白目です。
「どうぶつえんのおいしゃさん」、先日図書館で読みました。
くるり岸田の様なハリーポッターの様な一見頼りないお医者さんが
数々の難問題を解決していく様を労いたくなりました。
とにもかくにもつまみさん、本当になるたけ無理せずお大事にしてくださいね。
目は温めてあげるといいそうです!
つまみ Post author
小関さん!
うううっ、ありがとうございます。
昨日今日で、一難去らないうちにまた一難的状況が勃発しておりますが、日曜日、なんとか行けるよう、神頼みでもなんでもします!という心境です。
小関さんにお会いしたい!照れるけど、いろいろお話ししたいっす。
つまみ Post author
れこさんの目は回復中でしょうか。
私は、少しでも色が早く薄まるようにと、眼科に駆け込みました。
でも「すぐには薄くならんよー」という医者の無慈悲な一言にがっくし!
「ほっといてもそのうち治るんだけどねえ。目薬、欲しいの?」
「欲しいです!!(なんのために来たと思ってんだ!)」
『どうぶつえんのおいしゃさん』、レトロな雰囲気もステキですよね。
担任の先生に依頼されてこの本の読み聞かせをしたのですが、そのとき、「しいくのおじさん」どこにアクセントを置いて発音していいかわからなかったので、勝手に「しいくいんのおじさん」と読みました。
たはっ。