4月26日はカレー記念日

カレー記念日

背中痛い 言われてのみこむ 私もよ

4月26日はカレー記念日

Jane

投稿はこちら

カレー記念日とは?

加齢を実感したら、それはカレー記念日。
抗ったり笑い飛ばしたりしながら、毎日華麗に加齢していきましょう。

あなたのカレー記念日も、教えてください。
五七五七七形式で、下の句は「○月○日はカレー記念日」なので
上の句の五七五だけ送ってね!

日付は掲載日に変えさせていただきます。

みんなのカレー短歌 一覧 >>

50代、男のメガネは

武器を持つと人は変わる。ナイフとかお金とか。

image

 

中学生の頃、美術の時間に版画や彫刻があると、切り出しナイフを使っていた。父親が使っていた小さな切り出しナイフだけれど、これがとても使い心地がよかった。彫刻刀ではうまく削れないのに、この切り出しナイフだととてもきれいに削ることができた。

 

中学だったか高校だったか、よく覚えていないのだけれど、僕は学生服のポケットにこの切り出しナイフを入れていた。入れていたということは、美術の授業で木を削る必要があったのだろう。それ以外に、ナイフを持ち歩くなんてことはしたことがないので、それは間違いない。

 

そして、そんな時でも、僕はややこしい人に絡まれる運命にあるのだ。喧嘩っ早くて、ちょっとばかりややこしい同級生がいて、僕はそいつと小競り合いになった。運良くというかなんというか、同時にチャイムが鳴り授業が始まったので、「あとで校舎の裏にこい」という相手の捨て台詞でその場はおさまった。というか、終了した。

 

僕は授業中、どうしたもんかと考え続けた。逃げるのは恥ずかしい。だからといって、喧嘩で痛い思いをするのもイヤだ。少林寺拳法を習っていたけれど、武道と喧嘩はもちろん違う。いやはや、どうしたものか。

 

そう考えながら、突っ込んだポケットにナイフがあった。その瞬間に僕は妙に緊張しながらも、「ああ、ナイフがあったら、勝てるかもしれない」と確かに思ったのだ。しかし、ナイフで相手を刺す、なんていう物騒なことを考えていたわけではない。ナイフを持っていることで、もしくは相手に見せることで、喧嘩をせずにすむかもしれない、と漠然と思ったのだ。

 

僕は授業中、ポケットの中で切り出しナイフをさぐりながら、そんなことを漠然と考え続けていた。ポケットの中でナイフを広げてみて、刃にさわり、また閉じる。それを繰り返しながら、授業が終わるまで、考え続けた。

 

授業が終わった。仕方がない。校舎の裏には行かねばならん。僕はポケットの中で、ナイフを広げたり、閉じたりしていた。校舎裏にはそいつ一人ではなく、何人かのややこしいのが集まっていた。話が違う、と言っても仕方がない。やるかやられるかだ、と僕は思ったのだった。

 

まあ、そんなクリント・イーストウッドみたいに、「やるか、やられるかだぜ」とニヒルに思ったわけじゃなく、「殴られるか殴るか、どちらかにしないと結局終わらんのだろうなあ」と漠然と緊張で震えながら思ったのである。

 

そして、同時に、「ナイフでちょっとだけケガをさせてやればいいんじゃないか」という悪い思いつきが浮かんだ。しかも、僕が刺すと犯罪になるので、ポケットのなかで刃を広げておいて、もみ合いをしているうちに、事故で相手がけがをした、という設定はどうだろう。

 

僕は本当に短い間に、そんな筋書きを考えたのだ。そして、筋書きはどんどんふくらんで、ポケットの中に手を入れたまま、とりあえず、目の前のいちばん強そうな奴を刺して、もみ合いになるように誘導する。そして、途中、相手が血を流していることに気付いたふりをして叫ぶ。そうすれば、最小限のケガで、事態が収まり、僕も罪を問われることはないはずだ、と思ったのだった。

 

今考えると、恐ろしい話だ。恐ろしい話だけれど、ポケットの中でナイフを握りしめていることで、「これを使えば」という気持ちになってしまったのだった。

 

みなさん、気付いただろうか。僕はポケットの中でナイフを開いたり閉じたりしていたのだ。そして、ポケットの中でナイフを握りしめたのだ。そう、僕は自分のポケットで、自分のナイフで自分の指を切ってしまったのだった。

 

しかし、緊張が勝ちすぎて、そんなことにはまったく気付かなかった。気付かないまま、相手が「しばいたろか!」と小さく叫んだことに対して「やんのか!」とせいいっぱい虚勢をはっていたのだった。

 

そして、ポケットから手を出して、なんとなく鼻の頭をなで、口元をグイッとてのひらでぬぐったのだった。すると、相手が叫んだ。

 

「おまえ、血でてるやん」

 

相手は明らかに、動揺している。僕はなんのことだかわからないまま興奮している。

 

「なに、言うてんねん」

「そ、そ、そやから血が出てるねん」

「うそつけ」

「うそちゃうやん、血ぼたぼたやん」

 

そこで、僕は自分の手を見た。手が真っ赤であった。その手でさわった顔や白い学生シャツが赤い模様に染まっていた。

 

「な、な、なんやねん、気持ち悪いやつやなあ」

 

相手は動揺のあまり戦意喪失。僕は僕で、「ち、ち、血がでてる!」とこれまた戦意喪失。もしかしたら、ナイフで相手を傷つけてしまったかもしれない窮地から救われたのだった。

 

しかし、その時、明らかに僕は学んだのだと思う。ナイフを手にすると人は変わる。それまで、喧嘩の道具として、ナイフを持ちたいと思ったこともない僕が、ナイフで相手を傷つけるまでいかなくても、ナイフがあれば優位に立てる、と思ってしまったことが怖かった。

 

人は武器を持つと明らかに変わるのだ。持っていても使わなければいい、護身に持つだけで安心だ、とアメリカの銃携帯者はいうけれど、そんなの嘘に決まっている。持てば使いたくなる。それが武器なんだと思う。

 

さすがに日本では、本物の武器をもって、強気に振る舞っている人を見る機会はあまりないけれど、例えばお金も一緒だなと思う。持ち付けないような額のお金を持つと、人間は変わる。強気になり、疑心暗鬼になり、そして、お金を武器に、なにかしようとする。自分が偉いと勘違いする。つまり、お金も武器なんだと思う。

 

幸いにも今の僕はあまり、というか、ほとんどお金を持ってはいないけれど、これから先、何かの奇跡が起きても、決してお金持ちにならないように気を付けようと思う。お金持ちになりそうになったら、いろんな人たちと楽しいことをしてお金をばらまき、当座のお金だけを手元において暮らせればそれでいい。

 

子どもの頃の僕のように、自分を守るための武器だと思っていたナイフで、自分を傷つけることのないように、武器になるものの取り扱いにだけは気を付けたいと、心から思うのだった。

 


 

植松眞人(うえまつまさと) 1962年生まれ。A型さそり座。 兵庫県生まれ。映画の専門学校を出て、なぜかコピーライターに。 現在、オフィス★イサナのクリエイティブディレクター、東京・大阪のビジュアルアーツ専門学校で非常勤講師。ヨメと娘と息子と猫のマロンと東京神楽坂で暮らしてます。

 

★これまでの植松さんの記事は、こちらからどうぞ。

 

 


50代、男のメガネは 記事一覧へ


コメント、ありがとー!

  • アバター画像

    okosama

    恐ろしい話です。恐ろしい話だけれど、期待を裏切らない間抜けな結末(笑)で良かったです。すみません、uematsuさん流血してるのに。

    銃を持つと、使うというより、映画やアニメの真似をしそうです。平和な所に住んでいるからこんな感覚になるのかなと思います。でも実物を目の当たりにするとドキドキするだけで触れないかも。
    お金持ちには、なってみたいです。(笑)
    横道にそれますが、学校関係では、尖った鉛筆を持つとドキドキします。自分の指先をつついていて血が出たことがあります。輪ゴム(鉄砲)も。
    いろいろ取り扱いには気をつけたいです。

  • アバター画像

    uematsu Post author

    okosamaさん
    もう、ほんとに流血してよかったなあ、と(笑)。
    武器は怖いですね。
    いまでも、武器を手に持っているときに追い詰められたら、
    何をしでかしてしまうかわからない、という気がします。
    尖った鉛筆もこわいですね。僕も自分の鉛筆で流血した事があります。

    お金は時と場合に寄りますよね。
    というか、持ち付けない人がお金を持つと、
    ろくな事がないという気がします。
    僕も自分で事務所をやっていて、一瞬「もうかってるやん!」
    と思った事があって、その時はかなり気が大きくなっていました。
    こわいこわい。お金は怖いです。
    物は買えるし、人の横っ面をはたくこともできますからね。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。また、コメントは承認制となっています。掲載まで少々お待ちください。


コレも読んでみて!おすすめ記事

いろんな言葉

That’s Dance!文字起こし 第6回(episode16) やっかみかもしれませんが‥番外編も兼ねて

60代、男はゆっくりご乱心

さて、どこに住もうか

ミカスの今日の料理 昨日の料理

おばさんは楽しみを作り出す: チージーエッグ

かわいいちゃん

体重

今週の「どうする?Over40」

「街を案内して、スマートにもてなす」ができないまま、大人になった私。

母を葬る

(10)親子という仕組み

山あり谷あり再婚ライフ

60代若いのか年寄りか?

カレー記念日 今週のおかわり!

ベテランになった 伊藤沙莉を 見たいのに

出前チチカカ湖

第196回こう見えて一途(いちず)です。

なんかすごい。

春の地響き

四十路犬バカ日和

ペットタクシーで病院に行ってみた!

OIRAKUのアニメ

第101回 アストロノオト/終末トレインどこへいく?

黒ヤギ通信

桜の下、草葉の陰

ゾロメ女の逆襲

【月刊★切実本屋】VOL.80 朝ドラと『化学の授業をはじめます。』の化学反応

夫亡き日々を生きる

カリーナからゆみるさんへ 2023年2月4日

絵手紙オーライ!

絵の具セットの思い出

昭和乙女研究所

ファンシーケース

いどばた。

凹むこと最近ありましたか?

じじょうくみこの崖のところで待ってます

はなやぐお盆、わたしは墓へとタックルした。

ただいま閉活中

お守りが無くなったら

50代、男のメガネは

『レジェンド&バタフライ』で絶望の淵に立つ。

おしゃれ会議室 ねえ、どうしてる?

人生は引き算である

日々是LOVE古着

(終)これからも。これからは。

これ、買った!

くっつかないしゃもじをもう一度買った!

ワクワクしたら着てみよう

最近思うことをとりとめもなく書いてみた♡

わたしをライブに連れてって♪

コンサートwithコロナ

これ、入るかしら?

行き当たりばったりで失礼します

KEIKOのでこぼこな日常

巣ごもりしてたらこんな買い物を…

あの頃、アーカイブ

【エピソード37】最終回記念、私たちのクリスマス!

フォルモサで介護

私が負けるわけがない

お悩み相談!出前チチカカ湖

【File No.41】 私って多重人格!?

ラジオブースから愛をこめて

ノベルティグッズ

着まわせ!れこコレ

冬とウェディングと後れ毛と

このマンガがなんかすごい。

第15回(最終回):マンガよ永遠なれ!

夫婦というレッスン

津端英子さんの一筋縄でいかない個性と行動力がすごい著書「キラリと、おしゃれ」

ハレの日・ケの日・キモノの日

暑くじめじめな7月

眉毛に取り組む。

総集編!眉毛ケアグッズ&お手入れ用品のご紹介

さすらいの旅人ゆりの帰国&奮闘日記

グアテマラ。そこで見た不思議な光景と懐かしい味

新春企画 輝く!カレー記念日大賞2017

輝く!カレー記念日大賞2017

≪往復書簡≫SEX and the AGE 

「女性の健康を守り、5歳若くなる抗加齢医療」だって。ボーっとしてたら、すごいことになってるね。

最近、映画見た?

第12回 「海よりもまだ深く」

Over40からの専門学校 略して「オバ専」

【オバ専インタビュー】今まで知らなかった「責任感」も含めて、人生が大きく変わりました。

じじょうくみこのオバサマー

四十九歳の春だから。

華麗なるヅカトーク

第8回 型、色、数! 嫌なことがあったら、また観に来る!

サヴァランのやさぐれ中すday ♪

in her SHOES ~ おばばは何を考えて? #8

器屋さんのふだん器

ふだん器-38  飛びかんな

2016 みんなのこれ欲しい!

サヴァランの「これ、欲しい!」。

2015 みんなのこれ買った!

【じじょうくみこ】低反発リクライニングソファ、買った!

ブログの言葉

「別冊 どうする・・・」はこんなことを大事にします。(過去記事より転載)

今日のこていれ

「今日のこていれ」最終回。1年間のご愛読に感謝を込めて。

崖っぷちほどいい天気

崖っぷちより愛をこめて〜最終回はカピバラとともに。

アラフ ォー疑惑女子

「もったいないお化け」の世代間連鎖

とみちっちの単身ベトナム&中国

ベトナムって、ハノイって、どう?

晴れ、時々やさぐれ日記

ああ、感謝。巳年と午年のあいだ。

中島のおとぼけ七五調

中島。の気ままに更新「おとぼけ七五調」12

ムーチョの人生相談「ほぐしてハッケン!」

【主夫ムーチョの相談】娘がご飯を食べません・・・。

ミラノまんま見~や!

連載最終回!「駐妻のここだけの話」にしようかと思ったが…災難に遭う!

ウェブデザイナーとの対談

大きな旗は振れないけど、小旗はパタパタと振れるだけ振っていこうと思ってます。

「最高の離婚」ファントーク

<対談「最高の離婚」最終回>ホームから電車に乗ってしまってキスして・・・ロマンチックでしたね。

スパコレ

美味しい缶詰を教えて!

2014 新春企画

どうする?Over 40 新春企画「物欲俗欲福笑い」♪( メンバー編 )

フォルモサ(台湾)の女

あずみの台湾レポート「やっぱり紅が好き!フォルモサの女たち」(13)〜不景気顔卒業します

ゾロメ女の図書館小説

帰って来たゾロメ女の逆襲 場外乱闘編 連載図書館ゴロ合わせ小説  『ライ麦&博 完結編』 後編

青蓮の「マサラをちょいと」

青蓮の「マサラをちょいと~人生にもスパイスを効かせて~ VOL.12」

Tomi*さんの最適解

「Tomi*さんの最適解。 ・・・白髪とコムデギャルソンとヤフオクと」  マインド編②

YUKKEの「今日もラテンステップで♪」

YUKKEの今日もラテンステップで ~VOL.13

よもじ猫

蛸足配線

猫No.71  by つまみ

猫大表示&投稿詳細はこちら!

蛸足配線

猫No.71  by つまみ

よもじ猫とは…

全世界初!?四文字熟語と猫のコラボ!

「よんもじ」と猫がペアになって、ランダムに登場します。
ふだん着の猫の一瞬を楽しむもよし、よんもじをおみくじ代わりに心に刻むもよし。
猫が好きな人も、そーでもない人も、よもじ猫の掛け軸からタイム&ライフトリップして、ときどき世界を猫目線で眺めてみませんか。

みなさんの猫画像の投稿をお待ちしています。

投稿はこちらからどうぞ

カイゴ・デトックス 特設ページができました

Member's Twitter


  • カリーナのBILOGはこちら!「ともに生きる。

  • ZOOMでプライベートレッスン、リモート英会話AQUA
  • BLOG版 ウチの失語くん
  • 植松 眞人さんの本がでました♪「いまからでも楽しい数学―先生と数学嫌いの生徒、35年後の補習授業」
  • 「出前チチカカ湖」連載中 まゆぽさんの会社「シリトリア」

Page up